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相互関税で企業がとるべき対策は?影響・メリット・デメリットも紹介

近年、国際的な関税政策が大きく揺れ動く中で「相互関税」という言葉を耳にする機会が増えています。相互関税が企業にどのような影響を与えるのか、気になる事業者も多いでしょう。突然の関税引き上げで輸出入コストが跳ね上がり、経営に大きな影響を受ける企業も少なくありません。
 
本記事では相互関税で企業がとるべき対策を中心に、影響を受けやすい業界や政府の支援策までを網羅的に解説します。本記事を読めば、相互関税が企業に与える影響を把握してスムーズに適切な対策を講じられます。相互関税への対策を整え、関税リスクを織り込んだ長期的な事業戦略を展開しましょう。


目次[非表示]

  1. 1.相互関税とは
  2. 2.相互関税が事業活動に与えるメリット・デメリット
    1. 2.1.関税が引き下がった場合のメリット
    2. 2.2.関税が引き上がった場合のリスク
  3. 3.相互関税で影響を受ける業界と対策
    1. 3.1.自動車関連業界や鉄鋼・アルミ業界などが影響を受けやすい
    2. 3.2.EPA・FTAの活用による関税コストの抑制
  4. 4.政府が実施する相互関税措置への支援策
    1. 4.1.特別相談窓口を設置
    2. 4.2.金融機関への相談対応を呼びかけ
    3. 4.3.日本貿易保険(NEXI)による資金調達支援
  5. 5.相互関税下で企業ができる対策
    1. 5.1.輸出入業者をサポートする支援制度や補助金を活用する
    2. 5.2.貿易コスト抑制のため仕入れ・物流戦略を見直す
  6. 6.相互関税における今後の動向・企業がとるべき戦略
    1. 6.1.相互関税に関わる貿易交渉・関税ルールは日々大きく変化している
    2. 6.2.特定の国に依存しない物資の調達網を構築する
  7. 7.まとめ


相互関税とは

「相互関税」とは貿易相手国が自国製品に高い関税を課している場合に自国も同等の関税を課す政策で、貿易の公平性を保つための措置です。たとえば、米国が日本製品に24%の関税を課した場合は日本も米国製品に同等の関税を課すことが考えられます。
 
相互関税は貿易摩擦を引き起こす可能性があり、貿易交渉の一環として用いられるケースが多く各国の経済政策や外交戦略に大きな影響を与える要素です。そのため、相互関税の導入や変更は国際的な経済関係において注目されるトピックとなっています。特に、主要経済国間の関税政策はグローバルでのサプライチェーンや市場動向に直接的な影響を及ぼすため、企業や投資家にとって注視すべき事項です。


相互関税が事業活動に与えるメリット・デメリット

相互関税が事業活動に与えるメリット・デメリットについて、以下の2点から解説します。

●  関税が引き下がった場合のメリット
●  関税が引き上がった場合のリスク

上記のメリット・デメリットを把握し、相互関税に対して適切な対策を講じましょう。


関税が引き下がった場合のメリット

関税の引き下げは企業にとって多くのメリットをもたらし、特に輸入コストの削減で製品の価格競争力が向上します。輸入コスト削減により製品の販売価格も下げやすくなるため、消費者にとっても手頃な価格で商品を提供できる点がメリットです。
 
また、企業は新たな市場への進出がしやすくビジネスの拡大が期待でき、関税の引き下げはサプライチェーンの最適化や生産性の向上にも寄与します。たとえば、EPA(経済連携協定)を活用すれば、特定の国や地域との貿易が促進されて企業の成長戦略をスムーズに実行できます。


関税が引き上がった場合のリスク

一方で、関税の引き上げは企業にとってさまざまなリスクを伴います。まず、輸入コストの増加で製品価格が上昇し、消費者の購買意欲が低下する可能性が高いです。サプライチェーンの混乱や調達先の見直しが必要となり、企業の運営に支障をきたすケースもあります。
 
さらに、関税引き上げによる報復措置として相手国がさらなる関税を課せば、貿易摩擦が激化して国際的な経済関係に悪影響を及ぼす恐れがあります。特に、中小企業にとっては価格交渉力やサプライチェーンの多様化が難しく、コスト増加や市場競争力の低下に直面する可能性が高いです。


相互関税で影響を受ける業界と対策

相互関税で影響を受ける業界と対策について、以下の2点から解説します。

●  自動車関連業界や鉄鋼・アルミ業界などが影響を受けやすい
●  EPA・FTAの活用による関税コストの抑制

特に、製造業を中心に大きな悪影響を受ける可能性があり、企業は関税リスクを最小限に抑えるための戦略的な対策を講じる必要があります。


自動車関連業界や鉄鋼・アルミ業界などが影響を受けやすい

自動車関連業界や鉄鋼・アルミ業界は、相互関税の影響を受けやすい分野です。上記の業界は原材料や部品の多くを海外から調達しており、関税の引き上げがコスト増加につながります。
 
たとえば、米国が鉄鋼とアルミ製品に25%の追加関税を課したことで、自動車部品の価格が上昇して製造コストが増加します。また、関税の変動はサプライチェーンの再構築を迫られる要因となり、企業の競争力低下につながる可能性が高いです。そのため、海外からの原材料・部品調達の割合が多い業界は、関税リスクを考慮した調達戦略・生産体制の見直しが求められます。


EPA・FTAの活用による関税コストの抑制

関税コストを抑制するためにはEPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)の活用が有効で、概要は以下のとおりです。

項目

EPA(経済連携協定)

FTA(自由貿易協定)

名称

Economic Partnership Agreement

Free Trade Agreement

目的

関税撤廃に加え、投資・人の移動・知的財産など広範囲な連携を促進


モノ・サービスの貿易自由化(関税撤廃・削減)を目的とする

対象範囲

貿易、投資、知的財産、労働移動、環境など幅広い分野

主にモノやサービスの貿易に焦点

特徴

より包括的・長期的な経済連携

比較的短期で結ばれやすい貿易協定

代表例

日EU・EPA、日ASEAN・EPAなど

日メキシコFTA、ASEAN・FTAなど

メリット

多分野にわたる経済協力で企業活動を総合的に支援

関税の即時削減で貿易コストを迅速に抑えられる

上記の協定を利用すれば、特定の国との間で関税の撤廃や削減が可能となります。たとえば、日本の産業機械メーカーが日EU・EPAを活用し、EU向け輸出製品の関税を5%削減した事例があります。

また、関税の削減は企業の利益率向上につながり、価格競争力の強化にも寄与します。なお、EPA・FTAを適切に活用するためには原産地証明の取得やHSコードの正確な分類が必要です。


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政府が実施する相互関税措置への支援策

政府は、相互関税措置による企業への影響を軽減するために以下の支援策を講じています。

●  特別相談窓口を設置
●  セーフティネット貸付の要件を緩和
●  金融機関への相談対応を呼びかけ
●  日本貿易保険(NEXI)による資金調達支援

上記の施策は企業の資金繰りや経営安定を支援し、国際的な経済変動に対応するための重要な手段となっています。

参考:米国の自動車に対する追加関税措置の発効と相互関税の発表を受けて経済産業省に「米国関税対策本部」を設置するとともに、短期の対応として、特別相談窓口の設置や資金繰り支援等を実施します|経済産業省


特別相談窓口を設置

政府は相互関税措置による企業への影響を軽減するため、全国約1,000カ所に特別相談窓口を設置しました。上記の窓口は、地方経済産業局・政府系金融機関・商工団体・中小企業基盤整備機構などに設けられています。
 
企業は特別相談窓口で、関税措置による経営への影響や資金繰りの問題について専門家からのアドバイスや支援策の案内を受けられる点がメリットです。また、東京都や福島市などの地方自治体も独自に相談窓口を設置し、地域の中小企業を支援しています。詳細な情報は、経済産業省や各自治体の公式ウェブサイトで確認しましょう。

参考:米国の自動車関税発効等を受けた短期の支援策|経済産業省


金融機関への相談対応を呼びかけ

政府は相互関税措置の影響を受ける中小企業の支援を強化するため、金融機関に対して相談対応の充実を要請している状況です。具体的には、資金繰りの悪化や返済負担の増加といった課題に対し、柔軟かつ迅速な対応を求めています。
 
たとえば、埼玉県では県内の金融機関や経済団体に対して資金需要に対する一層の金融円滑化を要請しました。そのため、埼玉県内の企業は返済条件の見直しや新たな融資の相談がしやすくなっています。詳細な情報や相談窓口については、各都道府県の産業労働部や金融庁の公式ウェブサイトで確認できます。

参考:米国の相互関税措置等に伴う影響を踏まえた中小企業者に対する金融の円滑化要請について|埼玉県


日本貿易保険(NEXI)による資金調達支援

日本貿易保険(NEXI)は相互関税措置の影響を受ける企業の資金ニーズに応えるため、貿易保険を通じた運転資金の調達支援を検討中です。詳細な利用条件などは今後発表が予定されていますが、企業は海外取引に伴う関税リスクを軽減して安心して海外展開を進められるでしょう。
 
なお、日本貿易保険は輸出契約や海外投資に伴うリスクをカバーする保険商品を提供しており、企業の資金調達手段の確保に寄与しています。また、スタートアップ企業や中小企業の海外展開を支援しており、融資保険やバイヤー情報の提供などさまざまなサービスも展開しています。

参考:米国の自動車関税引き上げにより影響を受けるお客様への支援について|日本貿易保険


相互関税下で企業ができる対策

相互関税下で企業ができる対策として、以下の2つがあげられます。
 
●  輸出入業者をサポートする支援制度や補助金を活用する
●  貿易コスト抑制のため仕入れ・物流戦略を見直す
 
相互関税で収益が悪化する恐れがある場合は、上記の対策を講じましょう。


輸出入業者をサポートする支援制度や補助金を活用する

相互関税の影響を受ける企業にとって、政府や関連機関が提供する支援制度や補助金はコスト削減や事業継続のための有効な手段です。たとえば、ジェトロが実施する「新規輸出1万者支援プログラム」では、輸出初心者の中小企業に対して専門家による個別カウンセリングや商談会への参加支援などを提供しています。

また、「中堅・中小企業輸出支援エコシステム形成事業費補助金」では、複数の民間事業者が連携して中堅・中小企業の輸出拡大を支援する取り組みに対し、補助金が交付されます。上記の制度を活用すれば、企業は輸出入に伴うコストを抑えつつ海外市場への展開が可能です。


貿易コスト抑制のため仕入れ・物流戦略を見直す

貿易コスト抑制のために、仕入れ先の多様化や物流戦略の見直しは重要な対策となります。たとえば、EPAやFTAを活用すると関税の優遇措置を受けられ、仕入れコストの削減が期待できます。
 
また、物流面では共同配送の導入やモーダルシフト(輸送手段の変更)を検討すると輸送コストの削減が可能です。さらに、倉庫の最適化や在庫管理の効率化を図れば、保管コストの削減にもつながります。


相互関税における今後の動向・企業がとるべき戦略

相互関税における今後の動向・企業がとるべき戦略について、以下2つの観点から解説します。
 
●  相互関税に関わる貿易交渉・関税ルールは日々大きく変化している
●  特定の国に依存しない物資の調達網を構築する
 
上記の情報を参考に、相互関税のリスクを最小限に抑えられる対策を講じましょう。


相互関税に関わる貿易交渉・関税ルールは日々大きく変化している

相互関税を巡る貿易交渉や関税ルールは、国際情勢の変化に伴い急速に変動しています。たとえば、2025年4月に米国は日本に対し24%の相互関税を課す措置を発表しました。
 
上記のように急に政策が変更される恐れがあり、企業の輸出入活動に直接的な影響を与えるため、常に最新の情報を把握しなければなりません。また、関税分類の基準となるHSコードの改正も定期的に行われており、関税率の変更や適用範囲の見直しも行われています。
 
企業は国際情勢の変化に迅速に対応するため、専門家との連携や情報収集体制の強化が必要です。さらに、EPAやFTAなどの経済連携協定の動向にも注目し、関税優遇措置の活用を検討して競争力の維持・強化につなげられます。


特定の国に依存しない物資の調達網を構築する

相互関税によるコスト高を最小限に抑えるためには、特定の国に依存しない物資の調達網を構築する必要があります。相互関税の導入や関税率の変動は、特定の国に依存したサプライチェーンに大きなリスクをもたらすためです。たとえば、米国が特定国に対して高率の関税を課すと当該国から米国内に調達するコストが急増してしまいます。
 
企業は複数の国や地域からの調達ルートを確保し、地政学的リスクや為替変動などの外部要因も考慮してリスク分散を図ることが必要です。さらに、サプライチェーンの柔軟性を高めるため、在庫管理の最適化や物流戦略の見直しも検討する必要もあります。


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まとめ

相互関税は貿易相手国の措置に応じて関税を引き上げる政策であり、企業にとって大きな影響を及ぼします。特に、自動車や鉄鋼業界は影響を受けやすく、コスト増や取引環境の不安定化が懸念されます。
 
政府は相談窓口や補助金制度などの支援策を展開しており、企業はEPA活用や物流戦略の見直しによる対策などが重要です。今後の国際交渉の動向を注視しつつ、多国間調達網の構築と最新情報の把握が生き残りの鍵となります。
 
なお、相互関税でのコスト高による資金繰りの悪化を改善したい企業は「F&MClub」の利用がおすすめです。「F&MClub」は中小企業のバックオフィス業務をサポートしており、財務面に関しては以下のサービスを提供しています。
 
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上記のサービスを月額3万円(税抜)で利用できるため、コストを抑えながらも資金繰りを効率的に改善できます。相互関税による経営状況の悪化を懸念される企業は、「F&MClub」の利用を検討してください。



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