【2026年版】企業版ふるさと納税とは?最大9割控除のメリットと活用に向いている企業

株式会社エフアンドエム
決算が近づくと、「税負担を抑えられて、会社としての姿勢も示せる方法はないか」と考える経営者が多いです。その選択肢のひとつが、企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)です。企業が自治体の地方創生プロジェクトに寄附することで、寄附額の最大9割を法人関係税から控除できます。
税額控除の特例措置は令和9年度末(2028年3月末)まで延長され、令和6年度(2024年度)の寄附額は約631.4億円、件数は18,457件と、いずれも前年度比で約1.3倍に拡大しました。活用する企業は着実に増えています。
一方で、個人のふるさと納税とは異なり返礼品を受け取ることはできず、本社が所在する自治体への寄附は控除の対象外になるなど、押さえておくべき条件があります。本記事では、制度の仕組みからメリット・デメリット、手続きの流れ、そして活用に向いている企業の条件までを、中小企業の経営者に向けて整理します。
目次
企業版ふるさと納税とは|個人版との違い
企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)とは、企業が地方公共団体の地方創生プロジェクトに寄附した場合に、法人関係税から税額控除を受けられる制度です。平成28年度に創設されました。
個人のふるさと納税との違いは、次の3点です。
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企業版ふるさと納税 |
個人のふるさと納税 |
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控除される税 |
法人住民税・法人事業税・法人税 |
所得税・住民税 |
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返礼品 |
受け取れない |
受け取れる |
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寄附先の制限 |
本社が所在する自治体は対象外 |
制限なし |
返礼品や経済的な利益を受け取れないのは、地方創生への貢献という趣旨を明確にし、公平性と透明性を確保するためです。寄附の見返りとして補助金を受け取る、入札参加の要件として寄附を求めるといった行為は禁止されています。
令和6年度の寄附額は約631.4億円、前年度比約1.3倍
内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局の発表によると、令和6年度の寄附実績は次のとおりです。
- 寄附金額:約631.4億円(前年度比 約1.3倍)
- 寄附件数:18,457件(前年度比 約1.3倍)
- 寄附を行った企業数:8,464社(前年度比 約1.1倍)
- 寄附を受領した地方公共団体数:1,590団体(前年度比 約1.1倍)
寄附額と件数がともに前年度の約1.3倍に伸びており、制度の利用は年々広がっています。
【出典】内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の令和6年度寄附実績について(概要)」
税額控除の特例措置は令和9年度末まで延長
企業版ふるさと納税は、令和2年度(2020年度)の税制改正で税額控除の割合が拡充され、当初の適用期限は令和6年度末とされていました。その後の税制改正により、特例措置の適用期限は令和9年度末(2028年3月末)まで延長されています。
適用期限まではおよそ1年半です。寄附先の選定や自治体との調整には一定の時間がかかるため、活用を検討する場合は決算期から逆算して早めに動きましょう。
【出典】内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局「令和7年度税制改正(地方創生応援税制の延長)」
最大9割が控除される仕組み
企業版ふるさと納税を活用すると、寄附額の最大約9割を軽減できます。内訳は、税額控除が最大6割、損金算入による軽減が約3割です。企業の実質的な負担は、寄附額の約1割となります。
税額控除の内訳は次のとおりです。
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税目 |
控除割合 |
上限 |
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法人住民税 |
寄附額の4割 |
法人住民税法人税割額の20% |
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法人税 |
法人住民税で4割に達しない場合の残額(寄附額の1割が限度) |
法人税額の5% |
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法人事業税 |
寄附額の2割 |
法人事業税額の20% |
たとえば1,000万円を寄附した場合、最大で約900万円が軽減される計算になります。ただし各税目に上限があるため、実際の控除額は自社の納税額によって変わります。試算のうえで判断してください。
【出典】内閣府地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税(人材派遣型)とは、どのような制度?」
実質的な負担が約1割に収まるとはいえ、寄附する金額そのものは一度手元から出ていきます。どの制度をどの順番で使うかは、自社の利益の見通しと資金繰りをあわせて考えることが欠かせません。成長した企業が実際に取り組んでいる財務の打ち手を31項目にまとめた資料を、無料で配布しています。
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企業版ふるさと納税のメリット
1. 法人関係税の負担を軽減できる
最大のメリットは、税負担の軽減です。税額控除と損金算入を合わせて、実質的な負担を寄附額の約1割に抑えられます。
2. 地域との接点から新しい事業の芽が生まれる
寄附先の自治体や地域住民と協働することで、地域の課題を直接知る機会が得られます。たとえばIT関連の企業が地域のデジタル化を支援するなど、自社の事業と関連づけた取り組みができれば、新しいニーズや市場の発見につながります。
3. 企業イメージの向上につながる
寄附先の自治体は、寄附企業の名称や寄附内容を広報誌やホームページで公表することが一般的です。地方創生に貢献する企業として認知されることで、採用活動や取引先との関係にも良い影響が期待できます。優れた取り組みは「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)に係る大臣表彰」の対象にもなります。
4. 人材派遣型なら社員の育成機会にもなる
企業版ふるさと納税には、寄附とあわせて自社の人材を寄附先の地域へ派遣できる「人材派遣型」があります。地方創生の現場での経験は、社員のスキルアップや視野の拡大につながります。
企業版ふるさと納税のデメリットと注意点
1. 現金の支出を伴う
税負担は軽減されますが、寄附そのものは現金の支出です。実質負担が約1割になるとはいえ、寄附額の全額をいったん支払う必要があるため、資金繰りへの影響を確認しておく必要があります。1回あたりの寄附は10万円以上から選べるため、自社の規模に応じた金額から始めるとよいでしょう。
2. 返礼品や経済的な利益は受け取れない
個人のふるさと納税と異なり、返礼品はありません。「何が得られるか」ではなく「自社の理念に合う地域課題に取り組めるか」という観点で寄附先を選ぶことが、制度の趣旨にも合致します。
3. 寄附先に制限がある
税額控除を受けるには、国が認定した地域再生計画に位置づけられたプロジェクトへの寄附である必要があります。とくに注意したいのが、本社が所在する自治体への寄附は対象外という点です。このほか、地方交付税の不交付団体である都道府県なども対象外となります。
企業版ふるさと納税の活用に向いている企業
ここまでの内容を踏まえると、企業版ふるさと納税は次のような企業と相性のよい制度です。
黒字で法人関係税の負担が大きい企業
控除の上限は法人住民税法人税割額の20%などと定められているため、納税額が大きいほど控除の枠を使い切りやすくなります。
決算期まで期間に余裕がある企業
寄附の実行までには自治体との調整や書類のやり取りがあります。決算期まで数か月の余裕があると、無理のない金額と時期を選べます。
本社以外に縁のある地域がある企業
本社が所在する自治体への寄附は対象外ですが、創業地や工場・支店のある地域、経営者の出身地などであれば寄附先として選べます。
地域への貢献を採用やPRに活かしたい企業
寄附先の自治体は、寄附企業の名称や取り組みを広報誌やホームページで公表することが一般的です。地域への貢献を対外的に示す機会になります。
地方での事業展開や人材育成を考えている企業
寄附とあわせて社員を派遣できる「人材派遣型」を使えば、地方創生の現場が社員の育成の場にもなります。
効果が限られる企業例
赤字などで法人関係税の納税額が少ない企業は、税額控除を使い切れず、損金算入による軽減にとどまります。
また、手元資金に余裕がない企業は、実質負担が約1割であっても、いったんは寄附額の全額を支出する必要があり負担が増えると考えられます。
判断の軸は「税金がいくら減るか」だけではありません。寄附先の取り組みが自社の事業や理念とつながるかどうかまで含めて検討しましょう。
控除を受けるための条件
企業版ふるさと納税で法人関係税の控除を受けるための主な条件は、次のとおりです。
- 国が認定した地域再生計画に位置づけられた、地方公共団体の地方創生プロジェクトへの寄附であること
- 1回あたりの寄附額が10万円以上であること
- 寄附の代償として経済的な利益を受けないこと
- 本社が所在する地方公共団体への寄附ではないこと
- 地方交付税の不交付団体である都道府県への寄附ではないこと
- 地方交付税の不交付団体であり、その全域が地方拠点強化税制における地方活力向上地域以外の地域にある市区町村への寄附ではないこと
手続きの流れ|4つのステップ
ステップ1:寄附先を選ぶ
自社の事業や理念に合う自治体・プロジェクトを探します。国が認定した事業の一覧は、内閣官房・内閣府のポータルサイトで確認できます。
ステップ2:自治体の窓口に問い合わせる
寄附先が決まったら、自治体へ連絡して必要書類を確認します。自治体によっては、事前に寄附申込書や寄附意思確認書の提出を求められる場合があります。支払い方法、期限、領収書の発行方法もあわせて確認しておきましょう。
ステップ3:書類を提出し寄附を行う
自治体の指示に従って書類を提出し、寄附金を支払います。支払い後に発行される受領証(領収書)は、税額控除の申告に必要です。必ず保管してください。
ステップ4:申告時に別表を添付する
法人税および地方税の申告時に、「認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」を作成し、申告書とともに提出します。自治体から交付された受領証も添付します。
【参考】国税庁「認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」
会計処理はどうすればよいか
企業版ふるさと納税による寄附金は、会計上は「寄附金」として全額を費用計上します。そのうえで、税務申告において法人住民税・法人税・法人事業税それぞれの税額控除を適用します。控除を受けるには自治体から交付される受領証が必要ですので、保管を徹底してください。
自社の納税額によって控除できる金額は変わります。実際の適用にあたっては、顧問税理士に確認することをおすすめします。
まとめ
- 企業版ふるさと納税は、寄附額の最大約9割を軽減できる制度である
- 税額控除の特例措置は令和9年度末まで延長された
- 令和6年度の寄附額は約631.4億円、件数は18,457件と、いずれも前年度比約1.3倍に拡大している
- 返礼品は受け取れず、本社が所在する自治体への寄附は対象外となる
- 1回あたり10万円以上から寄附でき、申告時には受領証と別表の添付が必要になる
- 黒字で納税額が大きく、本社以外に縁のある地域がある企業と相性がよい制度である
適用期限までは残り約1年半ですが、寄附先の選定と自治体との調整には時間がかかります。決算期から逆算して検討を始めましょう。
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