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地域未来投資促進税制とは?申請要件・手順などをわかりやすく解説

地方経済の活性化を目的とした地域未来投資促進税制は、近年多くの企業が申請して恩恵を受けています。地域未来投資促進税制の活用を考えている企業でも、詳しく制度の内容を知らない方もいるのではないでしょうか?
 
地域未来投資促進税制は、地域経済牽引事業に必要な設備投資をおこなった際に、所定の税制優遇を受けられる制度です。具体的には、対象資産取得価額に対して最大50%の特別償却・最大6%の税額控除を受けられることが特徴です。
 
今回は、地域未来投資促進税制について申請要件・手順などをわかりやすく解説します。

本記事を読めば、地域未来投資促進税制について詳しく理解し、スムーズに申請手続きをおこなえます。地域未来投資促進税制を活用し、自社の新規事業拡大を効率的に図りましょう。



目次[非表示]

  1. 1.地域未来投資促進税制とは
    1. 1.1.地域未来投資促進税制の具体的な支援内容
  2. 2.地域未来投資促進税制で対象となる資産
  3. 3.地域未来投資促進税制の申請要件
    1. 3.1.①基本計画に合致した地域経済牽引事業計画を策定している
    2. 3.2.②指定された課税特例要件を満たしている
  4. 4.地域未来投資促進税制を利用するメリット
    1. 4.1.税制支援措置を受けられる
    2. 4.2.金融による支援措置など税制支援以外のサポートも受けられる
  5. 5.地域未来投資促進税制を申請する際の注意点
    1. 5.1.確認書が交付される前に取得した資産は支援措置の対象外
    2. 5.2.中古の建物・機械設備などの資産は支援措置の対象外
  6. 6.地域未来投資促進税制を申請する手順・ステップ
    1. 6.1.①地域経済牽引事業計画作成して都道府県知事に提出する
    2. 6.2.②確認申請書を作成および経済産業局へ事前相談する
    3. 6.3.③主務大臣による課税特例の確認を受ける
    4. 6.4.④設備投資後に確定申告を実施する
  7. 7.地域未来投資促進税制で必要な書類一覧
  8. 8.地域未来投資促進税制を活用した企業の事例
    1. 8.1.石田屋二左衛門株式会社
    2. 8.2.株式会社コーアツ
    3. 8.3.タケフナイフビレッジ協同組合
  9. 9.まとめ


地域未来投資促進税制とは

地域未来投資促進税制は、日本政府が地方経済の活性化を目的として設けた税制優遇措置です。地域未来投資促進税制の目的は地域の特性を活かした産業や事業の成長を支援し、地方の雇用創出や人口流出の抑制につなげる点です。

具体的には、地域の産業競争力を強化して地域内外からの投資を促進するために設備投資をおこなう企業に、税負担を軽減する措置を提供します。
 
地域未来投資促進税制は、地方自治体が策定する「地域経済牽引事業計画」に関連する事業が対象です。地域経済牽引事業計画に基づき、地域での成長が期待される分野への投資が促進されるよう税制上の優遇措置が提供される点が特徴です。


地域未来投資促進税制の具体的な支援内容

地域未来投資促進税制の具体的な支援内容としては、以下のような税制上の優遇措置が提供されます。


地域未来投資促進税制の具体的な支援内容

概要

特別償却

企業が取得した新品の機械装置や建物などの減価償却資産に対して、取得価額の一定割合を特別償却として計上できる。最大で対象資産取得価額の50%を特別償却として認められる。

税額控除

特定の要件を満たす場合、取得価額の一定割合を法人税額から直接控除できる。最大で対象資産取得価額の6%を税額控除として適用が可能。


なお、地域未来投資促進税制の適用期限は2025年3月31日までであり、期日までに対象となる資産を取得・運用する必要があります。 対象となる資産の取得価額には80億円の上限が設けられており、税額控除については法人税額などの20%相当額が限度です。


地域未来投資促進税制で対象となる資産

地域未来投資促進税制の対象となる資産は、地域経済牽引事業を推進するために新たに取得される以下のものが該当します。

  • 機械装置:製造や加工に使用する機械や設備
  • 器具備品:事務用機器や工具などの備品
  • 建物およびその附属設備:事業所や工場などの建設物と付随する設備
  • 構築物:倉庫やプラントなどの構造物

 
上記の資産は、製作または建設後、未使用の状態であることが条件です。


地域未来投資促進税制の申請要件

地域未来投資促進税制を活用するためには、以下の申請要件を満たす必要があります。

  1. 基本計画に合致した地域経済牽引事業計画を策定している
  2. 指定された課税特例要件を満たしている

 
地域未来投資促進税制を申請する際は、上記の条件を満たせているか事前に確認しておきましょう。


①基本計画に合致した地域経済牽引事業計画を策定している

まず、事業者は都道府県および関係市町村が策定した基本計画に適合する「地域経済牽引事業計画」を作成し、都道府県知事の承認を受ける必要があります。地域経済牽引事業計画は地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域事業者に経済的効果をもたらす事業である点が求められます。
 
具体的には、地域の産業集積・観光資源・特産物・技術などを活用した先進的な事業である点が重要です。申請する前に事業実施場所の都道府県に相談し、計画内容の適切性を確認することがおすすめです。


②指定された課税特例要件を満たしている

次に、国(主務大臣)による課税特例要件の確認を受ける必要があります。申請にあたっては、通常類型と上乗せ類型(A・B・C)があり、各類型で要件が定められています。通常類型を申請する場合、満たすべき課税特例要件は以下のとおりです。


1.先進性評価委員会により、先進性を有していると認められる(労働生産性の伸び率が4%以上、または投資収益率が5%以上である)
2.取得価額の合計が2,000万円以上である
3.設備投資額が前年の減価償却費の20%以上である
4.対象事業の売上高伸び率がゼロを上回り、かつ、過去5年の対象事業にかかる市場規模の伸び率より5%以上高い
5.旧計画が終了しており、その労働生産性の伸び率4%以上、かつ投資収益率5%以上である

なお、上乗せ類型を申請する場合は、上記の要件に加えて以下の項目を適宜満たす必要があります。
 
6.働生産性の伸び率5%以上、かつ投資収益率5%以上である
7.直近事業年の付加価値額増加率が8%以上である
8.直近2事業年の平均付加価値額50億円以上、かつ3億円以上の付加価値額を創出する
9.経営力の確認を受けた特定中堅企業で、「パートナーシップ構築宣言」の登録を受けており、かつ設備投資額10億円以上である

【引用】地域未来投資促進税制|経済産業省


上記のうち、通常類型と上乗せ類型(A・B・C)で満たすべき要件の数は、以下のとおりです。


申請類型

類型ごとの満たすべき要件数

通常類型

①〜⑤

上乗せ類型A

①〜⑦

上乗せ類型B

①〜⑥+⑧

上乗せ類型C

①〜⑨


上記の要件を満たせば、法人税などの特別償却や税額控除の適用を受けられます。


地域未来投資促進税制を利用するメリット

地域未来投資促進税制は、地方の企業や事業者にとって以下のような多くのメリットを提供する税制優遇措置です。

  • 税制支援措置を受けられる
  • 金融による支援措置など税制支援以外のサポートも受けられる

 
税制支援にとどまらず金融や自治体からのサポートも受けられるため、地域経済の成長に貢献しながら自社の競争力強化や収益拡大を図れます。


税制支援措置を受けられる

地域未来投資促進税制の最大のメリットは、税負担を軽減する特別な税制支援措置を受けられる点です。地域未来投資促進税制を活用すれば、企業は設備投資に対する特別償却や税額控除を受けられます。
 
具体的には、新たに取得した設備に対して最大50%の特別償却や最大6%の税額控除が適用されるのが特徴です。上記の優遇措置は資金繰りに余裕のない中小企業にとって、初期投資の負担を軽減して投資計画をスムーズに進める助けとなります。
 
また、税制優遇により設備投資を早期に回収できるため、企業の財務健全性を高める効果もあります。税制支援を受ければ、事業の収益性向上や競争力強化につながり、長期的な成長基盤を築ける点もメリットです。

金融による支援措置など税制支援以外のサポートも受けられる


地域未来投資促進税制のメリットは、税制支援だけにとどまりません。地域未来投資促進税制制度を活用すれば、以下のようなサポートも受けられます。


税制支援以外のサポート

概要

地方税の減免措置

都道府県や市町村の条例に基づき、固定資産税や不動産取得税の課税免除または不均一課税の適用を受けられる。

金融支援措置

日本政策金融公庫からの固定金利での融資や、信用保証協会による債務保証などの金融支援を受けることが可能。

規制緩和などの特例措置

工場立地法における環境施設面積率や緑地面積率の緩和、農地転用許可手続きの配慮など、事業実施に伴う各種規制の緩和措置が適用される。

予算に関する支援措置

各種予算事業(例:IT導入補助金、ものづくり補助金)において、加点措置や優遇措置を受けられる。


たとえば、日本政策金融公庫が提供する低利融資制度を受けられるため、利子の支払い負担を抑えてスムーズに資金調達をおこなえます。また、工場立地法などの各種規制緩和も受けられ、新規事業を展開しやすくなる点も魅力です。


地域未来投資促進税制を申請する際の注意点

地域未来投資促進税制を活用するためには、申請手続きや条件に関して以下の注意点があります。

  • 確認書が交付される前に取得した資産は支援措置の対象外
  • 中古の建物・機械設備などの資産は支援措置の対象外

上記のポイントに注意して、地域未来投資促進税制を申請しましょう。


確認書が交付される前に取得した資産は支援措置の対象外

地域未来投資促進税制では、事業計画の承認を受けた後に主務大臣から確認書が交付される必要があります。確認書が交付される前に取得した資産は、税制支援措置の対象になりません。必ず、確認書の交付を確認してから対象資産を取得しましょう。


中古の建物・機械設備などの資産は支援措置の対象外

地域未来投資促進税制では、新たに取得した新品の減価償却資産のみが対象です。そのため、中古の建物・機械設備・器具備品などを購入しても税制支援措置は受けられません。
 
制度の目的が、地域経済の牽引力を強化する新規投資を促進する点にあるためです。中古資産が対象外であると知らずに投資をおこなうと、計画していた支援措置を受けられなくなる可能性があります。したがって、購入を検討している資産が未使用の状態であることを確認した上で取得しましょう。


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地域未来投資促進税制を申請する手順・ステップ

地域未来投資促進税制を利用するためには、以下の手順・ステップを踏む必要があります。

  1. 地域経済牽引事業計画を作成して都道府県知事に提出する
  2. 確認申請書を作成および経済産業局へ事前相談する
  3. 主務大臣による課税特例の確認を受ける
  4. 設備投資後に確定申告を実施する

 
各段階を適切に進めて、地域未来投資促進税制の申請手続きをスムーズに進めましょう。


①地域経済牽引事業計画作成して都道府県知事に提出する

最初のステップは、地域未来投資促進税制の根拠となる「地域経済牽引事業計画」を作成することです。地域経済牽引事業計画は事業の概要・目的・具体的な設備投資内容・地域経済への貢献などを明記した書類で、都道府県知事の承認を受ける必要があります。
 
地域の基本計画に基づいている必要があり、地域特性や経済効果を具体的に示さなければなりません。地域経済牽引事業計画の承認には提出後の審査があるため、事前に計画内容を確認して不備がないようにしておきましょう。


②確認申請書を作成および経済産業局へ事前相談する

地域経済牽引事業計画が都道府県知事に承認された後、次におこなう作業が「確認申請書」の作成です。確認申請書には、具体的な設備投資の内容や税制支援措置を受ける理由を明記します。
 
なお、確認申請書を提出する前に経済産業局へ相談し、提出先となる主務大臣を確定させなければなりません。事前相談をおこなわないと申請が受理されないため、注意しましょう。また、主務大臣の確定作業は締切期日が設定されており、早めに事前相談を済ませる必要があります。


③主務大臣による課税特例の確認を受ける

経済産業局との事前相談を経た後は、確認申請書を主務大臣に提出して課税特例の確認を受けます。上記の手続きは税制優遇を適用するためのプロセスで、設備投資計画が税制適用要件を満たしているかどうかが審査されます。
 
主務大臣の確認が下りると、確認書が交付されます。確認書は設備投資後の税制優遇申請に必要となるため、大切に保管してください。


④設備投資後に確定申告を実施する

課税特例確認書の交付を受けた後、計画に基づいた設備投資を実施します。投資が完了したら、年末の確定申告で税制支援措置を適用するための申請をおこないましょう。確定申告の際、設備投資に関する領収書・契約書・確認書などの関連書類を提出し、適用要件を満たしていることを証明します。
 
確定申告が完了すると、指定された特別償却や税額控除の適用を受けられます。申告書の記載内容に不備がないよう、税理士などの専門家のサポートを受けながら進めると安心です。

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地域未来投資促進税制で必要な書類一覧

地域未来投資促進税制を申請する際には、主に以下の書類が必要となります。
 
【地域経済牽引事業計画を申請する際に必要な書類】

  • 地域経済牽引事業計画の承認申請書
  • 定款
  • 直近2期間の事業報告書・貸借対照表・損益計算書
  • 会社概要・パンフレット

 
【主務大臣による課税特例の確認を受ける際に必要な書類】

  • 課税の特例確認申請書

 
上記の「地域経済牽引事業計画の承認申請書」「課税の特例確認申請書」は経済産業省のWebサイトでダウンロードできます。なお、申請する都道府県によって必要となる書類が変わるケースもあります。そのため、事前に都道府県の担当窓口に必要書類について問い合わせておきましょう。


地域未来投資促進税制を活用した企業の事例

地域未来投資促進税制を活用した企業の事例を以下に紹介します。

  • 石田屋二左衛門株式会社
  • 株式会社コーアツ
  • タケフナイフビレッジ協同組合

 
地域未来投資促進税制を申請する際は、上記の事例を参考にしてください。


石田屋二左衛門株式会社

石田屋二左衛門株式会社は、福井県永平寺町で200年以上の歴史をもつ日本酒「黒龍」の蔵元です。地域活性化と発酵文化の発信拠点として、新施設「ESHIKOTO」の整備を計画しました。
 
しかし、建設予定地が農地であったため、通常の手続きでは転用が難しい状況でした。そこで、地域未来投資促進法の規制特例措置を活用して農地転用許可を取得した流れです。
 
さらに、税制支援を受けて投資初期のキャッシュフローを改善し、2022年6月に小売店とレストランを先行オープンさせました。今後は観光施設や宿泊施設との連携を進め、地域経済への貢献を目指しています。


株式会社コーアツ

株式会社コーアツはガス系消火設備の国内トップシェアを誇る企業で、兵庫県三田市に新たな研究棟を建設しました。本研究棟では、自社商品に役立つ新技術の開発や製造部門との連携強化を図っています。
 
同社は地域未来投資促進税制を活用し、研究棟や実験設備に対する税額控除を受けて研究予算をより多く捻出しました。研究予算を拡充できたため、先進的な商品開発に取り組んで競争力の強化と地域経済への貢献を進めています。


タケフナイフビレッジ協同組合

タケフナイフビレッジ協同組合は、福井県越前市で伝統産業である越前打刃物の製造・販売をおこなう組合です。生産力強化と後継者育成のため、新たな工房施設を建設する計画を立てました。
 
地域未来投資促進税制を活用し、不動産取得税の減免や越前市による地域未来投資促進法の承認事業者向け補助金を受けられました。新工房の整備により、効率的な製造体制の構築や若手職人の育成を推進して地域の伝統産業の発展と地域経済の活性化に寄与しています。


【参考】地域未来投資の促進 E!KANSAI 2022年11・12月号 特集|近畿経済産業局


まとめ

地域未来投資促進税制は、地方経済の活性化を目的に地域特性を活かした事業への設備投資を支援する制度です。事業計画の承認や課税特例の確認を経て、新たに取得した設備への特別償却や税額控除を受けられます。
 
さらに、金融支援・規制緩和など税制以外の幅広いサポートを受けられる点も特徴です。制度活用の際は、新品資産の取得や確認書交付後の投資などの条件を満たせているか確認が必要です。地域未来投資促進税制を活用し、自社の新規事業拡大を効率的に図りましょう。
 
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