忘年会に誘うとハラスメント?パワハラといわれない行事の開催方法とは
2024年末から2025年始に忘年会や新年会を開催予定の企業は約6割です。社員への慰労などが目的の忘年会・新年会であっても、参加の強要はパワハラであると考える人が6割を超えるといわれており、社員の意思をどのように尊重すべきか、悩んでいる経営者も多いでしょう。
本記事では、忘年会・新年会を開催するときに注意すべきハラスメントや、パワハラといわれないための行事開催方法などについて解説します。
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忘年会・新年会を実施予定の企業は約6割
今シーズンに忘年会や新年会を開催予定の企業は約6割です。コロナ禍前の2019年においては約8割の企業が開催予定であったため、コロナ禍前の水準までは回復していません。この背景には「忘年会は仕事の一環ではないのか」「強制参加であれば残業代を支給すべき」などの意見があがっていることもひとつの要因であると考えられます。
社員の慰労や親睦を目的とする忘年会・新年会などの飲み会は、社員の「仕事とプライベートとの線引き」が難しくなっているといえます。
2024年に忘年会・新年会を開催する企業は59.6%
2024年12月に東京商工リサーチが発表したアンケートによると、2024年の年末年始に忘年会や新年会を開催する企業は59.6%であり、中小企業のみの場合、58.8%が開催を予定しています。
開催目的は「社員の親睦」(87.1%)、「士気向上」(51.1%)となっています。
【参考】2024年12月「忘・新年会に関するアンケート」調査|東京商工リサーチ
忘年会・新年会を開催しない理由は「低いニーズ」「社員の抵抗感」
忘年会や新年会を開催しない理由としては「開催ニーズが高くない」(65.1%)「参加に抵抗感を示す社員が増えた」(36.6%)などがあげられています。
このような回答は、忘年会・新年会を「コロナ禍前は開催していたが、今回は開催しない」企業からの回答であり、コロナ禍で忘年会・新年会の開催が激減した後、飲み会に対する考え方が変わってきていることがうかがえます。
忘年会の強制は賃金支払・ハラスメントとなる可能性
忘年会開催を巡っては「参加してほしい」「参加させたい」という開催(会社)側の意見と、「労働時間外であれば自由参加または残業代支給としてほしい」というような参加(社員)側の意見がみられます。
経営者としては全社員に参加してほしいところですが、社内行事への参加を強制した場合「賃金の支払義務が発生する」「ハラスメントといわれてしまう」などのリスクが生じる可能性があります。
忘年会・新年会は約9割が「労働時間外」
忘年会や新年会は労働時間外として扱うことがほとんどです。上記の東京商工リサーチが発表したアンケートによると、忘年会・新年会は「労働時間とならない」が90.2%という結果でした。
【参考】2024年12月「忘・新年会に関するアンケート」調査|東京商工リサーチ
飲み会などの会社行事で賃金支払が必要となる条件
飲み会が業務の一部であると判断される場合、忘年会・新年会であっても賃金の支払が必要となる可能性があります。飲み会などの場合でも、業務となる主な条件は次のとおりです。
- 実質的に参加が強制されている
- 参加しない場合「人事考課上マイナスとなる」などペナルティがある
- 飲食代金を会社が負担する
これらの条件は例示であり、個別の事情に応じて判断されます。少なくとも上記の3つにすべて当てはまる場合、業務であると判定される可能性が高まるといわれています。
忘年会の参加強制がパワハラとなる条件
飲み会であっても、実質的に参加を強制する場合は業務となる可能性があるため、参加を嫌がる社員に対し、上司や経営者が参加を強制した場合「パワハラである」といわれかねません。
一般的にパワハラと認定される主な行為は次のとおりです。
①職場における優越的な関係を背景とした言動
②業務上必要かつ相当な範囲を超えている
③労働者の就業環境が害される
忘年会や新年会への参加を嫌がっている社員へ参加を強制した場合、上記の条件①と③に該当する可能性があります。
忘年会はうざい?「ハラスメントといわれない忘年会」のポイント7つ
例年12月頃になると「忘年会はうざい」「忘年会スルー」などの言葉を耳にすることがあります。嫌々参加しているかもしれない社員がいる忘年会では「ハラスメント」といわれる可能性が高くなります。
職場の飲み会で注意すべきハラスメント行為の代表例は次のとおりです。
- 「パワハラ」(パワーハラスメント)
- 「セクハラ」(セクシャルハラスメント)
- 「アルハラ」(アルコールハラスメント)
- 「カラハラ」(カラオケハラスメント)
忘年会などの社内行事を開催する際に「ハラスメント」といわれないための工夫例は次のとおりです。
社内公式行事として開催する
忘年会などを職場の公式行事として開催する方法です。社内公式行事とする際は次のような工夫が主な例です。
- 労働時間内に開催する
- ランチ忘年会として昼間におこなう
- 会議室など職場の一部を使用し、出入り自由で開催する
- 残業手当を支給する
参加を強制しない
労働時間外におこなう行事への参加を強制した場合「労働時間内である」と判断される可能性があります。「自由参加とする」「拘束時間を長くしない」など、社員が自主的に参加しやすい形式が望ましいでしょう。
社員の希望を取り入れる
社員の希望を取り入れ、忘年会に簡単なゲームやクイズなどの要素を盛り込む工夫があげられます。事前準備などの手間は増えますが、工夫次第でイベント全体を盛りあげることができ「また参加したい」と思ってもらいやすくなります。
また、事前にアンケートを取り、開催形式や開催場所などの意見を集めることも効果的です。社員が「自分の意見が反映されている」と感じられることが大切です。
開催案内は複数回おこなう
メールやチャットなどによる開催案内は、見落とす可能性があるため、余裕をもって複数回おこなうことがおすすめです。また、出欠希望について、できる限り柔軟に対応することで、参加率を上げやすくなります。
アルコール・カラオケが苦手な社員に配慮する
「自動車通勤や子育て・介護などの理由で飲み会に参加しにくい」「アルコールやカラオケが苦手」など、個別に事情がある社員も少なくありません。アンケートなどを利用し、社員の事情や好みを考慮し、開催場所・飲食物・開催時間などについて、柔軟に検討しましょう。
アルコールハラスメントに注意する
忘年会・新年会で気を付けなくてはならない行為のひとつがアルハラ(アルコールハラスメント)です。アルハラとは飲酒を強要する行為のことで「お酒が弱い人に飲ませる」「一気飲みさせる」などが該当します。
アルコールに対する考え方は、社員により異なるため注意が必要です。
忘年会・新年会は余興を強制しない
余興など事前準備が多い場合、参加ハードルが高くなってしまいます。「嫌なことをさせられている」と社員が感じている場合、「ハラスメント」であるといわれやすくなります。
余興などを取り入れる場合は、社員の準備負担などに配慮するようにしましょう。
正しい労務管理はF&M Clubがサポート
忘年会・新年会は社員の親睦を深め、社内のコミュニケーションをより円滑とする効果が期待できますが、労働時間外に同僚や上司と過ごすことを避けたいと考える社員もいるでしょう。忘年会などの社内行事は、社員が前向きな気持で参加し、楽しんでもらえる工夫が求められます。
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