中小企業経営強化税制で設備投資を!中小企業が倒産を避ける方法とは?
中小企業経営強化税制を活用すれば、決算後も手元にキャッシュを残すことができ、時には倒産も回避できます。
決算で計上される利益は、そのままにしておくと当然法人税が科せられます。その利益で決算前に会社拡大のために設備投資を考えている経営者も多くいることでしょう。
この記事では、本制度を利用して大きな節税効果を出す方法を解説します。
中小企業経営者は必見です。
目次[非表示]
- 1.中小企業経営強化税制とは
- 2.中小企業経営強化税制を受けるには
- 2.1.適用条件を満たす
- 2.1.1.対象となる事業者の要件
- 2.1.2.対象となる事業内容の要件
- 2.2.経営力向上計画書の作成(策定)
- 2.2.1.計画書作成のポイント
- 3.中小企業経営強化税制のメリット
- 4.中小企業経営強化税制を活用し節税につなげましょう
- 5.中小企業経営強化税制:まとめ
中小企業経営強化税制とは
中小企業経営強化税制とは、平成28年7月1日に施行された中小企業等経営強化法に基づく支援措置の一環の税制です。
本制度で認定を受けた経営力向上計画に沿った設備投資をおこない、指定された事業に利用すると、即時償却すなわち購入額の100%が、経費として計上可能となります。または取得価格の最大10%の税額控除という優遇も受けられます。
通常、1,000万円の設備投資をおこない、耐用年数が5年であるならば、毎年200万円の減価償却費として損金処理できます。しかし本制度の即時償却を利用すると、初年度に1,000万円全額損金処理することができるという制度となります。
税額控除の場合は取得価額の1,000万円の10%、すなわち100万円が法人税から控除されるという仕組みです。
どちらを選択するかはそれぞれの企業の状況によって異なるため、経営・財務・税務全ての観点から判断できる専門機関に相談しましょう。
適用期間
平成29年4月1日から令和5年3月31日
(当初は令和3年3月31日が期限でしたが新型コロナの影響により2年延長されました)
今年度中がチャンスです!
類型の種類
設備投資する目的に応じて4種類に分けらます。
機械装置・工具・器具備品・建物付属設備・ソフトウェアといった設備のうち以下のA~D類型の要件のいずれかを満たすものが対象です。
設備の目的や性能は違いますが、スペックが経営強化すなわち「稼ぐ力」につながるならば、税制優遇をしようという趣旨となります。
それぞれ適用される販売開始時期には幅があり、最新バージョンの機種を購入する必要はありませんが、中古品は対象外のため、注意しましょう。
経営強化税制A類型
生産性向上設備のことを指し、次の2つの要件をクリアし、工業会から取得する証明書を示す必要があります。
- 一定期間内に販売されたモデル(必ずしも最新モデルである必要はありません)
- 生産性が旧モデルと比較して年平均1%以上向上している設備
経営強化税制B類型
収益力強化設備のことを指し、次の要件をクリアし経済産業省から確認書を取得して証明する必要があります。
- 投資収益率が年平均5%以上見込まれる設備
経営強化税制C類型
デジタル化設備のことを指し、次の要件をクリアし経済産業省から確認書を取得する必要があります。
- 事業プロセスの遠隔操作、可視化、自動制御化を可能にする設備
経営強化税制D類型
経営資源集約化設備 のことを指し、次の要件をクリアしなければなりません。少しわかりにくいですが、簡単に言うとM&Aによって他社から取得した設備を意味します。
- 修正ROA(総資産利益率)または有形固定資産回転率が一定割合以上の計画達成を見込める設備
購入予定の設備が上記A〜Dの類型の税制優遇の対象であるかどうかをメーカーに確認することをお勧めします。
中小企業経営強化税制を受けるには
では実際に中小企業経営強化税制による優遇を受けるために具体的な手続きはどのようにすればいいかをみていきましょう。
適用条件を満たす
下記の要件を満たすことで、手続きが可能です。事前に確認しましょう。
対象となる事業者の要件
青色申告を提出する中小企業者であることが必須です。中小企業者とは、下記の要件を満たす事業者を指します。
- 資本金が1億円以下の法人
- 資本がない法人で従業員数が1,000人以下の法人
- 従業員数が1,000人以下の個人
- 協同組合等であること
1の資本金1億円以下の法人であっても、いわゆる大企業から出資を受けている法人は対象外となるなど、例外項目があります。
対象となる事業内容の要件
中小企業投資促進税制の対象事業に該当するすべての事業が本優遇措置の適用対象となります。以下の一覧でご確認ください。
(対象業種一覧)
製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業、飲食店業、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、不動産業、情報通信業、駐車場業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、選択・理容・美容・浴場業、その他生活関連サービス業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)、サービス業(他に分類されないもの)
電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、金融機関業、映画業を除く娯楽業等は対象外です。
経営力向上計画書の作成(策定)
中小企業経営強化税制による優遇を受けるためにはしっかりとした経営力向上計画書を作成し国による認可を受けなければなりません。
認可を受けることによって税制措置優遇、金融や法的の支援などが受けられるため、この機会に自社を見直すという意味も込めてしっかりと計画を立ててみましょう。
計画書作成のポイント
1.申請書様式は3枚程度でOK
企業の概要・現状分析・経営力向上に向けての数値的目標・経営力向上の内容・事業承継をおこなうならばその時期と内容 などを記載して計画を策定します。
2.計画策定のサポート体制
各地方の商工会議所や地域金融機関などの経営革新等支援機関(認定支援機関)によって計画作成のサポートを受けることができます。
この支援機関は「計画作成と一言で言うけどどうすればいいのか分からない」という経営者の方々の声に基づき設立された経緯があります。
決して敷居が高いものではないため、作成する前にまずは相談することをお勧めします。
3.計画の申請と認定
サポートを受けて出来上がった計画を各事業分野の主務大臣に必要書類を添付して提出します。
申請後約30日から45日で計画認定書と計画申請書の写しが交付され、その書類を青色申告時に添付すれば税制優遇措置が受けられることとなります。要件通り確実に計画を立てていればほぼ100%認可されるとのことです。
逆にいえば、申請から認可まで約2ヶ月かかるため、設備投資計画は早めに立て決算に間に合わないということがないようにしましょう。
中小企業経営強化税制のメリット
上記の経営力向上計画が認可されれば、中小企業経営強化税制の優遇措置が実際に受けられます。決算後も手元にキャッシュが残り、融資の返済や運転資金として使うことができるため、大きなメリットがあります。
即時償却
設備投資費用全額を設備取得した年度の経費として損金処理ができ、利益を圧縮することができます。利益を圧縮することで納める法人税の節税につながります 。
冒頭にお伝えした例でいえば、 耐用年数5年の1,000万円の設備を購入した際、初年度決算で1,000万円全額を経費として計上できるため、スポット的に大きな利益が出た年には、経費処理することによって多大な節税効果があります。しかし当然のことながら2年目から5年目までは経費処理ができないため、注意が必要です。
税制控除
税額控除とは、法人税として納める実際の金額から、購入額の10%分を直接税額差し引くという処理です。
今回の例でいいますと、1,000万円の設備投資10%分(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の100万円を決算時に納める法人税から実額を控除するというものです。
この手法を使う方が 毎年200万円の減価償却費は通常の経費処理ができ、かつ初年度の100万円税額控除ができるため、長期的にみれば節税効果が高いといえます。
しかし利益が上がっていない企業で、そもそも税金が発生していない場合には効果はないため注意が必要です。
中小企業経営強化税制を活用し節税につなげましょう
実際に即時償却か税額控除のどちらの優遇措置を選択するかは企業の判断となりますが、現状、即時償却を利用する企業が多いといわれています。
節税メリットは即時償却の方が少ないですが、今のコロナ禍で社会情勢も先行きが見通せない状況では恩恵を受けられる時は早めに受けておくという考えが主流です。
この制度は今年度末で終了することとなっており、今後 非常に注目を浴びることも予想されます。2023年3月末が決算の中小企業が多くあり、駆け込みの申請が増えるとも考えられます。
通常ならば約2ヶ月足らずで経営強化計画の認可が取得できるということですが、今後動きによってはそれ以上かかる可能性も十分にあります。
早め早めに計画を立て、それに見合う設備投資も早期に検討し対策を打っていく必要があるでしょう。
また、「事業計画書」を作成する際には、プロによる「策定支援サービス」の活用もおすすめです。
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ぜひ、ご活用ください。
中小企業経営強化税制:まとめ
中小企業経営強化税制にかかる概要、条件、申請方法について解説しました。
中小企業が経営力を強化するためには、ヒト・モノ・カネ・情報 を最大限に駆使することです。
平成28年7月に中小企業等経営強化法も企業がその重要な4つの要素をすべて出し切ることを目的として制定されました。
施行されてからまもなく6年が経過しますが、今年度末で優遇措置が終了します。活用されている企業もあればまだまだ浸透していない部分もあると思われます。
さまざまな優遇措置が用意されていますが、いつ終了するかはわかりません。
「最後のチャンスかもしれない」と、これを機会に自社のキャッシュフローの改善と将来の企業成長への一歩として検討してみてはいかがでしょうか。