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役員報酬は人件費ではない!?人件費との違い、決め方や水準までを解説

役員報酬は従業員の給与と異なり、会社法や税法上のルール、損金となるための基準があります。高額な役員報酬は経営者の目指すものですが、自社の規模や能力などとのバランスも必要です。
本記事では、役員報酬が人件費(従業員給与)と異なる点、役員報酬額とその決定方法について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.役員報酬と人件費の違い
    1. 1.1.企業からみると、役員と従業員の立場は異なる
    2. 1.2.広い意味で人件費に役員報酬は含まれる
    3. 1.3.経理上の勘定科目は別にしておく
    4. 1.4.役員報酬は3種類
  2. 2.役員報酬の金額の平均値
  3. 3.役員報酬の決め方はルールがあります
    1. 3.1.株主総会の決議または定款による定めが必要
    2. 3.2.役員報酬の金額は年間で固定
    3. 3.3.役員報酬を決めるときは期限に注意
  4. 4.役員報酬を決めるときのポイント
    1. 4.1.損金として認められる範囲
    2. 4.2.利益とのバランス
    3. 4.3.経営者個人の税金・社会保険料
    4. 4.4.従業員への開示は必要?不要?
    5. 4.5.金融機関からの目線
  5. 5.役員報酬・人件費をあげるためには会社の収益向上が大切
  6. 6.経営改善のヒントはココ!F&M Clubが忙しい経営者をサポート


役員報酬と人件費の違い

役員報酬とは役員(取締役、監査役など)へ支給される金銭のことです。
従業員へ支払う賃金と異なり、役員報酬額を決めるためのプロセスが決まっている、税務上のルールがあるなどの違いがあります。


企業からみると、役員と従業員の立場は異なる

企業経営上、役員は企業から経営を委任された立場であり、その報酬として役員報酬を得ます。
従業員給与は雇用契約(労働契約)に基づいて支払いを受けるものであり、役員と従業員とでは会社における性質が異なります。


広い意味で人件費に役員報酬は含まれる

広い意味で人件費という場合、次の内容とすることが多くあります。

  • 給与
  • 賞与
  • 各種手当
  • 福利厚生費
  • 退職金
  • 役員報酬
  • そのほかの人件費(雑給など)

 
役員報酬は雇用関係に基づく支払いではないため、役員報酬は人件費に含まれないとする考え方もあります。


経理上の勘定科目は別にしておく

役員報酬は人件費の一部ですが、福利厚生費などと同様に、従業員への賃金である給与・賞与などの勘定科目とは別とし、区分することが主流です。
役員報酬と従業員の給与とは主に下記の違いがあるため、区分しておくことが望ましいでしょう。


役員報酬

従業員給与

会社との関係

委任関係

雇用関係

時間外勤務手当

非適用

適用される

最低賃金

非適用

適用される

金額

株主総会などで決議

就業規則で定める

日割り計算

非適用

適用される

賞与

原則として損金非算入

原則、損金


役員報酬は3種類

税務上の損金として計上できる役員報酬は3種類が定められています。定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与の3つです。
 
定期同額給与
毎月同額で支払われる役員報酬であり、税務署への届出は不要です。
例外的に、業績が悪化したときはあらかじめ決められている給与から減額できます。

事前確定届出給与
役員にとっての賞与となる性格の報酬であり、事前に税務署への『事前確定届出給与に関する届出書』の提出が必要です。提出時に決定した支給日に支給される必要があります。

●一定の要件を満たす業績連動給与
企業の利益に応じて支払われる報酬です。
有価証券報告書への記載が必要であるため、中小企業での導入は稀といえます。
 
【参考】その他法令解釈に関する情報 法人税 9役員給与等|国税庁


役員報酬の金額の平均値

国税庁が調査した2022年民間給与実態統計調査結果によると、企業規模別(株式会社の資本金別)の役員報酬の平均額は次のとおりです。
資本金額10億円以上の企業を含めた平均役員報酬額は809万円となっています。

資本金額

役員報酬額(給与総額)

~2,000万円未満

647万円

2,000万円~5,000万円未満

953万円

5,000万円~1億円未満

1,233万円

1億円~10億円未満

1,230万円

10億円以上

1,758万円

809万円

【引用】2022年分 民間給与実態統計調査結果|国税庁第6表その3
 
役員報酬額別の人数構成をみると、1,000万円以下が全体の78%を占めています。

【引用】2022年分 民間給与実態統計調査結果|国税庁第6表その1およびその3より作成

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役員報酬の決め方はルールがあります

役員報酬は原則として損金となる従業員給与とは異なり、税務上の損金とするためのルールがあります。


株主総会の決議または定款による定めが必要

会社法においては、役員報酬の額や算定方法を定款に定める、または株主総会の決議によって定めるとされています。(第361条)
一般的な中小企業においては定款で定めず、株主総会での決議を受けて、取締役会で決定することが多いです。
役員報酬を税務上の損金とするためには、株主総会と取締役会で役員報酬について決めた内容を、保存することが必要であり、主な流れは次のとおりです。
 
(株式総会で役員個別の報酬額を決定する場合)

  • 株主総会で役員報酬の総額と役員ごとの報酬額を決定
  • 決議内容について記載した議事録を作成し保存

(株主総会で役員報酬の総額を決定し、個別の報酬額は取締役会で決議する場合)

  • 株主総会で役員報酬の総額を決定
  • 株主総会における決議内容について記載した議事録を作成し保存
  • 取締役会で役員ごとの報酬額を決定
  • 取締役会での決定内容について記載した議事録を作成し保存


役員報酬の金額は年間で固定

原則として、役員報酬(定期同額給与)は毎月一定額での支払いが必要です。
一定額とは、額面が一定である場合だけでなく、源泉徴収などを控除した後の手取りが同額となる場合も含まれます。
 
【参考】タックスアンサー№5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁


役員報酬を決めるときは期限に注意

役員報酬(定期同額給与)は、事業年度の開始時期から3か月を超えると報酬額を変更できません。
ただし、業績が悪化している場合などは役員報酬を減額することが可能です。

役員報酬(事前確定届出給与)は、株主総会などの決議日から1か月以内、または事業年度の開始日から4か月以内のいずれか早い時期までが提出期限となります。
 
【参考】タックスアンサー№5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁


役員報酬を決めるときのポイント

役員報酬の水準を決定するときに注意しておきたいポイントは次のとおりです。

  • 税法上、損金となる水準
  • 自社の業績(利益)とのバランス
  • 社内(従業員)、社外(金融機関)の目


損金として認められる範囲

役員報酬について損金として認められる限度額は税法上定められていません。
ただし、役員報酬額が同業他社や一般的な水準よりも大幅に高額となると、損金計上が認められない可能性があります。(法人税法施行令第70条)
税務上は、職務内容や企業の業績、従業員の給与などが判断の基準となるとされていますが、明確な基準がなく、国税庁が公表している民間給与実態統計調査結果などが参考となるといわれています。


利益とのバランス

役員報酬は一旦決定すると1年間変更できないことが原則です。このため、想定以上の増益となっても急に増額はできません。また、役員報酬の減額についても株主総会などでの決議が必要です。
役員報酬の金額を決定するときは、事前に事業見通しを確認し、資金繰りや利益を圧迫しない金額としておくことが大切です。

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経営者個人の税金・社会保険料

役員報酬が多いと企業の節税が可能ですが、役員報酬が高額となる場合、役員個人における所得税、住民税、社会保険料などの負担が増すため、役員報酬額の決定においては個人の税負担についても考慮します。


従業員への開示は必要?不要?

有価証券報告書を除き、役員報酬について開示する義務はありません。
自社の経営状態を従業員へ説明する機会は多くありますが、役員報酬が高額の場合、従業員からの不満を避けるために公開しないほうが無難といえます。
 
経営者の中には、役員報酬額を従業員給与に近い水準に抑えておき、かわりに保有する自社の株式の配当や会議費、旅費日当など役員報酬以外の収入やそのほかの節税で所得を確保している人もいます。


金融機関からの目線

金融機関は役員報酬額についても注意しています。金融機関が役員報酬に注目する主な理由は次のとおりです。
 
(業績が好調な企業の場合)

  • 役員報酬が不当に高額ではないか
  • 経営者個人の資産形成や相続対策の提案などの必要性があるか

(業績が悪化している企業の場合)

  • 役員報酬の減額による黒字化や資金繰りの改善が可能であるか
  • 緊急時に経営者から会社への資金投入が可能であるか
    (社長貸付金などがある企業の場合)
  • 社長貸付金など企業から経営者個人に対する債権の解消見通しがあるか


役員報酬・人件費をあげるためには会社の収益向上が大切

役員報酬など経営者の収入が多いほど、日々経営に奮闘した成果を実感しやすくなります。
また、従業員についても給与水準が高いほど満足度を向上させやすく、定着率が高くなりやすいでしょう。
 
役員報酬や従業員給与などの人件費をあげるためには、自社の収益力を向上させるとともに、毎月一定額の支出が必要な固定費を、円滑に支払える資金繰りの改善が必要です。
 
会社の収益の向上と資金繰りの改善は、しっかりとした計画の策定、着実な実行、そして資金繰りを改善させる取組みが必要となります。


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