決算月の決め方は?一般企業の傾向や変更方法も紹介
3月決算・9月決算など、企業によって決算月は異なります。新たに法人を設立する際、決算月をいつに設定すべきか悩む方も多いでしょう。
一般的には、3月を決算月として選ぶケースが多いです。しかし、国際基準に基づいて12月決算に設定しているケースもあり、企業によって適した決算月は異なります。
今回は自社に適した決算月の決め方について、一般企業の傾向や変更方法について紹介します。本記事を読めば、自社にふさわしい決算月を把握し、スムーズに設定可能です。自社に適した決算月を決めて、新規設立した会社を軌道に乗せましょう。
目次[非表示]
- 1.決算月(決算期)とは?
- 2.一般的な企業の決算月を多い順に解説
- 3.法人の決算月の決め方は5つある
- 3.1.資金繰りを考慮して決める
- 3.2.自社の繁忙期を避けて設定する
- 3.3.消費税の免税期間を最大化できるようにする
- 3.4.社内の各部門の業務量も加味して決める
- 3.5.大きく売上が上がる時期の直前に設定する
- 4.決算月を決めるうえでの注意点
- 5.決算月は後から変更が可能
- 6.決算月を後から変える方法・手順
- 7.決算月を忘れた場合に調べる方法
- 7.1.定款に記載されている事業年度を確認する
- 7.2.法人設立届出書の控えを見る
- 7.3.管轄の税務署に問い合わせる
- 7.4.設立手続きを依頼した行政書士・司法書士に確認する
- 8.まとめ
決算月(決算期)とは?
決算月(決算期)とは企業が一定期間の経営活動の成果を集計し、財務諸表を作成するための基準となる月や期間です。通常、企業は1年間を一つの会計期間とし、最後の月を決算月として設定します。決算月に売上・費用・利益などを確定させ、株主や税務当局に提出するための決算書類を作成します。
たとえば、4月から翌年3月までを会計期間とする場合、3月が決算月です。決算期には年次決算や税務申告の準備がおこなわれるため、経理部門や関係者にとって最も重要かつ忙しい時期となります。また、決算期で作成される財務諸表は企業の経営状況を評価する重要な指標であり、投資家や取引先も注目するポイントです。
一般的な企業の決算月を多い順に解説
企業の決算月は事業活動や税務申告の効率性を考慮して選ばれるケースが多く、特定の月に集中する傾向があります。
国税庁の「決算期月別法人数」によると、事業年度を年1回とする法人に関して最も多いのが3月決算で、法人数は543,709社です。次いで、9月決算が290,587社、12月決算が245,664社となっています。
引用:決算期月別法人数|国税庁
上記のデータからも分かるとおり、日本国内では3月決算が最も一般的です。理由は国や地方自治体の会計年度(4月~翌年3月)と一致しているため、公共事業や取引先とのスケジュール管理がしやすい点があげられます。
また、12月決算も多くの企業で採用されています。グローバル企業が国際基準に基づいてカレンダーイヤー(1月~12月)を採用しており、海外取引が多い企業にとって利便性が高いためです。
そのほか、6月決算や9月決算の企業も一定数存在します。6月決算や9月決算は、業界や事業規模に応じて「繁忙期を避ける」「特定の事業サイクルに合わせる」などのために、選ばれるケースが多いです。
法人の決算月の決め方は5つある
法人の決算月の決め方として、主に以下の5つがあげられます。
●資金繰りを考慮して決める
●自社の繁忙期を避けて設定する
●消費税の免税期間を最大化できるようにする
●社内の各部門の業務量も加味して決める
●大きく売上が上がる時期の直前に設定する
上記の方法を参考に、自社の状況に適した決算月を決めましょう。
資金繰りを考慮して決める
決算月を決める際には、資金繰りを第一に考えることが重要です。企業にとって決算期は税金の支払いや取引先への決算報告などで、多額の支出が発生する時期でもあります。そのため、収入が安定している時期やキャッシュフローに余裕がある月を選べば、資金難に陥るリスクを軽減できます。
たとえば、繁忙期にキャッシュフローが潤沢になる業種では、直後のタイミングで決算月を設定するのがおすすめです。また、金融機関からの借入を計画している場合は決算書が必要となるため、金融機関の融資スケジュールも視野に入れる必要があります。
自社の繁忙期を避けて設定する
繁忙期を避けた決算月の設定も重要です。繁忙期は売上が集中する一方で業務が増加し、経理や管理部門も多忙になる時期です。繁忙期に決算業務をおこなうと、ミスが発生しやすく、従業員の負担も増大します。そのため、業務が比較的落ち着いている時期に決算月を設定すれば、効率的かつ正確な決算処理が可能となります。
たとえば、飲食業や小売業では年末年始などが繁忙期に該当するため、前後のタイミングを避けて設定するケースが多いです。自社の事業特性をよく把握し、業務負担を分散できるタイミングを選びましょう。
消費税の免税期間を最大化できるようにする
設立間もない法人にとっては、消費税の免税期間を最大限活用できるよう決算月を設定することも有効です。法人設立後における最初の2期は一定条件を満たせば消費税が免除されますが、会計期間が短いと免税期間も短くなってしまいます。
たとえば、設立日が5月の場合、決算月を12月に設定すると最初の会計期間が8カ月となり、免税期間が短縮されてしまいます。一方、翌年4月を決算月に設定すれば、最長の12カ月間を確保でき、免税期間をフルに活用できるのがメリットです。税務面でのメリットを最大化するためには、会計期間の長さも慎重に検討する必要があります。
社内の各部門の業務量も加味して決める
決算月を決める際には、経理部門だけでなく社内全体の業務量も考慮すべきです。たとえば、生産部門では決まった時期に棚卸し作業が発生し、業務が集中する傾向があります。
上記のような時期に決算業務が重なると、各部門間でリソースの奪い合いが起こり、業務効率が低下する恐れがあります。決算業務は全社的な取り組みが必要なため、各部門の負担を分散できる月を選ぶことが重要です。また、決算に伴う監査や税務対応など外部機関との調整も考慮してスムーズに進行できるタイミングを選ぶと、より効率的な決算が可能となります。
大きく売上が上がる時期の直前に設定する
売上が大きく上がる時期の直前を決算月に設定すれば、財務指標が良好な状態として評価されやすいためおすすめです。多くの売上が計上される時期の直後を避ければ、在庫や仕入れが増加する前の状態で決算を迎えられ、貸借対照表上の財務状況を健全に保ちやすくなります。また、売上が大きく上がる時期を期首にすれば、事業年度での売上予測も立てやすくなる点もメリットです。
ほかにも、営業利益率やキャッシュフローの状況が良い時期を選べば、投資家や取引先に対して好印象を与えられます。ただし、決算月の設定は一時的な数字の見栄えに偏らず、長期的な経営目線での検討が重要です。
決算月を決めるうえでの注意点
決算月を決めるうえでの注意点として、以下のポイントを押さえておきましょう。
●税理士ではなく自社の都合で決算月を決める
●決算月を変更する場合は月割り計算が必要となる項目がある
決算月の選定にはさまざまな要素を考慮する必要がありますが、上記の注意点を見逃すと後々の経営に影響を及ぼす可能性があります。
税理士ではなく自社の都合で決算月を決める
決算月を決める際に、税理士や会計事務所の提案に頼りすぎることは避けましょう。税理士は専門家として適切なアドバイスを提供しますが、最も重要なことは自社の業務スケジュールや経営状況に合った決算月を選ぶことです。
たとえば、税理士が多くのクライアントを抱えている場合、繁忙期を避けるために3月や12月以外を推奨するケースもあります。しかし、税理士が提案した決算月で、キャッシュフローが安定していない・繁忙期である、などの場合、自社の資金繰りや業務効率に悪影響を与える場合もあります。
自社の事業サイクル・繁忙期・業務リソースを十分に考慮し、自社にとって最適な決算月を選ぶことが優先されるべきです。税理士の意見を参考にしつつ、自社の経営判断を重視する姿勢が重要です。
決算月を変更する場合は月割り計算が必要となる項目がある
一度決めた決算月を変更する場合には、慎重な対応が求められます。決算月の変更に伴い、会計期間が短縮または延長されるため、税務や財務上の調整が必要です。
たとえば、法人税や消費税の計算では、変更後の会計期間に応じて税額を月割りで再計算する必要があります。また、社会保険料や従業員の年末調整に影響を与える場合もあり、関係部門や外部専門家との綿密な連携が欠かせません。
さらに、決算変更に伴う登記の変更手続きや取引先・金融機関への通知など事務的な対応も発生します。上記の手間やコストを考慮した上で、決算月の変更が本当に必要であるのか、慎重に判断しましょう。
決算月は後から変更が可能
法人の決算月は、設立時に定めた後でも変更が可能です。たとえば、事業規模の拡大や事業内容の変化に伴い、資金繰りや業務効率を改善するために変更を検討する企業も少なくありません。ただし、決算月を変更する際には、いくつかの注意点があります。
まず、変更には登記変更が必要で、所定の手続きや費用が発生します。また、変更によって会計期間が短縮または延長されるため、新たな事業年度に基づいた法人税や消費税の計算が必要となります。さらに、取引先や金融機関にも事前に通知し、決算書類の提出スケジュールが変わる可能性を共有しておきましょう。
決算月の変更は経営戦略や効率化に役立つ一方で手間やコストも伴うため、公認会計士・税理士などの専門家と相談しながら慎重に検討しましょう。
決算月を後から変える方法・手順
決算月を変更するためには、以下の手続きが必要です。
- 株主総会で決議をおこなって定款を変更する
- 税務署に「異動事項に関する届出」を提出する
上記の手順を参考に、必要な場合に決算月を変更しましょう。
①株主総会で決議をおこなって定款を変更する
決算月を変更する際は、まず株主総会での決議が必要です。法人の決算月は定款に明記されているため、変更するためには株主総会での承認が必要となります。
具体的には、取締役会(または経営陣)で変更案をまとめて株主総会で議案として提出します。株主総会で議案を承認されるためには、過半数以上の株主が参加した上で、議決権で数えて3分の2以上の賛同を得なければなりません。
議案が承認された場合、定款変更の手続きに進みます。株主総会の開催や議事録の作成には一定時間がかかるため、事前の計画が重要です。
②税務署に「異動事項に関する届出」を提出する
定款を変更した後は税務署への届出も必要で、「異動事項に関する届出書」と呼ばれる書類を提出しておこないます。「異動事項に関する届出」には変更後の会計期間や新しい決算月を記載し、正確な情報を税務署に報告します。
提出期限は、決算月を変更した日から原則1カ月以内です。書類の準備には、変更登記を証明する書類や法人の基本情報が記載された書類が必要となります。税務署への届出を怠ると今後の税務申告に支障が生じる可能性があるため、税理士などの専門家に相談して手続きをおこないましょう。
決算月を忘れた場合に調べる方法
決算月を忘れてしまった場合、以下の方法で簡単に調べられます。
●定款に記載されている事業年度を確認する
●法人設立届出書の控えを見る
●管轄の税務署に問い合わせる
●設立手続きを依頼した行政書士・司法書士に確認する
決算月は税務申告や経営管理において重要な情報であるため、上記の方法ですぐに確認しましょう。
定款に記載されている事業年度を確認する
法人の定款には、事業年度や決算月が必ず記載されています。定款は設立時に作成する公式な文書であり、決算月のほかに会社の基本情報が詳しく記載されています。
通常、定款の写しは会社の重要書類として保管されているため、まずは自社の保管場所を確認しましょう。もし手元にない場合、設立時に管轄の法務局に提出した定款の閲覧も可能です。
法人設立届出書の控えを見る
法人設立時に税務署へ提出した「法人設立届出書」の控えにも、決算月が記載されています。法人設立届出書は設立後の税務手続きに必要な情報を網羅しており、税務署からの受理印が押された控えを保管しているはずです。
「法人設立届出書」の控えは設立後の法人税や消費税の申告の際に必要になるケースが多く、経理や総務の担当者が管理している場合もあります。もし、法人設立届出書の控えが見つからない場合は次に紹介する方法を試しましょう。
管轄の税務署に問い合わせる
もし社内に決算月の記録が見当たらない場合、管轄の税務署に問い合わせて確認できます。税務署には法人が提出した設立届出書や過去の申告書が保管されており、決算月を含む法人情報を教えてもらえます。
問い合わせの際には法人名や所在地、法人番号などの基本情報が必要です。電話や窓口での問い合わせが可能ですが、個人情報保護の観点から事前に本人確認の手続きが求められる場合もあります。
設立手続きを依頼した行政書士・司法書士に確認する
法人設立手続きを専門家に依頼した場合、当時の担当者に確認することも有効です。行政書士や司法書士は、設立時に作成した定款や届出書類の控えを保管していることが一般的です。
連絡を取れば、決算月を含む事業年度の情報を教えてもらえる可能性があります。ただし、設立から時間が経過している・事務所を変更している、などの場合は確認に時間がかかるケースもあるため、早めに問い合わせましょう。
まとめ
決算月は、法人の経営状況を把握し税務申告をおこなうための重要なタイミングです。選定の際は、資金繰り・繁忙期・消費税免税期間・社内の業務量などを考慮しましょう。一度設定した決算月は変更可能ですが、株主総会での定款変更や税務署への届出が必要です。
決算月を忘れてしまった場合は、定款や法人設立届出書の確認・管轄税務署への問い合わせ・設立手続きを依頼した専門家への確認などが有効です。決算月の設定や変更は経営効率や税務負担に直結するため、事前の計画と専門家のサポートを活用しましょう。
なお、決算月も含めた財務状況の管理にはF&M Clubの利用がおすすめです。
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●信用保証協会と同様のスコアリングシステムを用いて財務状況のレポートを提出
●1年後までの資金繰り表を作成
●財務アドバイザーから資金繰り改善施策の提案
自社の財務状況を客観的な数値ベースで把握できるため、決算月の設定時期を含めた経営判断を大きくサポートできます。資金繰りに悩む場合は、企業の状況に合った改善策を提案可能です。
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