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決算期変更手続きのやり方とは?メリットや注意点を解説

日本の多くの企業では3月を決算期に設定していることが多く、仮に3月が繁忙期だったとしても決算期を3月にしていることもあるでしょう。しかし決算期は自社の事業状況に併せて設定した方が、効率的に経営できます。

本記事では、決算期変更手続きのやり方やメリット、注意点について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.決算期を決める方法
  2. 2.決算期変更手続きのやり方
    1. 2.1.定款を変更する
    2. 2.2.議事録を作成する
    3. 2.3.税務署に「異動事項に関する届出」を提出する
  3. 3.決算期を変更するメリット
    1. 3.1.節税になる
    2. 3.2.資金繰りを調整できる
    3. 3.3.役員報酬変更の時期を変えられる
    4. 3.4.余裕のある時期に決算業務をおこなえる
  4. 4.決算期を変更する注意点
    1. 4.1.納税のタイミングが早まる
    2. 4.2.税金の計算に調整が必要になる
    3. 4.3.前年度との比較が複雑になる
    4. 4.4.変更手続きに手間と時間がかかる
  5. 5.F&M Clubの「資金繰り改善」サービス
  6. 6.まとめ

決算期を決める方法

決算は、1年間の収入と支出を算出し利益と損失を把握するため、企業経営の総括と位置付けられます。決算によって1年間の業績を振り返られるため、事前度の予算や計画、事業の改善点を考える上でも役立ちます。


決算期は、日本政府や地方公共団体などの会計年度が4月から3月となるため、多くの企業において決算期を3月に設定しています。そのため起業する際に、他社に併せて決算期を3月にすることも多いです。しかし決算期は、3月にこだわる必要はなく自社の繁忙期を勘案して決めた方が、決算に割かなければならない労力を和らげることができます。


決算期変更手続きのやり方

決算期の変更は、社長が決めればできるわけではありません。株主総会を開いて定款を変更するなどの手続きが必要です。決算期変更手続きのやり方として次の3つの点を抑える必要があります。


  • 定款を変更する
  • 議事録を作成する
  • 税務署に「異動事項に関する届出」を提出する


それぞれ解説していきます。


定款を変更する

一般的に会社の定款において事業年度を記載していることが多いため、決算期を変更する場合、定款を変更しなければなりません。なお定款を変更するためには、株主総会の特別決議が必要です。


株主総会の普通決議は、議決権行使できる株主の議決権のうち過半数が出席し、出席した株主の議決権の過半数が賛成することで成立します。しかし特別決議の場合、定足数は普通決議と変わらないものの、表決数は出席した株主の議決権のうち3分の2以上の賛成がなければ成立しないため注意が必要です。


なお定款に事業年度を記載することは任意とされています。しかし起業の際に事業年度を記載していれば、株主総会において定款変更する必要があります。ただし事業年度の記載は定款の任意項目となるため、特別決議で事業年度を変更しても、公証役場で定款を認証することや、法務局で定款変更を登記する必要はありません。


また定款変更を司法書士や、行政書士に依頼せずに自社で手続きすれば、費用をかけずに変更できます。


議事録を作成する

定款に事業年度が記載されていれば、株主総会の特別決議が必要となり、その際に株主総会の決議内容を記載した議事録を作成しなければなりません。株主総会の議事録があることで、議決権総数や出席した株主の議決権行使の状況や、対外的に事業年度を変更したことがわかります。


なお株主が社長ひとりのような規模の小さい会社であれば、株主総会を開催せず議事録の作成のみで終わらせることもあります。


税務署に「異動事項に関する届出」を提出する

事業年度の変更は登記事項ではないため、法務局へ届け出る必要がありません。しかし会社の住所地を所轄する税務署や都道府県税事務所、市区役所、町村役場に「異動事項に関する届出」を提出する必要があります。


提出は事業年度の変更後速やかにおこなう必要があり、届出書と株主総会議事録のコピーを添付します。なお事業年度の変更は、税務署などの他に主要な取引先や金融機関にも連絡する必要があります。


決算期を変更するメリット

決算期の変更は、自社の経営効率が上がるでしょう。主なメリットとして次の4つがあります。


  • 節税になる
  • 資金繰りを調整できる
  • 役員報酬変更の時期を変えられる
  • 余裕のある時期に決算業務をおこなえる


それぞれ解説していきます。


節税になる

決算期の変更による最大のメリットは節税になる点です。もし決算月に大きな利益が発生してしまうと、決算後に支払う法人税が大幅に上がってしまいます。節税対策の一環として決算期を変更する場合、大きな利益が出た月を翌年に持ち越すことで、その年度の納付を抑えられます。


また消費税の免税事業者であれば決算期の変更によって、消費税の免税期間を延長できます。消費税の免税事業者が課税対象者になる基準は、1事業年度の売上が1,000万円を超える場合で、1,000万円を超えた年度を基準に、翌々事業年度から課税事業者となります。しかし決算期を変更することで、免税期間が延長するため、1,000万円を超える売上の見込みがある場合に免税することが可能です。


決算期の変更による節税対策は、他の節税対策を組み合わせることで効果が高まります。例えば、役員報酬の変更や生命保険を活用した簿外資産の積立をなど活用する方法があるため、併せて活用することをおすすめします。


資金繰りを調整できる

決算期を変更することで資金繰りの調整が可能です。法人税の納付は、決算日の2カ月後までに納めなければなりません。

例えば、決算月に大きな利益が出る場合、実際に現金として企業に入ってくる時期は1~2カ月になることが多いです。

もしあらかじめ予想できる場合、事業年度を早めることで大きな利益を、次年度に持ち越せます。また予想できない場合であれば、事業年度を遅らせることで、現金が入った時点で次年度に向けた資産の購入や、従業員の賞与の支給などで税金対策することも可能です。


役員報酬変更の時期を変えられる

決算期を変更することで、役員報酬変更のタイミングを作り出せます。役員報酬を変更する場合、決算期の末日から3カ月以内に株主総会を開催して決議を取る必要があります。


役員報酬は原則として毎月一定金額にする必要があるため、決算期内で増減させられません。会社が役員報酬を増減させて、利益調整することを防ぐためです。もし役員報酬を変更したければ、決算期を変更することでおこなえます。


余裕のある時期に決算業務をおこなえる

決算月が繁忙期と重なっている場合、通常の業務に加えて決算書や法人税の申告書の作成もする必要があるため、会社全体に余裕がなくなります。決算期になると、会計書類の作成だけではなく、経営者と経理担当者、税理士などとの打ち合わせも必要です。


決算業務に余裕がなくなればミスも増えるため、比較的余裕のある時期に変更すれば経営者を始め各部門の連携にゆとりが生まれます。


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決算期を変更する注意点

決算期変更はメリットが多いものの、注意すべき点もあるため、主な注意点として4つ解説します。


納税のタイミングが早まる

法人税の申告において、1年を経過した日を1つの事業年度として扱い、申告することになるため、決算期変更年度は通常よりも短い期間で決算業務をおこなわなければなりません。短期間の決算処理や申告、納税といった対応となります。また税理士などの専門家へ支払う費用もタイミングが早まるため注意が必要です。


税金の計算に調整が必要になる

決算期の変更によって事業年度が短くなることで、税金の調整が必要となります。


減価償却資産の償却限度額は、1年の事業年度を前提として計算します。しかし決算期を変更することで、変更した年度の月数で償却限度額を計算しなければなりません。


中小法人などの軽減税率は年間800万円までの所得に適用されます。しかし決算期を変更した場合、年間800万円の軽減税率のうち、その事業年度の月数に応じた金額に調整しなければなりません。


消費税は、決算期を変更した年度だけでなく次年度以降も関わるため注意が必要です。法人の消費税を決める基準期間は、原則として前々事業年度となり、事業年度が1年未満であれば基準期間となりません。


決算期を変更して1年未満の事業年度になった場合、変更した事業年度が開始した日の2年前の前日から1年を経過する日までの期間に、変更された各事業年度を併せた期間となります。


前年度との比較が複雑になる

決算期を変更した事業年度は、1年未満の事業年度となるため、前年までの決算書などの財務書類との比較が難しくなります。例えば決算期を変更した事業年度が6カ間だった場合、単純に半期分として比較することは可能です。しかし月ごとや季節ごとに売上や仕入れ費用などに変動がある場合、注意して確認する必要があるでしょう。


あくまで参考としての数値の域を出ないため、比較が難しく業績判断がしづらくなります。


変更手続きに手間と時間がかかる

決算期変更手続きは定款変更の必要から株主総会の特別決議が必要です。株主総会を開催するため、議事録の作成も必要となり、変更が終われば所轄の税務署に異動の届出をおこない、主要な取引先や金融機関にも連絡しなければなりません。


決算期の変更によって、節税効果や資金繰りの調整などができるものの、その度に手続きの手間と時間がかかるため、何度も変更することは現実的ではないといえます。


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まとめ

決算期は、日本政府を始めとする公的機関の会計年度が4月から3月であることや、大企業なども3月の決算期に併せているため3月に設定したままにしていることも多いです。しかし取引先に公的機関がない場合や、3月が繁忙期といった理由であれば、決算期を変更することで、会社内の業務を集中させないようにできます。

また決算期変更手続きによって、節税になることや資金繰り改善といったことで変更することもあります。

変更のやり方としては、定款に事業年度が記載されていれば株主総会を開催して特別決議する必要があり、その後所轄の税務署に異動の届出を出さなければなりません。ただし決算期の変更で、納税のタイミングが早まったり、計算が複雑になったりすることがあるため注意が必要です。


もし決算期変更手続きで、資金繰り改善を考えている場合、株式会社エフアンドエムではF&M Clubの「資金繰り改善サービス」も提供しているため、お気軽にご相談ください。


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