与信管理の必要性とは?会社の主要取引先は安全ですか?
中小企業が倒産する理由の多くは、取引先企業の与信管理をしていないことが挙げられます。
与信管理が甘いために売掛金の未回収が多くなってしまったり、帳簿上は黒字であっても不渡りを出してしまったりすることにより、倒産する中小企業が多いといわれています。
新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言の影響もあり、売上金の未回収はどの中小企業にも起こり得るものとなりました。
不確実性の高い現在において、今まで以上に与信管理が重要となっています。
この機会に日々の取引を与信管理の観点から確認してみましょう。
目次[非表示]
- 1.与信管理の重要性は理解できていますか
- 1.1.中小企業が倒産する原因は与信管理にあり
- 1.2.主要取引先の与信管理はできていますか?
- 1.3.リーマンショックから見る連鎖倒産
- 2.与信管理に心配を感じた経営者がやるべきこと
- 2.1.倒産危険度チェックリストで取引先を評価する
- 2.2.専門の会社に依頼する
- 3.与信管理の方法・基準を解説
- 3.1.与信管理の基準とは
- 3.2.与信承認までの流れ
- 3.3.与信承認後の管理方法
- 4.まとめ
与信管理の重要性は理解できていますか
ウィズコロナ時代において、与信管理は今まで以上に重要視されています。会社を経営していれば身を持って与信管理の重要性を感じているはずですが、残念ながら与信管理の重要性が認識できていない経営者もいらっしゃいます。
まずは経営者ならば理解しておきたい与信管理の重要性から解説します。
中小企業が倒産する原因は与信管理にあり
中小企業が倒産する原因を分析してみると、取引先の与信管理ができていなかったために、売上金の未回収などが起こり倒産に繋がってしまうことが多いといえます。
中小企業の取引では「ある程度取引の回数を重ねているから」などと、根拠のない自信で「大丈夫」だと認識してしまいがちです。皆さんの中にも「長く取引をしているから与信管理などしなくても大丈夫」との考えをお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
与信管理を軽視している経営者自身が、会社を倒産させるきっかけになりかねません。
特に新型コロナウイルス感染症の影響で多くの企業が打撃を受けている世の中において、今までの考え方は通用しないと考えましょう。
主要取引先の与信管理はできていますか?
「自分は与信管理ができているだろうか」と今一度、振り返りを行うことは大切です。与信管理の重要性を認識するだけでなく、実際に適切な与信管理をしなければなりません。
取引先の与信管理はできていますでしょうか。
経営者ならば即答で「はい」と答えられるはずです。
もし自信を持って「はい」と答えられない場合、その理由について考えてください。
「与信管理ができていない」と「与信管理はしているが自信を持てない」では大きく異なります。前者に該当するならば、与信管理の重要性を認識し今すぐ行動に移すようにしてください。
リーマンショックから見る連鎖倒産
2008年に米国投資銀行のリーマン・ ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻し、世界的な不況が訪れました。この時期から会社を経営している人であれば、世界的な不況を経験されており、実際に経験していなくとも、経営者ならば知識として持っているはずです。
リーマンショックが起きた2008年、日本では上場企業倒産は戦後最多の33件を数え、08年の年間全国倒産は1万5,646件となりました。年間15,000件以上の倒産が起きると「危険ライン」と考えられていますので、2008年はこの危険ラインを超えています。
倒産理由については資料に明記されていないものの、リーマンショックにより売掛金の未回収が多発してキャッシュフローに問題が生じたと推測されます。
キャッシュフローに問題が生じた理由は、与信管理を重要視していなかったからだといえます。
与信管理を怠っていたために、売掛金の未回収が生じるリスクをキャッチできず、結果として想定していたキャッシュが入って来ずに倒産したと考えられます。
リーマンショックでは与信管理が影響し、キャッシュフローの問題から上場企業ですら倒産しました。
中小企業ならば、早々にお金が回らなくなり上場企業よりも早く倒産するのは火を見るよりも明らかです。
【参考】企業倒産で振り返る「平成」30年(前編)~バブル崩壊、金融危機、リーマン・ショックに揺れた日本経済~│東京商工リサーチ
与信管理に心配を感じた経営者がやるべきこと
経営者にとって与信管理は非常に重要な作業です。経営者が与信管理しない状況は、会社を倒産させると言っても過言ではありません。
しかし、「与信管理は重要だ」との認識はあったとしても、具体的に何をすればよいのか悩んでいる経営者もいらっしゃいます。以下2つの方法で与信管理をしましょう。
- 倒産危険度チェックリストで取引先を評価する
- 専門の会社に依頼する
倒産危険度チェックリストで取引先を評価する
チェックリストには、経営者同士の交流を利用して倒産しないかどうかを察するポイントが記載されています。不自然に思われない範囲で会話を工夫すると、倒産する危険性がないかをチェックできるようになっています。
レベル1 |
レベル2 |
レベル3 |
レベル4 |
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ヒト
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社長
代表者
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□生活が急に派手になった
□分相応な家を建てた
□株式、不動産、商品等の投資に積極的
□家庭不和の噂がある
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□本業を疎かにし、政治や宗教に凝る
□顔つきが悪くなる
□現実離れの話をするようになる
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□不在がち
□不審な行動が目立つようになる
□約束を守らなくなる
□交遊関係に悪い噂がある
□長期入院する
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□所在不明になる
□ワンマン社長が死亡する
□犯罪を犯す
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幹部
社員
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□社員の対応がぞんざいになっている
□社員の服装が乱れている
□暇そうな社員が目立つ
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□風紀が乱れる
□遅刻欠勤が目立つ
□会社の悪口を社外で言う
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□役員間の反目がある
□接待が派手になる
□会社に出入りする顔ぶれが変わる
□商社や銀行から派遣された役員、幹部がいる
□パートを含む退職する者が急増した
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□幹部社員がこぞって辞めた
□幹部社員が背任、使い込み
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モノ
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商品
製品
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□商品管理がキチンとできていない
□商品構成がアンバランス
□安価な競合商品の出現
□設備が陳腐化している |
□在庫が急増または急減した
□商品の品揃えが悪くなった
□売れ残り商品が目立つ
□稼働していない設備がある |
□扱い商品が市場のニーズに合わなくなった
□本業に関係のない商品が増えた
□大口の返品やクレームが発生した
□納期遅れが頻発する |
□在庫融資や在庫買上げの要請を受けた
□極端な安売りを始めた
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仕入
販売
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□仕入先に弱小先が多い
□主力仕入先がない
□安定した販売先がない
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□仕入先が変わる
□関係会社同士の取引が急増
□不自然な荷動きがある
□仕入れに苦慮し始める |
□値決めに対し厳しさがなくなった
□販売先が頻繁に変わる
□支払納期が守れなくなる
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□契約の締結や商品の引取りを急がせるようになった
□代金の支払いを急がせるようになった
□大口販売先が倒産した
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カネ
その他
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□何が本業かわからない
□メイン銀行を変えた
□清掃、整理・整頓ができていない
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□新たに不動産に担保が設定された
□不自然な商号変更や本店移転がおこなわれた
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□主要資産を売却
□株や不動産投資に失敗した
□同業者間で噂が出る
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□融通手形の噂がある
□支払延期の要請をした
□税金の滞納
□高利資金導入の噂が出る |
また、直接聞き出そうとせず他の幹部や従業員からヒアリングしてチェックしましょう。
取引先に出向く幹部などと積極的に会話し、チェックリストに該当する事柄がないか評価するとよいでしょう。また、事前にチェックリストを共有しておき、該当する事柄があれば速やかに報告させるようにする選択肢もあります。
専門の会社に依頼する
自分で与信管理をしようとしても「自分の着眼点が正しいか分からない」「どのように評価したら良いか分からない」と悩む経営者もいらっしゃいます。
与信管理は専門知識がなければ適切な評価や判断ができない項目もあります。
そのため、自力での与信管理に不安を感じる場合、与信管理の専用サービスを利用するようにしてください。与信管理の代行会社に依頼すれば、費用は発生してしまいますが、売掛金の未回収による倒産を防げます。
なお、弊社が提供するFMCサービスの中でリスクモンスター社が提供する与信システムを月10件まで利用できます。
調査企業の2年間の推移、スパイラル検索、与信限度額などの確認ができるため、「与信管理は何からすれば良いか分からない」場合はまずご検討ください。
与信管理の方法・基準を解説
与信管理の方法や基準について解説します。
与信管理の基準とは
与信管理をおこなうにあたり、取引金額の上限である「与信枠」を設定する必要があり、与信枠の設定には、「何を基準とするか」明確な規定を定めなければなりません。
与信枠の基準にはさまざまな考え方がありますが、主に「自社の財務基準」と「取引先の財務基準」の2つの基準をもとに設定されます。
「自社の財務基準」の場合、複数の取引先に対し、一定のルールを当てはめることができるメリットがあり、各取引先に応じた柔軟な与信枠設定としては適さないというデメリットがあります。
「取引先の財務基準」の場合、各取引先ごとに個別の与信枠を設定することができるというメリットがあります。
与信承認までの流れ
与信管理では、新規取引先(取引先候補会社)と、与信を設定し取引を進める過程のことを「与信承認プロセス」といいます。
「与信承認プロセス」は、商談開始、情報収集、評価、与信限度決済、契約交渉の順におこなわれます。
商談開始
取引先として妥当であるか、営業部門で調査します。この場合の調査では、原則、実際に取引先を訪問して、直接調査がおこなわれます。また、同時に管理部門へも調査を依頼します。
情報収集
直接調査で集めた情報、信用調査会社など第三者による情報、社内調査による情報などを収集します。
評価(審査)
集めた情報をもとに、取引先として妥当であるかどうか、評価および審査します。
与信限度決済
審査に問題がなければ、与信限度額を決定し、決裁者が取引開始の決裁をおこないます。
契約交渉
決裁のあと、取引先と決裁内容に従い、契約交渉をおこないます。
与信承認後の管理方法
与信承認プロセスが済んだあと(取引開始後)も、取引先の情報について管理する必要があります。取引先の経営状況は常に変化しています。情報集取や管理を怠ると、取引先の経営状態の悪化を見逃してしまうなどのリスクに繋がるため、定期的に管理しましょう。
債権管理
取引先との売掛金の回収ができているか、未収金の状況などを確認します。売掛金の回収が遅れているときは要注意です。また、与信枠の超過がないかどうかも確認しましょう。
取引先の情報確認
取引先の経営状況は常に良好であるとは限りません。定期的に、取引先の情報に関して見直しをおこないます。多方面による情報収集をおこない、リスクに備えましょう。
問題案件の管理
売掛金の回収が遅れていたり、未収金額が大きくなっていたり、危険だと判断される場合は、万が一、取引先が倒産した場合でも、被害を最小限におさえるため、早めの対策を講じましょう。
まとめ
与信管理は経営者の重要な業務のひとつであり、一般取引をしているならば、倒産を防ぐためにも適切な与信管理をおこなわなければなりません。
しかし、自分だけで与信管理をするのは難しく、新型コロナウイルス感染症の影響により世の中の変化が激しいため、専門家の活用を検討することもおすすめです。
もし今まで適切な与信管理をしていない場合、今すぐに与信管理と向き合ってください。
与信管理への考えを改め、会社を倒産の危機から未然に防ぎましょう。