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減価償却とは?経営者が知っておきたい節税メリットと注意点

企業が良好な経営状況を保持するためには、自社の財務状況の把握が欠かせません。

企業の固定資産(費用)についても、適切に会計処理をおこなう必要があり、その際に用いられる方法が「減価償却」です。

減価償却は、企業の会計処理におけるひとつの計上方法で、企業の損益状況を適切に把握するために用いられます。減価償却の目的やメリット、車の減価償却方法などを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.減価償却とは
    1. 1.1.減価償却の目的
  2. 2.減価償却できるものとできないもの
    1. 2.1.減価償却できるもの
    2. 2.2.減価償却できないもの
    3. 2.3.減価償却の計算方法
      1. 2.3.1.▼定額法
      2. 2.3.2.▼定率法
    4. 2.4.耐用年数
  3. 3.償却原価法とは
    1. 3.1.定額法
    2. 3.2.利息法
  4. 4.車の減価償却について
    1. 4.1.定額法か定率法か
    2. 4.2.車両の耐用年数
    3. 4.3.車の取得価格
    4. 4.4.新車か中古車か
    5. 4.5.リース車の場合
  5. 5.減価償却のメリット
    1. 5.1.節税対策
    2. 5.2.資産が残る
    3. 5.3.財務状況を適切に把握できる
  6. 6.減価償却のデメリット
    1. 6.1.会計処理が複雑で手間がかかる
    2. 6.2.法改正により定期的な見直しが必要
  7. 7.定期的な財務改善が重要
  8. 8.F&M clubの財務改善サービス
  9. 9.まとめ

減価償却とは

減価償却とは、時間の経過や使用頻度によって価値が減少する固定資産の購入費用を、使用期間(耐用年数)に応じて分割し、計上する会計方法を指します。

減価償却の目的

減価償却の目的は、期間に対する適正な費用を計上することにより、決算期間ごとの損益計算を正確におこなうことを目的としています。

例えば、10年使用することを想定した機械設備を導入し、購入した年に費用をすべて計上してしまうと、決算上では、2年目以降の、機械設備購入費用(経費)が発生していないこととなり、正確な損益が算出できません。


減価償却できるものとできないもの


固定資産には、減価償却の対象となるものとならないものがあります。

減価償却できるもの

減価償却の対象となるものは、時の経過などによって価値が減少していく資産のうち、使用可能期間が1年以上かつ10万円以上のもので、有形/無形の固定資産、家畜や樹木など生物などが対象となります。

建物、設備、機械、車両、器具備品、ソフトウェア、樹木、家畜など

減価償却できないもの

時の経過などによって価値が減少しない資産は、減価償却の対象となりません。

土地、建築中の建物、(時の経過による価値の変動がない)美術品や骨董品

減価償却の計算方法

減価償却の計算には主に「定額法」と「定率法」の2つの計算方法が用いられます。

▼定額法

定額法は、対象となる固定資産の購入費用(取得価格)を、法定耐用年数で割り、各期間に同額ずつ計上する方法です。定額法の計算では、償却率(計算方法や耐用年数ごとに定められた数値)を使用します。

▼定額法の計算式

取得価格×定額法の償却率

例:耐用年数が10年の設備を500万円で購入し、償却率が0.100の場合は、

500×0.100=50 となり、50万円ずつ計上します。

▼定率法

定率法は、初年度に大きな金額で計上し、その後、残りの金額を、毎年一定の償却率で算出した金額を計上する方法です。

定率法の計算では、定額法と同様に償却率を用います。定率法の場合は、未償却残高に償却率を掛けて算出します。

▼定率法の計算式

未償却残高×定率法の償却率

例:耐用年数が10年の設備を500万円で購入し、償却率が0.100の場合は、

・1年目 500万×0.100=50 50万円

・2年目 (500−50)×0.100=45 45万円

・3年目 (500−50−45)×0.100=40.5 40万5千円

・・・

上記のように計算、計上します。


耐用年数

減価償却における固定資産の耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」により、資産ごとに定められています。

償却率や、法定耐用年数は、国税庁のサイトから確認できます。

【参考】減価償却のあらまし|国税庁

償却原価法とは


償却原価法とは、債券などを取得した場合、額面上の金額と、取得した際の金額が異なる場合、その差額を償還の満期日まで毎年一定の方法で配分し、配分した金額を、加算または減算して計上する方法です。

定額法

定額法は、額面上の金額と、取得した際の金額の差額を償還の満期日までの期間(月)で割り、各期の損益に均等に配分する方法です。

▼定額法の計算式

損益配分額=(額面金額−取得金額)×当期の期間÷取得時から償還時までの期間

利息法

利息法は、債券の利子額と、金利調整差額の合計額が債券の帳簿価格に対し、一定率となるように、複利で各期の損益に配分する方法です。利息法の計算では、「実効利子率」(債券と引きかえに預けたお金が、どのくらいの割合で増えるかをあらわした数値)が必要となります。


▼利息法の計算式

1年目 有価証券利息=取得価格×実効利子率


2年目以降 有価証券利息=(取得金額+取得年から前年までの有価証券利息)×実効利子率

車の減価償却について


減価償却では、特に「車」についての減価償却の方法や考え方について、疑問を抱く人が多いです。車の減価償却について解説します。


定額法か定率法か

車を減価償却する際、定額法か定率法のどちらを用いるかについて、原則として法人は「定率法」、個人事業主は「定額法」を用いることとされています。

しかし、所定の要件を満たし、期限までに税務署へ減価償却方法の変更について届出をすれば、変更することができます。

また、定額法の方が計算は簡単ですが、定率法の方が、初年度に多くの経費を計上できるため、節税に繋がりやすいという特徴があります。


車両の耐用年数

車の耐用年数については、事業者の種類(事業内容)と車の種類によって異なります。

運送業者などの場合、そのほかの事業者よりも、頻繁に車両を使用すると考えられるため、耐用年数が短くなります。


車の取得価格

車の取得価格には、車両本体価格、カーナビなどの付随機器(オプション費用)、納車にかかった費用を含めます。

自動車税や自賠責保険料などは、取得価格に含めなくてもよいとされています。


新車か中古車か

車の耐用年数は、新車か中古車かによっても異なります。

中古車は、新車に比べて耐用年数が短くなるため、経費として計上できる金額も大きくなり、減価償却を早くおこなうことができます。

また、車の法定耐用年数は新車が基準となっているため、中古車の場合は別途計算する必要があります。

▼法定耐用年数を経過した中古車の耐用年数

法定耐用年数×0.2


▼法定耐用年数を数年経過している中古車の耐用年数

法定耐用年数−経過年数+経過年数×0.2

リース車の場合

社用車を購入車ではなく、リース車で対応している企業も多くいます。

リース車の場合は、毎月のリース料が(基本的に)一定金額で計上されているため、実質、減価償却の定額法と同じ計上方法となっています。

つまり、定率法を用いて経費計上が可能となる場合は、購入車の場合のみです。


減価償却のメリット


減価償却のメリットについて解説します。


節税対策

減価償却による経費の計上は、一定期間(耐用年数)の利益をおさえることができ節税に繋がります。

また、中小企業の場合、「少額減価償却資産の特例」により、取得価格が30万円未満の資産を「少額減価償却資産」として、損金参入できます。


資産が残る

減価償却費として経費を計上しても、その分毎年資金が減っているわけではなく、課税されません。そのため、実質的に資産が残ることとなります。

しかし、会計上の処理であるため、減価償却費と同額の資金があることを確約しているわけではありません。


財務状況を適切に把握できる

減価償却により、費用を適切に計上することで、収支のバランス、財務状況を正しく把握することができ、耐用年数を踏まえたうえで、先を見据えた、財務状況の把握、計画がしやすくなります。




減価償却のデメリット


減価償却のデメリットについて解説します。


会計処理が複雑で手間がかかる

減価償却は、償却率や、法定耐用年数の定めなどもあり、計算方法が複雑です。

固定資産ごとに、確認、計算、計上する必要があるため、手間と時間がかかります。


法改正により定期的な見直しが必要

会計処理にかかわる税制法などは、定期的に改正されています。

そのため、適切な会計処理をおこなうためには、減価償却における定めについて、定期的に確認し、必要に応じて見直しする必要があります。


定期的な財務改善が重要


企業が健全な財務状況を保つためには、財務状況を正しく把握し、必要に応じて財務改善措置を講じていくことが重要です。

財務改善は、先を見据えた素早い行動が重要となるため、日頃から、自社の財務状況に関する決算書などのデータを正しく読み取れる力や、財務に関する知識を身につけておきましょう。

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貴社の財務改善にぜひ、お役立てください。

まとめ

減価償却は節税に繋がるメリットがあり、適切な損益状況を把握するために有効な計上方法です。

企業が健全な財務状況を保つためには、財務状況を正しく把握し、必要に応じて、早めに財務改善措置を講じていくことが重要です。



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