アルコールチェックの義務化で企業がおこなうべき対策とは
2024年は、忘年会や新年会を開催する企業が約6割に増えているといわれています。従業員が通勤途中や業務中に飲酒運転事故を起こした場合、企業に甚大な影響が発生することがあるため注意が必要です。
また2022年から、企業においてアルコールチェックが法的に義務づけられ、2023年には、より厳格化されるなど、「飲酒運転を厳格化する姿勢と予防策」が求められています。
本記事では、企業のアルコールチェック義務化の概要と従業員の問題行動を防止する対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.従業員が酒気帯び⁉問題行動で周囲は疲弊
- 2.従業員が飲酒運転⁉企業が責任に問われる?
- 2.1.刑事責任に問われる可能性がある
- 2.2.民事責任で賠償責任を負うことがある
- 2.3.行政責任で営業停止などの処分を受ける場合がある
- 2.4.社会的な責任を問われることがある
- 3.アルコールチェックの義務化とは?対象外は?
- 3.1.安全運転管理者とは
- 3.2.アルコールチェック義務化の対象となる人
- 3.3.アルコールチェック義務化の対象となる車両
- 3.4.アルコールチェック義務化の対象外とは
- 4.アルコールチェックの義務化で企業がおこなうべき5つの措置
- 5.アルコールチェックだけでは対応できない問題従業員(モンスター従業員)対策
- 5.1.他人事とは限らないモンスター従業員の問題行動
- 5.2.自社と従業員を守る基本は就業規則
- 5.3.マイカー通勤規程など関連規程も重要
- 6.労務管理はF&M Clubがトータルでサポート
従業員が酒気帯び⁉問題行動で周囲は疲弊
従業員が二日酔いや酒気帯びで起こす交通事故があとを絶たず、中には衝突された家族全員が死亡するなどの大きな飲酒事故も起きています。
交通事故に至らなくとも、二日酔いで業務が混乱する場合もあり、例えば次のような事例があげられます。
- 二日酔いで営業車を運転できず、別の従業員が急遽交代する
- アルコールが残った状態で仕事がはかどらず、周囲の従業員がフォローする
- 酒の臭いで周囲の従業員が迷惑する
過度の飲酒は周囲の従業員に対し、負担と迷惑をかけることとなります。
従業員が飲酒運転⁉企業が責任に問われる?
業務で使用する車の事故は、運転者である従業員のみの問題ではおさまりません。
もし従業員が飲酒運転事故を起こした場合、企業が刑事責任や民事責任を負う可能性があります。
刑事責任に問われる可能性がある
飲酒運転のおそれがある状態で従業員に運転をさせた(運転を認めた)場合、企業が車両提供者として車両等提供罪に問われる可能性があります。
民事責任で賠償責任を負うことがある
従業員が業務中に飲酒運転事故を起こした場合、企業も被害者に対して賠償責任を負うことがあります。
行政責任で営業停止などの処分を受ける場合がある
企業が運送業である場合、営業停止処分を受けることがあります。処分の軽重は企業における注意・管理体制によって異なります。
行政処分となった場合は、国土交通省のホームページで企業名や処分内容が公表されます。金融機関や採用応募者などが、企業の処分について知った場合、企業への信用が低下してしまうリスクもあるでしょう。
社会的な責任を問われることがある
従業員が飲酒運転事故を起こした企業は、安全管理や従業員管理がずさんであると見られる可能性があり、取引先からの信用を失い、受注が減るなどの影響が出ることもあります。
アルコールチェックの義務化とは?対象外は?
アルコールチェック義務化とは、5台以上の自動車を使用する企業が、運転する従業員の酒気帯び状態を確認し、記録を保存する法的な義務のことです。
このアルコールチェック義務は道路交通法施行規則に定められた企業における法的な義務であり、対応するためには次の3つが必要です。
- 安全運転管理者を選任する
- アルコール検知器を用意する
- アルコールチェックの記録を作成し、保存する
アルコールチェックの義務化の内容は次のとおりであり、2023年12月から実施されています。
アルコールチェック義務化の内容 |
義務化の開始時期 |
・企業の安全運転管理者が、
|
2023年12月1日から義務化 |
【参考】道路交通法施行規則|e-GOV
安全運転管理者とは
上記のアルコールチェック義務化の内容にあるとおり、アルコールチェックをおこなう義務がある人は「安全運転管理者」です。
安全運転管理者は、以下のいずれかの条件に該当する事業所において選任が義務づけられています。
【安全運転管理者の選任が必須となる事業所の要件】
- 乗車定員が11名以上の自家用自動車を1台以上使用
- そのほかの自家用自動車を5台以上使用している
(備考)
- 原付を除くオートバイは1台を0.5台としてカウントする
- 台数が20台以上の場合は副安全運転管理者の選任が必要
【参考】安全運転管理者制度の概要|警察庁
アルコールチェック義務化の対象となる人
アルコールチェック義務化の対象となる人は、アルコールチェックをおこなう安全運転管理者です。
企業は安全運転管理者を選任し、選任や変更を15日以内に届け出る義務を負っています。
安全運転管理者の選任と届け出義務については罰則があり、安全運転管理者の選任を怠った場合は50万円以下の罰金、安全運転管理者を選任した届け出を怠った場合は5万円以下の罰金を科されることがあります。
【参考】安全運転管理者等法定講習|警視庁
アルコールチェック義務化の対象となる車両
アルコールチェック義務化の対象となる自動車は緑ナンバーだけでなく、白ナンバーの営業用車両も含みます。また、車両の所有権を問わないため、リースしている車両も含まれます。
なお、従業員が通勤にのみ使用するマイカーは含まれません。
【参考】安全運転管理者等に関するよくある質問|警視庁
アルコールチェック義務化の対象外とは
アルコールチェック義務化の対象外となる事業所や車両は次のとおりです。
- 白ナンバー(乗車定員が10名以下)が4台までの事業所
- 従業員が通勤のみに使用するマイカー
- 運送業の運行管理者が選任されている事業所
アルコールチェックの義務化で企業がおこなうべき5つの措置
アルコールチェックの義務化で企業がおこなう必要がある措置は次の5つです。
【アルコールチェックの義務化で企業がおこなうべき措置】
- 安全運転管理者を選任し、届け出する
- アルコール検知器を保持する
- アルコールチェックした記録を付ける体制を構築する
- アルコールチェックした記録を保存する体制を構築する
- 飲酒運転をしない、させない意識を従業員へ徹底する
従業員の飲酒運転は企業にとって大きな経営リスクです。従業員が事故を起こした場合、企業の信用失墜や営業停止など、甚大な影響が発生するおそれがあります。
飲酒運転の禁止など重大なルールは就業規則に記載し、社内に浸透させておきましょう。
アルコールチェックだけでは対応できない問題従業員(モンスター従業員)対策
「飲酒運転はダメ」といわれても、守らない従業員がいるかもしれません。ルールを守らない従業員、モラルに欠ける従業員がいると職場の秩序が乱れ、真面目に働く従業員の離職につながることがあります。
他人事とは限らないモンスター従業員の問題行動
モンスター従業員の問題行動例は次のとおりです。
- 周囲の同僚や上司、取引先に暴言を吐く
- 業務命令を無視する
- SNSで自社を誹謗中傷する
- 周囲にいじめやハラスメント行為をおこなう
- 理論を無視した過度な要求をおこなう
- 遅刻や無断欠勤を繰り返す
- 改善指導に従わず、改善する意欲がない
自社と従業員を守る基本は就業規則
問題行動を起こす従業員に対する基本的な対策は次の4つです。
中でも重要な対策は「明確な懲戒処分を定めておくこと」です。就業規則などで懲戒処分の事由や程度を明確としておくことで、問題行動を抑止すると同時に、真面目な従業員を守る企業の姿勢を明らかとすることができます。
【問題行為を起こす従業員への企業の基本対策】
- 問題行動に対して直ちに指導する
- 定期的な面談など、コミュニケーションの機会を作る
- 従業員の適性診断などで、従業員の性格を把握しておく
- 懲戒処分の事由・処分内容を明確化しておく
マイカー通勤規程など関連規程も重要
業務中の飲酒運転を禁止しても、従業員が帰宅途中で飲酒する可能性があります。通勤途中における飲酒リスクを回避するためには、就業規則における明記や、「マイカー通勤規程」として定めておくことがおすすめです。
「マイカー通勤規程」を作ることは失念しがちですが、通勤途中の事故における企業の責任の範囲を明確化する効果があります。
賃上げに伴う就業規則の改正時などにあわせて、関連規程の作成に漏れがないか、専門家に相談してみることも効果的です。
労務管理はF&M Clubがトータルでサポート
アルコールチェックが企業に義務化されていても、業務中の飲酒事故は発生しています。他社のこととは思わず、「自社で起こったとき」のことを考えた対策が必要です。
また飲酒だけでなく、従業員のモラルに欠ける行動やハラスメント行為を防止するためには、就業規則の見直しや関連規程を整えておくことが必要です。
「問題従業員による労務トラブルの防止策を講じたい」「自社の就業規則に問題があるかわからない」など、労務管理に関する課題解決は、F&M Clubへご相談ください。
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