
高市首相誕生で地政学リスクが顕在化する⁉中小企業における備えとは
2025年10月21日、憲政史上初めての女性首相となる高市早苗氏が内閣総理大臣に就任しました。
高市首相は「責任ある積極財政」を掲げており、就任後初めて開いた記者会見においても「経済最優先で取り組む」と表明しています。
現在の世界経済は、米中貿易摩擦の再燃などにより不透明さが増しています。外交面で保守的な姿勢といわれる高市首相の誕生に伴い、日本企業においても何らかの影響を受ける可能性があります。
本記事では、高市首相の経済対策方針と中小企業における地政学リスク対策について解説します。
高市首相が掲げる「責任ある積極財政」と「経済安全保障の強化」とは

高市首相は積極財政路線であるといわれており、「責任ある積極財政」と「経済安全保障の強化」を重視しています。高市首相が発表している主な政策は、以下のとおりです。
【高市首相の政策】
- 食料安全保障の確立
- エネルギー・資源安全保障の強化
- 現在と未来の生命を守る令和の国土強靭化対策
- サイバーセキュリティ対策の強化
- 健康医療安全保障の構築
- 成長投資と人材力の強化
『責任ある積極財政』とは
高市首相は、官民が連携して投資を拡大する「責任ある積極財政」を掲げています。主な内容は以下のとおりです。
- 勝ち筋となる産業分野における国際競争力と人材育成に資する戦略的支援
- スタートアップ減税の恒久化
- 地方のDX化支援
- 地場産業の付加価値向上と販路開拓
- 地域公共交通の維持
『経済安全保障の強化』とは
経済安全保障とは、国の経済と安全保障を一体的に捉える考え方のことです。高市首相はより細かな内容として以下の政策を主に掲げています。
- 海外からの投資について審査を厳格化
- 成長分野(AI、半導体、ペロブスカイト・全固体電池、デジタル、量子、核融合、マテリアル、合成生物学・バイオ、航空・宇宙、造船、創薬・先端医療、送配電網、港湾ロジなど)への積極投資と投資促進税制の適用
米中経済摩擦と高市首相の方向性

2025年10月10日、アメリカのトランプ大統領は、中国からの輸入品に対する100%関税と重要ソフトウェアの輸出制限を検討すると発言し、11月1日以降の発動に言及しました。
その後、米中首脳会談で関税措置の修正・停止を含む枠組みが合意され、強硬措置は直ちに実施されない方向へと進みました。
米中の緊張が完全に収束したわけではなく、状況は流動的です。この不安定な国際環境のもとで、高市首相には、日本経済と企業活動への影響を最小限に抑える慎重な外交判断が求められます。
もし日本がアメリカ寄りの姿勢を強めれば、中国との関係が悪化し、特定製品の輸入規制、技術・サプライチェーン面での調整圧力、日系企業への間接的な影響などが生じる懸念もあります。
中小企業の経営者においても、高市首相の外交方針や米中関係の動向が自社の取引・仕入れ・コストにどう影響し得るのか、継続的に注視し、リスクを見据えた準備を進めることが重要となります。
【参考】
地政学リスクにおける中小企業の備えとは

地政学リスクとは、国際間の緊張の高まりによる社会的・経済的・軍事的な影響のことです。地政学リスクが顕在化する主な例が輸出入制限や紛争の発生などであり、企業はコスト上昇やサプライチェーンの混乱など直接的な影響を受けます。
日本の中小企業が実行できる地政学リスクにおける備えとして、以下の内容があげられます。
取引契約書の確認
中小企業が地政学リスクに備えるためには、外企業との取引契約書を見直し、万一のリスクに備えることが重要です。
契約内容として、相手国における貿易規制の変更や紛争などにより、取引の遅延や履行不能が発生した場合における責任の所在、免責条項の内容などを確認します。
あわせて、最新の法律に準拠した契約書ひな形を活用することで、抜け漏れや古い条項の混在を防げます。F&M Clubでは、最新の法改正に対応した各種契約書のひな形をご用意しており、自社の実情に合わせたカスタマイズの起点としてご活用いただけます。
また取引が困難となった場合の損失に備えて、貿易保険の活用などを検討しておくことがおすすめです。
サプライチェーンの分散
地政学リスクの影響を最小化するためには、サプライチェーンを一国依存にせず、複数国・地域へ分散させることが効果的です。
一国からの輸入や輸出が事業の多くを占める場合、有事の際に企業の存続を左右する可能性があります。
中小企業庁が発表した「2024年版中小企業白書」によると、地政学リスクにおける対応策として「仕入先・調達先の分散」をあげている企業が21.6%となっています。
【参考】2024年版中小企業白書|中小企業庁 第1-3-45図
財務の改善と収益力の向上
コスト上昇など外部環境の変化に強い体制を築くには、財務の健全化と収益力の底上げが欠かせません。
財務改善の主な内容としては、現預金や有価証券など換価が容易な資産の比率を高めることで流動性を確保し、資金調達枠を拡大してリスク管理を強化することが挙げられます。
収益力の向上としては、固定費の見直し、付加価値が高い製品の売上増加などがあげられます。
常に情報収集
有事の際にも迅速に判断できるよう、地政学リスクに関する最新情報を常にキャッチできる体制を整えておくことが重要です。
政府や経済産業省、ジェトロ(日本貿易振興機構)などの公的機関が発信する情報を定期的に確認し、情勢変化を早期に把握しましょう。
また、取引先や業界団体とのネットワークを通じて、現地の動向やサプライチェーンの影響をリアルタイムで把握することも有効です。
地政学リスクと中小企業の備えのよくある質問(FAQ)
地政学リスクにおける中小企業の備えについて、よくある質問とその回答は以下のとおりです。
Q1:地政学リスクとは何ですか?
A.地政学リスクとは、政治・軍事・社会・経済的な緊張が高まることで、関係する国や地域に影響をおよぼすことです。例として、A国・B国間における紛争の発生により、A国から輸入できなくなるなどです。
Q2:中小企業ができる情報収集は何がありますか?
A. 地政学リスクの把握には、一次情報と専門情報の両輪が有効です。政府・公的機関の発表(例:ジェトロの特集ページや通商関連ニュース)を定期的に確認し、業界団体・専門メディアの解説で実務影響を補完しましょう。あわせて、各国・地域の変動を可視化する地政学リスク(GPR)指数も参考になります。

【引用】通商白書2025|経済産業省 第Ⅰ-2-3-1図
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Q3:中国以外の国として投資が有望な国はどこですか?
A.経済産業省が発表した「通商白書2025」によると、今後3年間における生産拠点の新設や生産能力の増強投資を計画している国として、インド(67%)、アメリカ(42%)、アセアン諸国(27%)があげられています。

【引用】通商白書2025|経済産業省 第Ⅱ-3-4-6図
中小企業経営者の悩みごと解決はF&M Clubを活用
中小企業における主な地政学リスク対策として、情報感度を高めておくこと、自社の財務を改善しておくことなどがあげられます。
財務の改善は地政学リスクにおける対策としてだけでなく、自社の経営改善のための取り組みとして検討してみましょう。
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まとめ
2025年10月21日に高市首相が就任し、「給付付き減税」「スタートアップ減税の恒久化」「成長分野における投資促進税制」など今後の具体的な政策が待たれます。
高市首相は「責任ある積極財政」と「経済安全保障」を掲げていますが、国際経済は不確実性が高まっている状況にあり、日本の中小企業においても財務改善などの備えが求められます。












