フリーキャッシュフローとは?分析方法や計算方法、基本的な見方のポイントを解説
フリーキャッシュフローは、キャッシュフロー計算書を通じて企業を分析する時の重要な指標です。
フリーキャッシュフローは企業を経営する自由度を表しています。
計算し分析することが、企業の将来を見るための手掛かりです。
本記事では、フリーキャッシュフローの計算方法とわかりやすい見方を解説します。
目次[非表示]
フリーキャッシュフローとは
フリーキャッシュフローとはキャッシュフロー計算書の途中で記載される項目です。
企業が本業で稼いだお金のうち、自由に使えるお金を表します。
フリーキャッシュフローの計算方法
まず、キャッシュフロー計算書の構造が次のとおりです。
数値例 1.営業活動によるキャッシュフロー 当期純利益 150 (略) … 1の合計 200 2.投資活動によるキャッシュフロー 土地の購入 -100 (略) … 2の合計 -150 フリーキャッシュフロー(1+2) 50 3.財務活動によるキャッシュフロー 長期借入金の減少 -80 (略) … 3の合計 -120 4.キャッシュの増減 -70 5.キャッシュの期首残高 1,000 6.キャッシュの期末残高 930 検算(貸借対照表の現金および預金) 930 |
「営業活動によるキャッシュフロー」は、本業でのお金の増減です。
「投資活動によるキャッシュフロー」とは、本業を支える投資に回したお金の支出や、資産を売却した収入などの出入りです。
フリーキャッシュフローは、営業活動によるキャッシュフローと投資活動によるキャッシュフローを合計します。
本業で稼いだお金で、必要な投資をした後の残額であり、経営上、すぐに必要ではないお金といえます。
フリーだから使い道は自由?
フリーキャッシュフローとは、本業で稼いで、本業を維持する投資後の残額ですが、すべてを自由に使えるわけではありません。
多くの企業では一層の投資が必要なうえ、借入金の返済もあり、株主への配当金の支払いが必要な会社もあるためです。
フリーキャッシュフローの使途
フリーキャッシュフローの使い道は、大きく分けて2つです。
財務改善
フリーキャッシュフローの次の項目である「財務活動によるキャッシュフロー」へつながる使い道です。
本業で稼いだ残りのお金であるため、借入金の返済に回せます。
将来への投資
フリーキャッシュフローを用いて、更なる成長のための投資は必要です。
成長スピードが早い企業は次々と投資をします。
成熟企業であれば、投資有価証券の購入に使うこともあります。
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フリーキャッシュフローの分析方法
フリーキャッシュフローの分析は、そのほかのキャッシュフローの項目がプラスかマイナスか、赤字や黒字の金額の大小などを総合的に比較します。
フリーキャッシュフローを分析するときは、フリーキャッシュフローがプラスであるかだけではありません。
- 営業活動によるキャッシュフローがプラスか
- 投資活動によるキャッシュフローがマイナスか
- フリーキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローとの比較
に注意します。
ほかのキャッシュフローの指標と組み合わせて見るときのパターンは次のとおりです。
フリーCF |
営業CF |
投資CF |
財務CF |
考え方の例 |
+ |
+ |
+ |
+ |
利益出ているが負債も増加 |
+ |
+ |
+ |
― |
儲けと投資回収で財務改善 |
+ |
― |
+ |
+ |
資産売却と負債で赤字を補填 |
+ |
― |
+ |
― |
リストラで経営改善 |
+ |
+ |
― |
+ |
利益と借入で投資 |
+ |
+ |
― |
― |
儲けで投資しつつ財務も改善 |
― |
― |
+ |
+ |
資産売却と借入で資金を維持 |
― |
― |
+ |
― |
資産売却で赤字補填と借入返済 |
― |
+ |
― |
+ |
利益以上に投資して借入で調達 |
― |
+ |
― |
― |
利益で投資して負債も削減 |
― |
― |
― |
+ |
負債で維持、事業転換中 |
― |
― |
― |
― |
資金減少 |
・「営業CF」営業活動によるキャッシュフロー
・「投資CF」投資活動によるキャッシュフロー
・「フリーCF」フリーキャッシュフロー
・「財務CF」財務活動によるキャッシュフロー
・「+」キャッシュフローがプラス
・「―」キャッシュフローがマイナス
フリーキャッシュフローがプラスの場合
営業活動によるキャッシュフローがプラスであるかマイナスであるかによって異なります。
(営業キャッシュフローがプラスの場合)
キャッシュフロー |
営業CF |
投資CF |
フリーCF |
数値例 |
100 |
-70 |
30 |
本業のキャッシュフローで投資を賄い、余裕があります。
(営業キャッシュフローがマイナスの場合)
キャッシュフロー |
営業CF |
投資CF |
フリーCF |
数値例 |
-70 |
100 |
30 |
資産の売却による収入で、本業の資金不足をカバーしています。
本業のキャッシュフローを改善する必要があります。
フリーキャッシュフローがマイナスの場合
フリーキャッシュフローがマイナスの場合の評価は、理由によって大きく異なります。
(投資キャッシュフローがプラスの場合)
キャッシュフロー |
営業CF |
投資CF |
フリーCF |
数値例 |
-250 |
100 |
-150 |
資産売却の収入でも本業の資金不足をカバーできていません。
財務活動によるキャッシュフローをプラスにする(借入を増やす)か、現預金で返済していく必要があります。
(投資キャッシュフローがマイナスの場合)
キャッシュフロー |
営業CF |
投資CF |
フリーCF |
数値例 |
100 |
-250 |
-150 |
本業の利益以上に投資しています。
投資が成功すれば、今後の収益の改善に繋がります。
(営業キャッシュフロー、投資キャッシュフローともにマイナスの場合)
キャッシュフロー |
営業CF |
投資CF |
フリーCF |
数値例 |
-100 |
-50 |
-150 |
本業が資金不足の状態で投資をおこなっています。
財務活動によるキャッシュフローをプラスにする(借入を増やす)か、現預金で資金不足を維持する必要があります。
フリーキャッシュフローの評価は長期の視点で
フリーキャッシュフローが赤字となる理由は複数あります。
- 一時的な理由で営業活動によるキャッシュフローがマイナスとなった
- 多額の投資でフリーキャッシュフローがマイナスとなった
などです。
フリーキャッシュフローの元となる営業活動や投資活動は、一時的な理由に惑わされず、次のように中長期の視点で見ることが大切です。
- 過去2~3期分のキャッシュフロー計算書を並べて比較する
- 投資キャッシュフローの投資内容を確認する
フリーキャッシュフローがマイナスのときの改善策
フリーキャッシュフローがマイナスであるとは、経営で自由に使えるお金や借入の返済に回すお金がない状態となっているため、改善が必要です。
営業活動によるキャッシュフローが原因のとき
営業活動によるキャッシュフローがマイナスのときは、マイナスの要因を特定します。
営業活動によるキャッシュフローは、利益、売上の回収、仕入の支払です。
利益が赤字の場合は、黒字化することを優先します。
売上や仕入の条件を見直すことも検討します。
投資活動によるキャッシュフローが原因のとき
投資額が過度になっていないかを確認します。
必要な投資額である場合は、営業活動によるキャッシュフローの改善が必要です。
フリーキャッシュフローは財務活動によるキャッシュフローと比較
フリーキャッシュフローは、財務活動によるキャッシュフローのマイナス(借入金の返済)の原資となります。
貴社のフリーキャッシュフローがプラスであれば、まずは財務活動によるキャッシュフローの改善をおこないます。
数値例 (Ⅰ) 営業活動によるキャッシュフロー 100 (Ⅱ) 投資活動によるキャッシュフロー -10 (Ⅰ+Ⅱ) フリーキャッシュフロー 90 (Ⅲ) 財務活動によるキャッシュフロー -150 (Ⅳ) (Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ) キャッシュの増減 -60 (Ⅴ) 期首の現金預金の残高 400 (Ⅵ) (Ⅳ+Ⅴ) 期末の現金預金の残高 340 |
中小企業では、フリーキャシュフローがプラスですが、フリーキャッシュフロー以上に借入金の返済が必要な会社も多いです。
キャッシュフロー経営による財務改善はエフアンドエムがサポートします
自社のフリーキャッシュフローがマイナスの場合は、本業の資金繰りの改善が必要です。
フリーキャッシュフローがプラスであっても、財務活動によるキャッシュフローが大きすぎる場合は、借入金の返済条件の見直しなどが有効です。
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まとめ
フリーキャッシュフローは、本業の経営状態、将来に向けた会社の姿勢などを表しています。
フリーキャッシュフローがマイナスとなっている場合は、本業の資金繰りの改善が必要な兆候かもしれません。
また、財務キャッシュフローのマイナスが大きい時は借入金の借換えなどを検討しましょう。
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