売掛金未回収を解消する方法は?未然に防ぐポイントや注意点も解説
売掛金による取引をおこなっているけれども、回収できず困っている方も多いのではないでしょうか?売掛金が未回収になると資金繰り悪化など経営に悪影響を及ぼす可能性があるため、迅速に回収作業をおこなう必要があります。
今回は売掛金未回収を回収する方法について、未然に防ぐポイントや注意点を解説します。売掛金の未回収状態を解決し、経営を安定化させたい方はぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.そもそも売掛金とは?
- 2.売掛金が未回収になる要因
- 2.1.請求ミスがある
- 2.2.取引先が支払いを忘れている
- 2.3.取引先の資金繰り悪化
- 2.4.取引先が商品・サービスに対して不満がある
- 3.売掛金が未回収になるリスク
- 3.1.自社の資金繰りが悪化する
- 3.2.金融機関からの評価が悪くなる
- 3.3.回収業務増加による生産性の低下
- 4.売掛金回収で取引先にまず確認すべきこと
- 5.売掛金回収が遅れ始めた時にやるべきこと
- 5.1.商品・サービスの提供を止める
- 5.2.相殺できる債権を確認する
- 5.3.売掛金にかかわる契約内容を確認する
- 6.一般的な売掛金回収の流れ
- 6.1.取引先へ支払い状況の確認
- 6.2.支払いを催促する
- 6.3.決算書の要求・債務確認書の作成
- 6.4.書面による催告
- 6.5.売掛金の支払いに関する交渉
- 6.6.商品の引き上げ
- 7.未回収の売掛金を解消する方法
- 8.売掛金の未回収を未然に防ぐポイント
- 8.1.事前の与信管理を徹底する
- 8.2.担保を設定する
- 8.3.弁護士に相談できる体制を整えておく
- 8.4.売掛金は時効に注意が必要
- 9.まとめ
そもそも売掛金とは?
売掛金とは商品・サービスを提供した後で、まだ支払いを受けていない金額を指します。売掛金による取引はビジネスにおいて一般的で、売り手・買い手の信頼関係を前提として行われる点が特徴です。
売掛金は企業の財務状況を理解する上で重要な要素であり、企業の流動性・信用力・収益性を示す指標となります。売掛金が増加すると企業の収入は増えますが、同時に回収リスクも増えます。
したがって、適切な売掛金管理は企業の財務健全性を維持するために不可欠です。売掛金は単なる数字以上の意味を持ち、企業の経営状況を深く理解するための鍵となります。
売掛金が未回収になる要因
売掛金が未回収になる要因として、主に以下の4つが挙げられます。
- 請求ミスがある
- 取引先が支払いを忘れている
- 取引先の資金繰り悪化
- 取引先が商品・サービスに対して不満がある
請求ミスがある
請求書のミスは、請求プロセスの不備・人為的なミスから生じるケースが多いです。例えば、請求書の支払い日付が実際の期日よりも遅く記載されていた場合、取引先からの入金が遅れてしまいます。また、郵送時のトラブルなどで請求書が取引先に届かない場合も、同様の問題が発生します。
取引先が支払いを忘れている
取引先内でのコミュニケーション不足や単純な事務処理上のミスが原因で忘れている場合は、催促すれば問題なく支払ってもらえます。ただし、複数回期日に間に合わない場合は、資金繰りの悪化など他の原因も考えられるため注意が必要です。
取引先の資金繰り悪化
取引先の資金繰りが悪化している場合、売掛金を支払うための原資がなく、支払いの遅延が発生してしまいます。
経営状態の悪化が疑われる場合、未回収の期間が長期に渡る可能性があるため、信用情報のチェック・取引条件の再交渉など適切な対処が必要です。
取引先が商品・サービスに対して不満がある
商品の品質・サービスの提供方法に問題があると感じた取引先が、解約・返品を検討して売掛金をなかなか支払ってくれず、売掛金の回収が遅れるケースがあります。
自社に原因がある場合、取引先からのフィードバックを真摯に受け止めた上で問題を解決しましょう。信頼関係を維持できれば、売掛金をスムーズに回収できる可能性があります。
売掛金が未回収になるリスク
売掛金が未回収になれば、以下のリスクが生じます。
- 自社の資金繰りが悪化する
- 金融機関からの評価が悪くなる
- 回収業務増加による生産性の低下
自社の資金繰りが悪化する
売掛金が未回収になると、自社の資金繰りが悪化するリスクがあります。
自社の資金が枯渇すると、給与・税金・取引先への支払いが滞り、最悪の場合は倒産してしまいます。
1つの会社が経営破綻したことをきっかけに次々と取引先が倒産する連鎖倒産は、売掛金の未回収が原因であるケースも多いです。自社の経営を安定させるためにも、適切な売掛金管理が必要です。
金融機関からの評価が悪くなる
金融機関は、融資の対象となる企業の信用力を評価する際、売掛金の状況を重要な指標として考慮するため、金融機関からの評価が悪くなるリスクもあります。
売掛金が多い上に回収が遅れていると、資金管理能力が低いと判断され融資審査でマイナス評価を受ける可能性があります。マイナス評価を受ければ、高い金利を設定されるなど不利な条件で貸付が行われてしまいます。
回収業務増加による生産性の低下
基本的に売掛金の回収は、収益拡大に繋がりにくい業務です。売掛金の回収業務が増えれば売上拡大などの重要な業務に集中できなくなり、企業全体の生産性が低下する可能性があります。
また、未回収の売掛金を回収するためには追加の人員・時間が必要となります。コストも多大となるため、経営資源を圧迫する可能性がある点もデメリットです。
売掛金回収で取引先にまず確認すべきこと
売掛金の回収にあたり、取引先にまず確認すべきことはいくつかあります。具体的には以下の項目を確認しましょう。
- 請求書の内容が正確か
- 請求書が取引先に届いているか
- 支払いが遅れる理由
まず、請求書の内容が正確であることを確認します。請求金額・支払い期限などの項目に問題がないか、重点的に確認しましょう。
次に、取引先が請求書を受け取っているか確認します。請求書が取引先に届いていない場合、請求金額が分からず支払えないためです。
請求書のミス以外で入金が遅れた場合は、理由も把握しておきましょう。理由によって適切な対処法が異なるためです。もし資金繰りの悪化が疑われる場合は売掛金が回収不能となるリスクが高くなるため、取引の見直しを行う必要があります。
売掛金回収が遅れ始めた時にやるべきこと
売掛金の回収が遅れ始めた時にやるべきこととして、以下の3つが挙げられます。
- 商品・サービスの提供を止める
- 相殺できる債権を確認する
- 売掛金にかかわる契約内容を確認する
商品・サービスの提供を止める
売掛金の回収が遅れ始めた場合、商品・サービスの提供を一時的に停止しましょう。売掛金が未回収であるにもかかわらず商品・サービスを提供し続けていれば、回収できなくなる金額が大きくなり損失が拡大するためです。
ただし、説明もなくいきなり商品・サービスの提供を止めてしまうと状況が悪化してより回収不能となるリスクが高まります。取引先へ丁寧に事情を説明して、売掛金の入金があるまでは商品・サービスの提供を止める旨を伝えましょう。
相殺できる債権を確認する
次に、相殺できる債権があるか確認します。売掛金が入金されない場合、取引先に対して支払い義務のある買掛金があれば、両者を相殺して対処できます。両者を相殺できれば、現金を動かすことなく簡単に売掛金の回収が可能です。
ただし、取引先が法的整理を進めている場合は相殺できる期間が法律で限られているため注意が必要です。仮に取引先が倒産手続きを進めてしまった場合、手続きが遅れると相殺できなくなる可能性があります。債権の相殺で売掛金を回収する場合は、早期に対処しましょう。
売掛金にかかわる契約内容を確認する
最後に、売掛金にかかわる契約内容を再確認します。契約には支払い条件・遅延した際の罰則など、売掛金の回収にかかわる重要な項目が含まれているためです。訴訟など法的な対応を行う場合は、契約書に書かれた内容が重要証拠として扱われます。
両者の話し合いなどで問題が解決しない場合、契約内容に基づき法的な措置を取りましょう。
一般的な売掛金回収の流れ
一般的な売掛金回収の流れとして、以下6つのステップが挙げられます。
- 取引先へ支払い状況の確認
- 支払いを催促する
- 決算書の要求・債務確認書の作成
- 書面による催告
- 売掛金の支払いに関する交渉
- 商品の引き上げ
取引先へ支払い状況の確認
電話・メールなどで、取引先の担当者が先方に支払いがなかった旨を伝えて状況を確認しましょう。
請求処理などの単純なミスだけであれば、取引先に対応して支払ってもらいましょう。もし、商品・サービスへの不満などで支払いを拒否する場合は交渉が必要です。
支払いを催促する
もし自社に原因がない場合で支払ってもらえないケースでは、取引先に対して支払いの期限を明確に伝え、支払いを促しましょう。この段階では書面による催促は行わず、電話・メールなどの連絡手段で支払いを促します。
決算書の要求・債務確認書の作成
支払いがなおも遅れる場合、取引先に対して決算書の要求・債務確認書作成を行います。決算書を見れば取引先の財務状況を把握し、未払いの原因を特定できるためです。また、取引先の資産を把握できれば、差し押さえできる金額も計算できます。
回収作業を円滑に進めるためにも、債務確認書の作成がおすすめです。債務確認書は未払い金額があることを認める書類で、法的な回収手続きをとる際の証拠となります。
具体的には、以下のような文章を債務確認書に記載して取引先の署名・捺印をもらいましょう。
「当社は◯年◯月◯日現在、◯年◯月◯日に購入した◯◯の代金として◯◯円の支払い義務があることを証明します。」
書面による催告
上記対応を行っても期日までに入金がない場合、書面による催告を行いましょう。具体的には、催告書を作成した上で郵便局の内容証明郵便で送付します。
内容証明郵便で送付すれば郵便物の内容・発送日を郵便局が証明してくれるため、法的な証拠として活用できます。催告書には未払い代金の内訳・金額・支払い期日などを明記しましょう。期日までに支払いがない場合は、法的手続きに踏み切る旨も記載します。
売掛金の支払いに関する交渉
支払いがなおも遅れる場合、取引先との間で売掛金の支払いに関する交渉の場を設けます。支払い計画の設定・分割などの支払い方法について確認しましょう。
双方が交渉内容に合意した場合は合意書を作成して署名・捺印を行います。当事者同士だけでも問題ありませんが、交渉が難航する場合は弁護士に立ち会ってもらうこともおすすめです。
商品の引き上げ
もし取引先に商品がある場合は、引き上げも検討しましょう。ただし、商品の引き上げは買い手側の許可がないと進められません。
買い手側が承諾していないにもかかわらず勝手に商品を引き上げた場合、窃盗罪などの犯罪となる可能性もあります。商品の引き上げは、事前に買い手側に話をしてから進めましょう。
未回収の売掛金を解消する方法
未回収の売掛金を解消する方法として、以下の7つが挙げられます。
- 公正証書の作成
- 即決和解
- 民事調停
- 支払い催促
- 財産の仮差し押さえ
- 訴訟
- 強制執行
公正証書の作成
公正証書とは、公証人が作成して内容の真実性を証明する文書です。売掛金の回収においては、公正証書を作成すれば債務者が債務を認めて支払いを約束することを明確に記録できます。
後の法的な手続きをスムーズに進められる点がメリットです。公正証書に「強制執行を承諾する」旨を記載すれば、裁判を起こさずに取引先の財産差し押さえができます。公正証書は全国の公証役場で作成可能です。
即決和解
即決和解は裁判所で行われる手続きで、債権者と債務者が直接交渉し和解した内容を調書として記録する方法です。
公正証書と同じく和解案には強制執行力が生じます。和解後に取引先が支払いに応じない場合は、法的な手続きを経ることなく財産の差し押さえが可能です。
民事調停
民事調停では、簡易裁判所の調停委員会が中立的な立場から双方の間で話し合いの場を設け、合意による解決を図ります。
裁判のように勝訴・敗訴を決めず、話し合い内容に合意によって解決する手続きです。当事者同士ではまとまらない話でも、調停委員が間に入ることで公正に解決策を導ける可能性があります。
支払い催促
裁判所から支払い催促を行う方法もあります。裁判所で支払い催促の申し立てを行って認められれば判決と同じ効力が発生します。
訴訟の場合は判決が出るまでに長期間かかりますが、支払い催促であれば1ヶ月程度で結果が出ることも珍しくありません。弁護士費用がかかってしまうものの、買い手側から異議がなければ裁判所へ出頭する必要もなく、スムーズに支払い催促を行えます。
財産の仮差し押さえ
財産の仮差し押さえは、債務者の財産を一時的に差し押さえて保全し、後の強制執行対象とする方法です。
強制執行を行えば売掛金を回収できるものの、判決が出る前に財産を処分されてしまうと回収できなくなります。悪質な取引先の場合は差し押さえられないよう財産を処分してしまうケースもあるため、訴訟の前に仮差し押さえを行います。
訴訟
仮差し押さえを行った後は、訴訟を起こします。訴訟は、裁判を行って債務者に対する支払い命令を求める方法です。訴訟で支払いを求める判決が出れば、法的な強制力をもって売掛金の回収を行えます。
強制執行
訴訟の判決が出ても支払いに応じない場合は、強制執行がおこなわれます。強制執行は、裁判所の判決や命令に基づいて債務者の財産から売掛金を回収する方法です。
強制執行によって債務者が自発的に支払いを行わない場合でも、差し押さえた財産から売掛金を回収できます。例えば、買い手側の金融機関口座を差し押さえていた場合、口座残高から売掛金分を回収可能です。強制執行には各種書類の準備が必要となるため、弁護士に相談しましょう。
売掛金の未回収を未然に防ぐポイント
売掛金の未回収を未然に防ぐポイントとして、以下の3つが挙げられます。
- 事前の与信管理を徹底する
- 担保を設定する
- 弁護士に相談できる体制を整えておく
事前の与信管理を徹底する
与信管理とは取引先の信用状況を評価し、結果に基づいて取引条件を設定する作業です。
与信管理が徹底されていれば、取引先が支払い能力を持っているか事前に確認した上で取引できるため回収不能のリスクを下げられます。特に新規取引先の場合は情報が少なく、より入念な信用情報の調査が必要です。
担保を設定する
担保とは債務者が債務を履行しない場合に、債権者が代わりに入手できる財産を指します。
担保を設定すれば債務者が支払いを怠った場合でも、担保から売掛金を回収できます。他にも、社長個人に連帯保証人になってもらうことも有効です。会社として支払いがなかった場合でも、連帯保証人である社長から売掛金を回収できます。
弁護士に相談できる体制を整えておく
弁護士・法律事務所にすぐ連絡できる体制を確立しておけば、特に訴訟などの法的手続きを検討する場合に、迅速かつ適切な法的アドバイスを得られて回収手続きをスムーズに行えます。資金的に余裕があれば、弁護士と顧問契約を結んでおくこともおすすめです。
売掛金は時効に注意が必要
売掛金には時効があり、一定の期間をすぎてしまうと債権が消滅して回収できなくなってしまいます。具体的には民法166条によって、以下の消滅時効が定められています。
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しない時。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しない時。
2 債権または所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しない時は、時効によって消滅する。
3 前二項の規定は、始期付権利または停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
出典:民法 | e-Gov法令検索
基本的に債権者が権利を行使できると知ってから5年間経つと、消滅時効が成立してしまいます。売掛金の未回収がある場合は、早急に回収手続きを行いましょう。
まとめ
売掛金管理はビジネスの成功に不可欠です。未回収の売掛金は資金繰り悪化などのリスクを生じ、企業の財務状況に悪影響を及ぼします。
事前の与信管理の徹底はもちろん、取引先とコミュニケーションを維持して問題が発生した際には迅速かつ適切に対応することが求められます。売掛金の適切な管理・回収をおこない、安定した企業経営を目指しましょう。
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