不渡りを起こすとどうなる?会社への影響や倒産を防ぐ方法を教えます
不渡りを実際に起こすとどうなるか気になり、不安な企業も多いのではないでしょうか?不渡りを起こすと企業の信用が低下するだけでなく、最悪の場合は倒産に追い込まれてしまいます。不渡りを未然に防ぐためにも、入念な資金管理が重要です。
今回は不渡りを起こすとどうなるかについて、会社への影響や倒産を防ぐ方法も解説します。不渡りを未然に防ぎ、安定的な企業経営を目指したい方はぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.不渡りとは
- 1.1.債務不履行とはどう違う?
- 2.不渡りで扱われる手形・小切手の違い
- 2.1.手形とは
- 2.2.小切手とは
- 2.3.手形・小切手の違いは「現金化できるタイミング」
- 2.4.約束手形の振り出し方法
- 2.5.手形割引にて現金化することもできる
- 3.不渡りには3つの種類がある
- 4.不渡りを出してもいきなり倒産するわけではない
- 5.不渡りが出てしまう原因
- 5.1.口座の残高不足
- 5.2.売掛金の未回収による資金枯渇
- 6.不渡りが会社に与える影響
- 6.1.1回目の不渡りが会社に及ぼす影響
- 6.2.2回目の不渡りが会社に及ぼす影響
- 7.不渡りで倒産しても再起は可能
- 8.不渡りを防ぐ方法
- 8.1.決済期日を統一する
- 8.2.手形決済用口座と貯蓄用口座を別の金融機関にする
- 8.3.手形取引を控える
- 9.不渡りを出して存続が難しい法人・経営者はどうなる?
- 10.まとめ
不渡りとは
不渡りとは、金融機関が振り出した小切手・手形が何らかの理由で支払われない状態を指します。具体的には、振出人が発行した小切手・手形を受け取った人が金融機関に持ち込んで換金しようとした時を仮定しましょう。
振出人の口座に十分な資金がないなど、換金する担保がないために金融機関から支払いを拒否されることが不渡りです。不渡りは振出人の資金力不足を意味しており、経営にさまざまな悪影響を及ぼします。
債務不履行とはどう違う?
債務不履行とは、契約に基づく債務を履行しない状態を指します。債務不履行では金銭の支払いだけでなく、商品の納品・サービスの提供など契約に基づくあらゆる義務の不履行を含まれることが特徴です。債務不履行は契約違反となり、違約金・損害賠償の請求を受ける可能性があります。
不渡りと債務不履行は契約の履行がなされない点で共通していますが、履行されない対象に違いがあります。不渡りは先述の通り、小切手・手形の支払いがなされない状況です。不渡りも債務不履行の1種ですが、小切手・手形に限定して支払いがなされない状況を指すことが一般的です。
不渡りで扱われる手形・小切手の違い
不渡りで扱われる手形・小切手の違いについて、以下の観点から解説します。
- 手形とは
- 小切手とは
- 手形・小切手の違いは「現金化できるタイミング」
- 約束手形の振り出し方法
- 手形割引にて現金化することもできる
手形とは
手形は、金額を一定の期日に支払うことを約束した有価証券です。手形には以下の2種類があります。
- 約束手形
- 為替手形
約束手形は発行人自身が支払いを約束する有価証券で、手形を発行する側・もらう側の2者間で取引されます。
為替手形は振出人・支払人・受取人の三者間でやりとりする有価証券です。支払人が発行された為替手形の内容に基づき、決められた金額を受取人に対して支払います。
小切手とは
小切手は、金融機関に対して預金の一部または全てを支払うように命じる有価証券です。小切手を発行すれば、受取人は指定された金額を金融機関から受け取れます。手形と同様、現金の代替手段として決済時などに利用されます。
手形・小切手の違いは「現金化できるタイミング」
手形と小切手の主な違いは、「現金化できるタイミング」です。小切手は発行された時点で即座に現金化できます。一方、手形は「支払期日」が設定されており、指定された日にちまで現金化できません。
約束手形の振り出し方法
約束手形は、金融機関に赴いて必要書類を記入し提出すれば振り出せます。約束手形の振り出しで必要書類に記載する項目は、主に以下の5つです。
- 金額
- 振出日
- 支払い期日
- 受取人の氏名
- 振り出し地の住所
上記項目を記載後、金融機関の届出印を押印して提出します。なお、手形の場合は指定された期日までは振り出しできないため注意が必要です。
手形割引にて現金化することもできる
手形は指定された期日まで原則振り出しできません。しかし、手形割引を活用すれば期日前でも振り出しできます。
手形割引とは、金融機関が手形を買い取って現金化するサービスです。手形の額面から支払い期日までの利息分を差し引いた金額を受け取れます。
ただし、手形割引は融資の一種となるため、金融期間の審査を通過しなければなりません。新規利用時は、実際に入金されるまで1週間前後かかる点も注意が必要です。
不渡りには3つの種類がある
不渡りには、以下3種類が存在します。
- 0号不渡りとは
- 1号不渡りとは
- 2号不渡りとは
0号不渡りとは
0号不渡りとは、振出人の信用に関係がない原因で金融機関が支払いを拒否した場合を指します。具体的には、以下の理由で手形・小切手が支払われないケースが該当します。
- 手形の不備
- 提示期間が過ぎている
- 支払い期日よりも早い
0号不渡りの場合、取引上では不渡りの扱いを受けないことが一般的です。
1号不渡りとは
1号不渡りとは、以下の要因で手形・小切手が支払われない状況を指します。
- 口座残高の不足
- 指定金融機関と振出人が未取引
基本的には振出人の信用に関係する不渡りです。一般的に不渡りと呼ばれる事象は、1号不渡りを指します。
2号不渡りとは
2号不渡りとは、0号・1号のどちらにも該当しない原因で手形・小切手の支払いがおこなわれないケースを指します。具体的に該当するケースは、以下の通りです。
- 契約不履行
- 手形の盗難・紛失
例えば、先に手形を発行したものの取引先が契約した業務を行わなかったため支払いを拒否するケースなどが挙げられます。
不渡りを出してもいきなり倒産するわけではない
不渡りを出したからといって、必ずしも企業が直ちに倒産するわけではありません。具体的には、6ヶ月以内に2回の不渡りを出すと金融機関取引が停止されます。現金で全取引が行えれば問題ありませんが、現実的に難しいため倒産に追い込まれる形です。
不渡りを出さないよう企業は迅速に資金繰りを改善し、経営状況の回復に努める必要があります。具体的には、資金調達の見直し・コスト削減・売上向上などの対策を講じることが必要です。
不渡りが出てしまう原因
不渡りが出てしまう原因として、主に以下の2点が挙げられます。
- 口座の残高不足
- 売掛金の未回収による資金枯渇
口座の残高不足
何らかの理由で小切手・手形に記載される額面を口座残高が下回ってしまった場合、金融機関は支払いを拒否します。
口座の残高不足は、企業の資金繰り悪化が原因のケースも多いです。例えば、「売上が予想よりも低かった」「予期せぬ出費が発生した」などの理由で企業の資金がひっ迫し、口座の残高が不足するケースがあります。
売掛金の未回収による資金枯渇
売掛金とは、商品・サービスを提供した後で支払われるべき金額です。
商品・サービスを提供したにもかかわらず期日までに売掛金を回収できない場合、企業の資金繰りが悪化して不渡りを引き起こすケースがあります。取引先を分散させるなど売掛金が回収できなくても、ある程度の資金を確保できる対策が必要です。
不渡りが会社に与える影響
不渡りが会社に与える影響は、以下2つのパターンで異なります。
- 1回目の不渡りが会社に及ぼす影響
- 2回目の不渡りが会社に及ぼす影響
1回目の不渡りが会社に及ぼす影響
1回目の不渡りが会社に及ぼす影響として、以下の2点が挙げられます。
- 金融機関に不渡りの事実を知られてしまう
- 取引先の信用評価が下落する
1回目の不渡りが発生した場合、金融機関が不渡り届を手形交換所に提出します。不渡り届が提出されれば加盟金融機関に通知されてしまうため、不渡りを起こしたと知られてしまう点がデメリットです。金融機関からの信用が大きく低下するため、新規融資は難しくなります。
不渡りの事実は金融機関以外に通知されませんが、資金不足の場合は取引先への支払いが遅れる可能性もあります。支払いが遅れれば経営難を疑われるため、結果として取引先の信用評価が下落してしまうことも懸念点です。
2回目の不渡りが会社に及ぼす影響
6ヶ月以内に2回目の不渡りが発生した場合、金融機関との取引を全て停止されます。現金のみでの取引となるため会社経営を成り立たせることが難しくなり、結果として倒産に向かう流れです。
金融機関からの資金調達が難しいため、業務を続けられず倒産してしまうのが一般的です。
不渡りで倒産しても再起は可能
不渡りによる倒産は企業にとって深刻な打撃ですが、再起は可能です。倒産後でも再起業は制限されていないため、再び事業を開始することは問題ありません。
しかし、自己破産を行っている場合は最低限の資金しか保有できず、金融機関からの借入も10年間はできません。事業に必要な資金を依然と確保しにくいため、再起業は容易でないことに留意しましょう。
日本政策金融公庫では「再挑戦支援資金」「新創業融資制度」など、自己破産後でも利用できる融資制度があります。もし不渡りによる倒産後に再起したい場合は、自己破産後でも利用できる融資制度を活用することがおすすめです。
不渡りを防ぐ方法
不渡りを防ぐ方法として、以下の3つが挙げられます。
- 決済期日を統一する
- 手形決済用口座と貯蓄用口座を別の金融機関にする
- 手形取引を控える
決済期日を統一する
決済期日がバラバラだと資金の出入りが不規則になり、管理が難しくなるため予期せぬ資金不足を引き起こす可能性があります。
決済期日を統一することで、「期日までに必要な資金を口座に入金する」など管理を簡単にできます。取引条件を設定する際は、決済期日をなるべく近い日付でまとめるなどの対策がおすすめです。
手形決済用口座と貯蓄用口座を別の金融機関にする
手形決済用の口座と貯蓄用の口座を同一金融機関内で開設していた場合、手形決済用の口座が残高不足の時は貯蓄用口座を差し押さえられてしまいます。
手形決済用・貯蓄用口座を別の金融機関にしておけば、決済用の口座が不足しても他方の口座が影響を受けることなく資金繰りを安定させられます。
手形取引を控える
手形は支払いを一定期間先延ばしできるため、一見便利に思えます。しかし、資金繰りの見通しを曖昧にして不渡りのリスクを高めてしまう点がデメリットです。
現在はネットバンキングなど多様な即時決済手段が豊富にあります。利便性の高い決済手段は数多く存在するため、資金管理を効率化するために手形取引をおこなわないことも選択の1つです。
不渡りを出して存続が難しい法人・経営者はどうなる?
不渡りを出して存続が難しい法人・経営者は、主に以下の流れとなることが一般的です。
- 法人は金融機関取引停止となってから破産手続きに進む
- 経営者は自己破産手続きを進めるケースが多い
法人は金融機関取引停止となってから破産手続きに進む
法人が不渡りを6ヶ月以内に2回出した場合、金融機関は全取引を停止します。法人経営は事実上不可能になるため金融機関取引が停止した後、破産手続きに進むケースが一般的です。
破産する場合は、裁判所に手続きの申し立てをおこないます。手続きが開始されれば、法人が所有する財産を全て処分されて債権者に分配されます。債権者への分配が終われば、法人は解散し消滅する流れです。ただし、民事再生・会社更生の手続きで債権者とやりとりしながら会社を存続させる方法もあります。
経営者は自己破産手続きを進めるケースが多い
法人が不渡りを出した場合、経営者は自己破産手続きを進めるケースが多いです。基本的に、法人が倒産しても経営者個人が支払いなどの責任を追う必要はありません。
しかし、法人が融資を受ける場合は経営者が連帯保証人となっているケースが多く、結果として返済義務を負う必要が出てきます。法人が支払うべき債務を経営者が負担できるケースは少なく、自己破産手続きを進めるケースが一般的です。
まとめ
不渡りは金融機関が小切手・手形の支払いを拒否する状態で、企業の信用に大きな影響を及ぼします。不渡りの原因は主に口座の残高不足・売掛金の未回収などです。不渡りを防ぐためには、決済期日の統一・手形取引を控えるなどが有効です。
不渡りが発生して倒産した場合でも再起は可能ですが、資金調達がしにくいため困難な状況が待ち受けます。普段から資金管理を徹底して不渡りを未然に防ぎ、健全な企業経営を目指しましょう。
多くの企業では資金管理に割ける人的リソースが少ない場合も多いでしょう。エフアンドエムはバックオフィスの支援に特化した「F&M Club」サービスを提供しており、累計38,000社の支援実績をもとに安定経営に向けた的確なアドバイスを提供できます。
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