連鎖倒産とは?至りやすい会社の特徴や回避方法などを詳しく解説
連鎖倒産について聞いたことがあるものの、どのような現象か詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?連鎖倒産とは、1つの企業が経営破綻して関連企業が次々倒産していく現象です。連鎖倒産を回避するためには、いくつかのポイントを押さえて経営する必要があります。
今回は、連鎖倒産について基本情報・倒産しやすい会社の特徴・回避方法などを解説します。自社を連鎖倒産から守り、安定的な経営を実現したい企業はぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.連鎖倒産とは
- 2.倒産には「法的倒産」「私的倒産」の2種類がある
- 3.倒産に至りやすい会社の特徴
- 3.1.支払いが期限内におこなわれていない
- 3.2.従業員の入れ替わりが激しい
- 3.3.社長の金遣いが荒い
- 3.4.与信管理が甘い
- 4.連鎖倒産を回避する方法
- 4.1.取引先を複数もつ
- 4.2.売掛保証を活用する
- 4.3.資金を早めに回収する
- 5.連鎖倒産阻止に利用できる金融サポート
- 5.1.セーフティネット保証制度
- 5.2.セーフティネット貸付
- 5.3.経営セーフティ共済
- 6.まとめ
連鎖倒産とは
「連鎖倒産」とは企業の経営破綻によって取引先・関連企業も経営困難に陥り、次々と倒産する現象です。これは、企業間の取引が密接に結びついている現代社会において、企業の経営破綻がほかの企業に大きな影響を及ぼすことを示しています。
たとえば、ある製造業者が倒産した場合、製品を仕入れていた小売業者は新たな仕入れ先の確保が必要です。仕入れ先の確保に時間がかかると小売業者の商品供給が滞り、結果的に売上が減少します。製造業者から多額の未払い金が残されていた場合、小売業者の経営を圧迫して倒産につながる流れです。
上記のように、会社の倒産によって連鎖的に他企業へ影響を及ぼすため「連鎖倒産」と呼ばれます。連鎖倒産は経済全体に大きな影響を及ぼす可能性があり、予防・対策が重要です。
倒産には「法的倒産」「私的倒産」の2種類がある
倒産には、主に以下の2種類が存在します。
- 法的倒産
- 私的倒産
法的倒産
「法的倒産」とは、裁判所の手続きを経ておこなわれる倒産です。具体的には、以下の法的手続きを伴う倒産が挙げられます。
- 破産
- 民事再生
- 会社更生
法的倒産の手続きによって、債務者は自己の財産を管理・処分する能力を失います。代わりに裁判所が財産の管理・処分をおこなうのが特徴です。
破産は債務者がすべての財産を清算し、債権者に分配する手続きを指します。一方、民事再生・会社更生は債務者が事業を継続しながら負債を整理する手続きです。法的倒産の手続きは、債務者・債権者双方を考慮しながら、公正かつ効率的な負債の整理を目指します。
私的倒産
「私的倒産」は裁判所の手続きを経ずに、債務者・債権者間の合意によっておこなわれる倒産です。私的倒産には、以下の2種類があります。
- 私的整理
- 取引停止処分
私的整理は債務者が自ら債権者と交渉し、返済条件の見直し・債務の一部免除を求める手続きを指します。取引停止処分は、同一の手形交換所管内で6カ月以内に2回の手形・小切手不渡りを出して科される制裁処分です。取引停止処分を受ければ、手形交換所に加盟する金融機関との当座・貸出取引ができず倒産状態とみなされます。
倒産に至りやすい会社の特徴
倒産に至りやすい会社の特徴として、以下の4つが挙げられます。
- 支払いが期限内におこなわれていない
- 従業員の入れ替わりが激しい
- 社長の金遣いが荒い
- 与信管理が甘い
上記の特徴に当てはまらないよう、経営管理をしっかりおこないましょう。
支払いが期限内におこなわれていない
倒産に至りやすい会社の特徴として、支払いが期限内におこなわれていないことが挙げられます。支払いを期限内におこなえない場合、企業は資金繰りに問題がある可能性が高いです。
「売上が予想よりも低い」「経費がかかりすぎた」など、会社の収益性に問題があるかもしれません。事業の収益性・支出管理を見直し、支払いに必要な資金を確保できる体制を整えましょう。
従業員の入れ替わりが激しい
従業員の入れ替わりが激しいことも、倒産前によく見られる兆候です。従業員の入れ替わりが激しい会社は、人事管理に問題のある可能性があります。
たとえば、「給与の支払いが遅れている」「長時間労働が横行して労働環境が悪い」など、会社の運営に問題が潜んでいるかもしれません。従業員の入れ替わりが激しいと人材のスキルが向上せず、会社の生産性を低下させて経営破綻につながるケースがあります。
社長の金遣いが荒い
社長の金遣いが荒いことも、倒産前の会社に見られる兆候です。社長の金遣いが荒いと、会社の資金管理に問題がある可能性が高いです。
会社が成長し売上が上がると利用できる資金が多くなり、社長の金遣いも荒くなるケースがあります。しかし、一度支出の水準を上げてしまうとなかなか下げられません。
売上が低下したときも金遣いの荒さを改善できず、倒産に至るケースが多くあります。一時的な売上の上昇に左右されず、普段から支出管理を健全におこなうことが重要です。
与信管理が甘い
倒産しやすい会社は、与信管理が甘いケースが多いです。取引先の与信管理が甘い会社は、売掛金の回収がうまくいかずに倒産するケースが多くあります。
中小企業同士の取引では普段からの付き合いで受発注を決めているケースもあり、与信管理をせずに取引を継続することも少なくありません。しかし、長く付き合いがある会社のため経営が安定しているとは限りません。
新型コロナウイルスの感染拡大など、予想だにしない自体で経営危機に陥るケースもあります。企業間での取引では、取引先の支払い能力があるかなど与信管理をきちんとおこないましょう。
連鎖倒産を回避する方法
連鎖倒産を回避する方法として、以下の3つが挙げられます。
- 取引先を複数もつ
- 売掛保証を活用する
- 資金を早めに回収する
上記のポイントを意識して、取引先の倒産による影響を最小限に押さえましょう。
取引先を複数もつ
連鎖倒産を回避するための方法は、取引先を複数もつことです。取引先が1社しかない場合、倒産で売上が無くなるなど経営が難しくなります。
取引先を複数もっていれば、1つの取引先が経営破綻した場合でも他社からの収入で企業運営を続けられる点がメリットです。売上が減少した場合でも、複数の取引先があれば新規開拓でカバーするなど時間的な余裕も生み出せます。
ただし、取引先を増やしすぎると管理コストの増加・新たな取引関係の構築に時間・労力を必要とします。取引先の選定・管理には十分な注意が必要です。
売掛保証を活用する
売掛保証を活用することも、連鎖倒産を回避するための有効な手段です。売掛保証は取引先が支払いをおこなえない場合に、保証会社が債務を肩代わりするサービスです。
売掛保証を契約する場合は、取引実施前に保証会社へ申し込みをおこないます。申し込み内容をもとに保証会社が取引先の与信審査を実施し、保証内容を決定して契約する流れです。
売掛保証を利用すれば、取引先の経営破綻による直接的な損失を防げます。売掛保証は保証料が発生するため、コストを加味して利用するかを決めることがおすすめです。
資金を早めに回収する
資金を早めに回収することも、連鎖倒産を防ぐための重要な戦略です。たとえば、売掛での取引を実施している場合は、取引条件を見直して支払い時期を早める方法があります。新規の売掛に関しては、現金での支払いに変えるなどの方法も有効です。
資金を早く回収することで、会社のキャッシュフローを改善して経営の安定性を高められます。取引条件の変更は信頼関係に影響を及ぼす可能性があるため、慎重に交渉することが必要です。
連鎖倒産阻止に利用できる金融サポート
連鎖倒産阻止に利用できる金融サポートとして、以下の3つが挙げられます。
- セーフティネット保証制度
- セーフティネット貸付
- 経営セーフティ共済
連鎖倒産に巻き込まれ、資金繰りが厳しい場合は上記サポートを利用しましょう。
セーフティネット保証制度
セーフティネット保証制度は民事再生手続きを開始した大型倒産事業者に対し、資金繰りが厳しい中小企業を支援する措置です。セーフティネット保証制度では信用保証協会が融資に対する保証をおこない、企業が必要な資金を金融機関から受け取れます。
具体的に対象となる中小企業は、以下の条件に当てはまる事業者です。
- 当該事業者に対して50万円以上売掛金債権などを有している中小企業者
- 当該事業者に対し50万円未満の売掛金債権などしか有していないが、当該事業者との取引規模が20%以上である中小企業者
【出典】セーフティネット保証(1号:連鎖倒産防止) |中小企業庁
対象となる中小企業は、本店所在地の市町村区内にある商工担当課などの窓口に認定申請書を提出して手続きできます。認定後は、希望の金融機関・所在地の信用保証協会に認定書を持参して保証付融資を申し込む流れです。
セーフティネット貸付
セーフティネット貸付は日本政策金融公庫が実施する制度です。取引企業の倒産によって経営難に直面する企業を対象に、融資をおこなっています。具体的な制度の概要は、以下表のとおりです。
対象者 |
取引企業など関連企業の倒産により経営に困難を来している方で、次のいずれかに該当する方
|
資金用途 |
取引企業など関連企業の倒産に伴い緊急に必要な長期運転資金 ※長期運転資金には、建物などの更新に伴い一時的に施設などを賃借するために必要な資金を含む |
融資限度額 |
1億5千万円(直接貸付と代理貸付を合わせて) |
返済期間 |
8年以内(うち据置期間3年以内) |
利率 |
日本政策金融公庫の基準利率に基づく |
担保・保証人 |
要相談 |
【出典】取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)|日本政策金融公庫
セーフティネット貸付を利用すれば、関連企業の倒産によって経営難に直面する中小企業は必要な資金を確保して経営の安定化を図れます。
経営セーフティ共済
経営セーフティ共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が提供する取引先倒産による経営難を防ぐための制度です。無担保・無保証人で、掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入できます。毎月5,000円から20万円までの範囲で掛金を納付し、納付日数などに応じた金額を借入できる制度です。
必要書類を用意した上で、中小機構と業務委託契約を結んでいる団体・金融機関の窓口で直接加入手続きをおこないます。必要書類は経営セーフティ共済の公式Webサイトに掲載されているため、手続き前に確認しておきましょう。
まとめ
連鎖倒産は企業の経営破綻によって関連企業が経営難に陥り、次々と倒産する現象です。連鎖倒産を回避するためには、取引先を複数もつ・売掛保証を活用するなどの方法があります。また、セーフティネット保証制度などの金融サポートを活用して経営状況を改善する方法も利用できます。今回の内容を参考に、連鎖倒産を防いで安定的な企業経営を目指しましょう。
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