【2026年度】中小企業の昇給相場はいくら?F&M Club会員企業調査で約8割が実施予定サムネイル画像

【2026年度】中小企業の昇給相場はいくら?F&M Club会員企業調査で約8割が実施予定

株式会社エフアンドエム

株式会社エフアンドエム

物価上昇や最低賃金の引き上げが続くなか、従業員の昇給は、採用・定着や最低賃金対応の観点から、重要な経営課題になりました。採用力や定着率に直結する課題として位置づけられるようになっています。「本音では昇給させてあげたいが、原資がどこまで確保できるか分からない」という声を抱える経営者の方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、昇給を先送りにすれば従業員の不満が募り、人材流出のリスクが高まりかねません。特に人手不足が続く業種では、昇給の遅れがそのまま採用競争力の低下につながります。既存社員の離職と採用コストの増加という悪循環を招くかもしれません。

 

今回、エフアンドエム中小企業総合研究所が最新の実態調査を実施しました。これをもとに、2026年度の中小企業における昇給の実施状況と相場、規模・業種による対応の差をまとめました。また、最低賃金や価格転嫁を巡る制度環境の変化を踏まえたうえで、経営者が今すぐ着手すべき対策を解説しています。

目次

中小企業における昇給の実施状況

エフアンドエム中小企業総合研究所の調査から、2026年度における昇給の実施率・昇給率・昇給額の相場を確認します。

回答企業の約8割が正社員の昇給を予定

エフアンドエム中小企業総合研究所が2026年4月に実施した調査(F&M Club会員企業対象、有効回答2,705社)によると、約8割の中小企業が2026年度、正社員への昇給・賃上げを予定していると回答しました。昇給対応は、企業規模や業種を問わず広く定着しつつある実態が明らかになっています。

昇給率の決定要因としては、「物価上昇」と「人材確保」を挙げる企業が広く見られました。取引先への価格転嫁が進まないなかでも、人材の流出を防ぐために昇給を選択せざるを得なかったという企業が多いことがうかがえます。業績の裏付けよりも離職防止を優先した昇給が広がっている実態は、今後の経営判断にとっても見過ごせないポイントでしょう。

平均昇給率は2〜3%台

正社員の平均昇給率は「2%以上3%未満」が最も多く、「3%以上」の合計は約4割に達しました。月給ベースの昇給額では「5,000円以上10,000円未満」が最多で、中小企業における昇給額のボリュームゾーンとなっています。また、回答区分に基づく加重平均は3.50%・月約8,270円です。自社の昇給水準を検討するうえでの一つの目安として押さえておきたい数字です。

【出典】エフアンドエム中小企業総合研究所|中小企業の昇給予定実態調査(2026年度)

企業規模や業種で広がる対応の差

昇給対応は企業規模や雇用形態によって差があります。小規模企業とパート・アルバイトへの対応状況を見ていきましょう。

小規模企業ほど「実施しない」割合が高い

一方で、すべての企業が同じように昇給に対応できているわけではありません。従業員0〜10人規模の企業では、他の規模より「実施しない」割合が高い傾向があります。小規模企業ほど昇給原資の確保が難しい実態が浮き彫りになりました。昇給原資に余力がない場合、無理に昇給を行うのではなく、まずは自社の状況を正しく把握することが出発点になるでしょう。

パート・アルバイトへの昇給は約4割にとどまる

正社員への昇給を実施する企業等2,441社のうち、パート・アルバイト等への昇給実施率は約4割にとどまっています。正社員への対応と比べてばらつきが大きいことも分かりました。業種によって非正規雇用の構成比が異なるため、対応状況にも差が生じています。たとえば宿泊業・飲食業や医療・福祉では実施率が高い一方、情報通信業では「実施しない」と回答した企業が多数を占めました。非正規従業員が事業を支える割合の違いが、そのまま処遇方針の差として表れています。

どの企業規模や業種でも課題を抱える

自由記述では、企業規模や業種を問わず課題が見受けられました。たとえば、取引先への価格転嫁の難しさとそれに伴う昇給の厳しさが表れています。また、最低賃金の引き上げにより新入社員と中堅・ベテラン社員の賃金差が縮まる「賃金体系のひずみ」を懸念する声が、製造業・建設業を中心に多く寄せられていました。

「最低賃金に合わせて若手の給与を上げると、中堅社員との差がなくなってしまう」という悩みは、多くの経営者に共通する感覚ではないでしょうか。また、昇給に伴う社会保険料の増加により、従業員の手取りが思うように増えないという声も複数確認されています。昇給しても効果が実感されにくい構造が現場の負担感を高めています。

【出典】エフアンドエム中小企業総合研究所|中小企業の昇給予定実態調査(2026年度)

制度・環境の変化:最低賃金と価格転嫁を巡る動き

昇給原資の確保に関わる、最低賃金の改定動向と価格転嫁の進捗、活用できる税制を確認します。

2026年度の最低賃金審議が本格化

厚生労働省の中央最低賃金審議会は7月28日に答申を取りまとめました。引き上げ目安はAランク54円、B・Cランク56円と示されています。目安どおりなら全国加重平均は1,176円、引き上げ率は4.9%です。今後、各地方最低賃金審議会の審議を経て都道府県別の金額が決定されます。

最低賃金の引き上げは、パート・アルバイト等の賃金水準に直接影響する内容です。自社の賃金体系への影響を早めに確認しておきましょう。

【出典】厚生労働省|中央最低賃金審議会

価格転嫁は前進も「道半ば」が多い状況

経済産業省・中小企業庁が2026年3月の「価格交渉促進月間」に合わせて実施したフォローアップ調査(回答企業数69,625社)によると、価格転嫁率は前回から約1ポイント増の54.2%となりました。コスト要素別では、原材料費55.7%、労務費50.0%、エネルギーコスト48.9%という結果です。「価格交渉を持ちかけたら取引を減らされるのではないか」と身構える経営者の方もいるかもしれません。しかし、実際には「価格交渉が行われた」割合が90.7%に達しており、交渉自体はすでに広く行われる時代になっています。

一方で、価格交渉を行ってもコスト上昇分の全額転嫁には至らなかった企業のうち、発注企業から「納得できる説明があった」と回答した企業は約6割にとどまりました。また、受注企業の取引階層が深くなるほど価格転嫁の割合が低くなる傾向も引き続き見られます。全体として改善傾向にはあるものの、中小企業庁は「まだ道半ば」としている状況です。昇給原資の確保には、取引先との価格交渉を継続的に進める姿勢が欠かせません。

【出典】経済産業省|価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査の結果

賃上げ促進税制の活用も選択肢に

中小企業向け「賃上げ促進税制」は、青色申告書を提出している中小企業者等が、前年度より給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。制度内容は、開始する事業年度によって異なるため、適用年度に応じた要件を確認しなければなりません。昇給を検討する際は、顧問税理士等とあわせて最新の情報を確認しておきましょう。

【出典】中小企業庁|中小企業向け「賃上げ促進税制」

経営者が今すぐやるべきアクション

ここまでの実態を踏まえ、経営者が今すぐ着手できる4つの実務アクションを紹介します。

昇給原資を「見える化」する

まずは自社の人件費率・粗利率を確認し、どの程度の昇給原資を確保できるかを数値で把握しましょう。感覚ではなく数字に基づいて判断することが、無理のない昇給計画の第一歩です。たとえば製造業であれば原材料費の上昇分、飲食業であれば食材費や光熱費の上昇分を先に洗い出します。そのうえで人件費に回せる余力を試算すると、昇給額の根拠を従業員にも説明しやすくなります。

取引先との価格交渉を段階的に進める

価格交渉促進月間(毎年3月・9月)のタイミングを活用することもひとつの手段です。コスト上昇分を根拠資料とともに取引先に説明することで、価格転嫁の実現可能性が高まります。一度にすべてを転嫁しようとせず、段階的に交渉を重ねる姿勢も有効でしょう。交渉の記録を残しておくことは、次回以降の交渉をスムーズに進めるうえでも役立ちます。

賃金の決め方を「仕組み化」する

昇給額の決め方に明確な基準がないと、毎年の判断に苦慮しかねません。また、従業員の納得感も得にくくなります。評価制度や賃金テーブルを整備し、誰にでも説明できる基準をつくることが重要です。また、基準を設けておくことこそ、継続的な賃上げを支える土台になります。

特に、最低賃金の引き上げによって若手と中堅・ベテラン社員の賃金差が縮まりやすい環境になってきました。この状況下で納得感を得るためにも、等級や役割に応じた賃金設計を再考することは重要です。

給与設計WP(ブログ記事バナー)

パート・アルバイトの処遇も含めて検討する

正社員だけでなく、パート・アルバイト等の処遇見直しも検討課題です。最低賃金の引き上げは非正規雇用の賃金に直接影響するため、早めの見直しが従業員の定着にもつながるでしょう。専門家への相談を通じて、自社に合った昇給の進め方を整理するのも有効な選択肢です。

まとめ

2026年度は、約8割の中小企業が正社員への昇給を予定しているとの調査結果が出ました。昇給対応はもはや標準的な経営行動として定着しつつあります。一方で、企業規模や業種によって対応状況には差がある状況です。小規模企業やパート・アルバイトへの対応には、依然として課題が残っています。

最低賃金の引き上げや価格転嫁の進展など、経営環境は今後も変化を続けます。昇給原資の見える化、取引先との価格交渉、賃金の仕組み化といった実務アクションを一つずつ積み重ねることが、無理のない持続的な賃上げにつながるはずです。

今回の調査では、昇給額の決め方に明確な基準がなく、毎年の判断に苦慮しているという声も多く寄せられました。評価制度や賃金テーブルといった社内の仕組みを整えることは、従業員が納得できる昇給を実現し、来年度以降も昇給を続けるための基盤づくりにつながります。単年の対応で終わらせず、中長期的な視点で賃金制度そのものを見直す機会として捉えてみてはいかがでしょうか。

F&M Clubは、全国48,000社以上の中小企業に活用されている定額制の経営支援サービスです。月額30,000円(税別)で、評価制度・賃金テーブルの整備支援や就業規則の見直し、補助金・助成金に関するご相談など、その他40種類以上のサービスをご利用いただけます。

  • 評価制度・賃金テーブルの設計支援

  • 就業規則等の作成・変更管理

  • 補助金・助成金の情報提供やご相談

「昇給の基準をどう決めればいいか分からない」「価格交渉をどう進めればいいか悩んでいる」など、思い立った段階でも差し支えありません。持続可能な賃上げの仕組みづくりに、ぜひともご相談ください。

労務無料相談会(記事用バナー)

​​​​​​​サービス資料DL

 

 
RELATED

関連記事はこちら

社会保険料の改定とは?算定・月変の違いと実務上の注意点を解説
2026.08.26

社会保険料の改定とは?算定・月変の違いと実務上の注意点を解説

社会保険料の改定について、算定・月変の違いを解説。標準報酬月額の見直し、固定的賃金、遡及払い、支払基礎日数など、給与計算...
AIガバナンスとは?生成AIの3大リスクと企業が今すぐ取るべき対応
2026.07.27

AIガバナンスとは?生成AIの3大リスクと企業が今すぐ取るべき対応

原油高騰による燃料費・原材料費・物流費の上昇が中小企業の利益を圧迫しています。価格転嫁、コスト見直し、資金繰り管理、補助...
原油高騰で利益消失?中小企業に迫る
2026.07.22

原油高騰で利益消失?中小企業に迫る見えない値上げ

原油高騰による燃料費・原材料費・物流費の上昇が中小企業の利益を圧迫しています。価格転嫁、コスト見直し、資金繰り管理、補助...
CONTACT

経営者のみなさんのお悩みにF&M Clubが応えます