事業性借入の資金使途に応じた正しい返済計画ができていますか?中小企業経営者必見!
事業性資金を借り入れている経営者は、想定外の事態で資金繰りに問題が発生した場合、あらゆる手段を使って返済計画を見直し、経営を守らなければなりません。
売上の減少や経費の増加によって資金繰りが悪化し、取引先への支払いができなくなる「資金ショート」に陥れば、会社を運営できなくなります。万一、手形・小切手が不渡となれば倒産を免れません。
本記事では、事業性資金の性質を理解し、資金繰り維持・改善への方策をご案内します。
目次[非表示]
- 1.事業性資金の借入とは
- 2.返済計画を見直すポイント
- 2.1.運転資金(短期借入金)の場合
- 2.2.設備資金(長期借入金)の場合
- 3.事業継続のための方策
- 3.1.新規借入の検討
- 3.2.返済猶予・免除の申請
- 3.3.リスケジュール (リスケ)の申請
- 3.4.借入一本化
- 4.まとめ
事業性資金の借入とは
事業活動で発生する資金需要により借入がおこなわれるもので、個人の資産に資するローンとは異なるものです。
事業性資金の借入は、「運転資金用」と「設備資金用」に分類され、それぞれ1年以内に返済がなされる「短期借入金」と、1年超の「長期借入金」に会計処理されます。
運転資金の借入
運転資金とは、会社や店舗の家賃、会社の宣伝費用、材料や製品の仕入れ費用、人件費など会社の日々の運営に関わる必要経費です。
売上が発生してすぐに現金化できるといいでしょう。ただ、手形決済サイトにより、実際に売上を回収できるタイミングが3ヶ月先になる場合も多くあります。
しかし、支払いは毎月おこなわなければなりません。つまり、支払いを滞らせないためには、3ヶ月分の運転資金が必要ということです。
売上の減少や、経費の増加、売上回収の先延ばしなどは、資金繰り悪化につながります。運転資金が増え、追加の短期借入金で賄わなければなりません。
短期借入金は金融機関から約束手形を差し入れることで、借り入れられます。通常1年以内の返済期日が設定されるでしょう。返済は期限一括で、利息は借入時に差し引かれる「先取り方式」が一般的です。
返済原資は、通常、日々の事業活動で計上される売上金で賄われます。
安定した経営のためには資金繰りを管理し、短期借入金を含めた運転資金残高を売上の3倍程度の水準に抑えておかなければなりません。
設備資金の借入
設備資金とは、事務所や店舗の改装や、机・パソコンなどの資材・機器の什器類、車の維持費などが会計上固定資産として計上されるものです。設備資金の不足分は長期借入金で賄われます。
設備投資によって事業の拡大を目指すため、金額は大きくなります。ただし、運転資金でなく設備投資とする明確な金額の基準はありません。
概ね10万円を目安とすることが一般的ですが、個別に確認が必要です。
毎月の返済額によって借入可能金額も決まりますが、設備購入の際には、できるだけ多くの相見積もりを取り、できる限り価格を抑え、返済額を圧縮することが大切です。
借入期間は、設備の対応年数にもよりますが、通常10年以上を想定して、安定した事業計画を立てることが前提となります。返済方法は、借入残高と支払利息を確実に減らしていく「元金均等方式」が一般的です。
返済原資は、納税後利益と、当該設備の減価償却費で賄います。減価償却費は、キャッシュフロー上では、実際には支払わず手元に現金が残っている処理となるため、投資設備の耐用年数に見合った返済期間・返済額を決めなければなりません。
返済計画を見直すポイント
2020年1月日本国内で新型コロナウイルスが初めて発見され、ご存じのように多くの業界で売上の激減が見られ、企業は存続の危機にさらされています。自社がこの未曾有のコロナ禍で売上減少に対応し得るかを、今改めて見直す時期に来ているでしょう。
なぜなら、「新型コロナウイルス感染症特別貸付制度」が始まってすぐに借入れをした企業は、まもなく据置き期間が終了し、元金返済が開始されるためです。
それに加え、今後同様の特別貸付制度を検討する企業も増加するとも考えられています。
短期借入金と長期借入金における、見直しポイントを解説します。
運転資金(短期借入金)の場合
運転資金の異常時を見直すためには、まず「キャッシュイン」と「キャッシュアウト」のキャッシュフローに異常値がないかを確認します。
- キャッシュイン:取り扱い商材・資材を仕入れ、在庫として持ち、売上げて売掛金が発生してから、最終的に現金が回収されるまでの流れ
- キャッシュアウト:仕入れに掛かった費用を買掛金として計上し、実際にその資金を支払うまでの流れ
仕入を起点としての、在庫、売上、売掛金回収の「キャッシュイン」、買掛金支払いの「キャッシュアウト」の金額と発生時期、発生期間がコロナ前と比較して悪化していないかを検証します。
また、同時にコロナによって売上が前年以降、どのくらい減少したか月別に検証する必要があります。売上データは特別融資申請に必要になってくるため、必ず確認してください。
設備資金(長期借入金)の場合
設備投資によって発生する収益が、返済原資として賄われているかを確認することが重要です。
納税後利益と減価償却費も返済原資とみられますが、コロナ禍で企業収益は圧迫されており、設備投資本体での収益性を重視する必要があります。
投資効果が出ていない借入金は、今後返済が厳しくなっていくため、簿価が計上されている間に譲渡するなど、設備投資方針を見直す必要があるでしょう。
事業継続のための方策
コロナ禍で打撃を受けた企業の業績回復まで猶予する趣旨で、さまざまな救済策が取られています。現在借り入れている経営者にとって、次にご紹介する方策は少しでも資金繰りを改善させ、倒産を回避させるため、是非参考にしてください。
令和4年3月8日には、金融庁から苦境に立たされた経営者に親身に対応するように指示も出ています。
新規借入の検討
新型コロナウイルス感染症特別貸付利用によって、当面のキャッシュフローを確保することが、現状、最も効果的といえます。
資金使途は、設備資金と長期運転資金、双方に利用可能です。
運転資金は、通常、短期借入金に分類されます。しかし長期運転資金は、日々の売上金回収日と支払い日の時間のズレを埋める短期運転資金の趣旨ではありません。
1年以上の長期にわたって運転資金を投入し、資金繰り全体を安定させるものです。
返済猶予・免除の申請
すでにある借入の返済を猶予したい場合、まず取引金融機関へ相談してください。返済額緩和を含め、さまざまな提案をしてもらえます。
金融機関としても、金融庁から親身な対応をとるようにとの指示が出ているため、粘り強く交渉しましょう。
実際には、返済自体が免除されることは非常に困難のようですが、据置期間の延長などの返済条件の変更には応じてくれます。
民間の金融機関はお客様から相談を受ければ、政府系金融機関と協働連携することにもなっているため、双方からの支援を期待できます。
リスケジュール (リスケ)の申請
先ほど触れた据置期間の延長も、リスケジュールの一つですが、一般的には「月間返済額を当面の間減額する」「返済期限を延長する」ことを主にいいます。リスケジュールによって返済条件が緩和され、資金繰り改善を期待できるでしょう。
リスケジュールを申請するためには、経営改善計画をしっかりと作ることが必要です。計画から合理的な業績改善が見込まれれば、銀行はリスケジュールの申請を受けなければなりません。
一旦、リスケジュールを認められれば、経営者にとっても資金繰り改善となり、金融機関にとっても取引先の倒産リスクが回避できるというメリットがあるため、正当な方策として一度相談することをおすすめします。
借入一本化
複数の金融機関で借り入れている場合、それぞれの返済額や金利負担が、資金繰りを圧迫している可能性があります。また、返済条件もそれぞれ異なれば、管理面でコストがかかっています。メインで取引している金融機関に借入を一本化すれば、金額もまとまって増えるため、金利も低く設定されるかもしれません。
ただし、注意点として、借り換え手数料がかかること、借り換えによって全額返済する金融機関に対しては取引縮小の交渉が必要となり、苦肉の策となることも念頭に検討してください。
まとめ
今回、事業性資金の区分、性質、変動要因、異常値管理について解説しました。
運転資金としての短期借入金、設備資金としての長期借入金をすでにおこなっている経営者にとって、今は、まさしく「有事」の状況です。
資金ショートが発生すれば、倒産を意味します。コロナの本当の影響はこれからが本番といっても過言ではありません。冷静に現状を分析し、効果的な次の一手を打つ必要があるのではないでしょうか?
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