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借入限度額の4つの計算方法を理解する経営上の3つのメリット

企業経営をしていると、さまざまな場面で難しい経営判断に迫られます。資金繰りはその最たる例といえるでしょう。運転資金やつなぎ資金、設備投資などの事業拡大局面でも借入の決断は生じてきます。その時どれだけ借入ができるかによって、経営判断が大きく変わってきます。

まさに借入限度額が及ぼす影響であり、経営判断をせばめてしまう元凶です。

お金を貸す側の金融機関は、借り手が返済できない融資を実行しません。つまり、貸倒れリスクの回避基準として設定している指標こそが借入限度額です。

日頃から借入限度額を意識した経営を心がけることで堅実経営につながり、借入限度額に着目する経営者が増えています。経営者にさまざまなメリットを与える借入限度額の把握は、お金の貸し手である金融機関も企業評価に活用しているからこそ注目していきたい指標です。

本記事では、借入限度額の計算方法や借入限度額を活用するメリットを詳しく解説します。



目次[非表示]

  1. 1.借入限度額の計算方法の把握がより良い経営判断を導き出す
  2. 2.借入限度額の計算方式は主に4つ
    1. 2.1.月商倍率による計算方式
    2. 2.2.収益面による計算方法
    3. 2.3.償還年数による計算方法
    4. 2.4.インタレスト・カバレッジ・レシオによる計算方法
  3. 3.借入限度額の計算方法を理解するメリット
    1. 3.1.経営破綻リスクの事前防止
    2. 3.2.借入金を効率よく活用できる
    3. 3.3.借入限度額の見える化
  4. 4.F&M Clubでは財務に関わるサポートをおこなっています
  5. 5.まとめ

借入限度額の計算方法の把握がより良い経営判断を導き出す


借入申込の経営判断は、借入が返済不可能になって経営上の甚大なダメージを負いかねない非常に重たい決断です。

借入限度額を把握することは、経営判断を見誤らないための最低限の基準を知ることにつながるため、重要な位置づけとなることはいうまでもありません。

金融機関が企業評価に活用しているほどなので、経営者が借入限度額の計算方法を活用していくことも同じように重要です。

借入限度枠を意識した企業経営の実践は、経営判断の選択の幅を広げることにつながります。

また貸付をおこなう金融機関の融資担当者は、以下の視点で経営者を見ていることを念頭におきましょう。

  • 経営者が相場観にのっとった企業経営をしているか
  • 事業拡大を考える際、現実的で客観的な視点に立っているか
  • どんぶり勘定ではなく、財務状況をしっかりと把握しているか
  • 返済計画を見据えた経営ができているか

お金を貸す側の金融機関は企業や経営者各々の置かれた状況に応じて柔軟に対応します。

さらに借入限度枠を設けて総合的な貸付の判断をおこなっています。

借入限度額の計算方法を覚えておくことが、日頃から自社に対する客観的かつ現実的な評価を下す材料となります。

評価材料があってこそ、次なる事業展開や迅速な経営判断をおこなえるため、借入限度額に関しては甘く見積もってはいけません。

借入限度額を重要視する経営者が率いる企業は、金融機関に将来性を買われて大きな支援を受けられる場合もあります。

金融機関側の視点としても重要視されているため、まずは借入限度額を常に意識するところから始めてみてはいかがでしょうか。




借入限度額の計算方式は主に4つ


会社経営において重要とされる借入限度枠の計算方式は4つあります。

  • 月商倍率による計算方式
  • 収益面による計算方式
  • 償還年数による計算方式
  • インタレスト・カバレッジ・レシオ

それぞれの計算方式は異なる観点から借入限度額を導き出すため、さまざまな角度から会社を評価できます。

月商倍率による計算方式

月商倍率による借入限度額を割り出す場合、まずは月商の何か月分の借入をしているかを把握する必要があります。

その把握は以下の計算式によって算出します。


借入金返済余力=借入金÷月商

主に運転資金の借入金が多いかを算出する計算方法で、企業経営が健全か危険水準に達しているかを判断します。

3カ月以内であれば安全圏と判断されることが一般的とされています。

▼計算例

平均月商が500万円だった場合、その3か月分にあたる1,500万円までは安全な借入額として評価されます。

ちなみに算出値の評価は業種により異なるので注意が必要です。

一般的な業種別借入金月商倍率の評価基準



借入金月商倍率

経営状態

小売業


製造業

サービス業

1.5倍

安全

3.0倍

要注意

6.0倍

危険

卸売業



0.8倍

安全

1.5倍

要注意

3.0倍

危険

また、金融機関はこの評価基準を加味したうえで、下記の計算方法によって現状の借入限度枠額を割り出して貸付をおこないます。


月商倍率による借入限度額の計算式=(年商÷12か月)×1~6か月

営業利益率や経常利益率が低い業種の場合は、1~2か月で乗じますが、逆にそれらが高い業種は5~6か月を乗じます。

▼計算例

年商30億円の場合


(30億円÷12か月)×1~6か月=2,500万円~1億2,500万円

平均月商の何倍を金融機関が貸してくれるかが争点となりますが、健全経営の度合いで決まると言っても過言ではありません。

月商倍率方式による計算は、健全経営であれば平均月商の6か月分の借入が可能となります。

しかしながら現実的には、その価値判断の詳細は各金融機関が握っています。

金融機関により少しづつ異なる点があることも、同時に覚えておきましょう。



収益面による計算方法

月商倍率方式による借入限度枠計算は、実際の返済能力の実力を見誤ってしまう可能性があることに注意しましょう

好調な売上を計上していたとしても、事業における出費がかさんでいては意味がありません。

客観的に判断するためには、収入と支出を連動させた見方が必要です。より厳密な借入限度額を知るためには、収益面から導きだす計算方式を重視する方が得策といえます。


■収益面からの借入限度額の計算式


借入限度額=過去3年分の経常利益の平均×50%×”5~10”

▼事例

過去3年間の経常利益の平均が500万円とした場合


500万円×50%ד5~10"=1,250万円~2,500万円

借入限度額は1,250万円~2,500万円と推測できます。

なお減価償却費がある場合、減価償却費も借入限度枠に入れてください。

収益面による借入限度枠の計算メリットは、返済が滞るリスクを極限にまで落とすことができる点にあります。

融資審査の厳しい金融機関は収益面による計算方法で借入限度額を割り出す傾向にあります。

償還年数による計算方法

償還年数とは、借入金を全額返済するために必要とする年数です。

償還年数は借入金を年間返済可能金額(税引き後利益額+減価償却費)で割ることで算出できます。


償還年数から算出した借入限度額=年間返済可能額×10年

担保の有無によって異なりますが、金融機関の融資可能金額の基準は年間返済可能額の10年分とされています。 

企業経営のあり方や取り巻く環境の変化に応じて、この年数は当然変化していくことも覚えておきましょう。

インタレスト・カバレッジ・レシオによる計算方法

インタレス・トカバレッジ・レシオとは借入金の利息を返済する能力を計測する指標です。

証券アナリストが社債発行時や企業の格付けや評価をするときに活用することで有名です。


インタレストカバレッジレシオ =(営業利益+受取利息+受取配当金)÷(支払利息+割引料)

一般的に、割りだされた数値が高いほど余力があり信用力が高いことを表します。

金融機関からの借入限度額算出の観点では、インタレスト・カバレッジ・レシオによる算出方式の優先順位は他の3つと比較して劣っている実情があります。

※他の3つの算出方式の数値を精査すれば、ほとんどの場合で十分であるからといえるため

「インタレスト・カバレッジ・レシオによる算出方法がある」ということを覚えておきましょう。


借入限度額の計算方法を理解するメリット

借入限度額の計算方法を理解するメリットは下記3点です。

  • 経営破綻リスクを事前に防ぐ
  • 借入金を効率よく活用できる
  • 借入限度額を見える化できる

詳しく解説します。

経営破綻リスクの事前防止

とくに収益面からの計算方法を理解すると、返済滞納リスクや経営破綻リスクを事前に回避するための基準を知ることができます。

基準を目安に借入金額を厳密に管理していくことで、会社経営の財政面を健全な状態にすることが可能です。

会社経営の信頼度を獲得するうえでも、借入限度額は常に抑えておきましょう。

借入金を効率よく活用できる

「借入金は悪いもの」というイメージは、企業経営においては一概にあてはまらないと言われています。

借入資金が会社経営に効果をもたらす側面は主に2つあります。

  • 効率のいい借入金の使い方が、事業の拡大に絶大な効果をもたらす。
  • 借入金による資金活用が税務的な恩恵を受ける。

借入金による恩恵だけでなく、その背後にあるリスクにも目を向けなくてはなりません。

借入金のリスク管理という意味でも、借入限度額の各種計算方法を習得・活用することをおすすめします。

借入限度額の見える化

決算書や月末締めにおける負債額や負債比率の把握で十分ともいえますが、借入金がどの程度あるか把握することがおろそかになる可能性があります。

経営者が新たな借入を念頭におき始めた時、借入可能額を把握していなければ経営判断の遅れが生じます。

経営判断の遅れは事業展開の新構想を考えるうえで、結果的に行き詰まりをもたらす致命的なリスクになりかねません。

より迅速な経営判断が求められる昨今において、借入限度額を常に把握しておくことがさまざまな場面で優位に働く傾向が高まっています。

借入限度額の常時見える化が、迅速な経営判断とリスク管理の意識づけをもたらします。


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まとめ

借入限度額の4つの計算方法をご紹介しました。

  • 月商倍率による算出
  • 収益面による算出
  • 償還期間による算出
  • インタレスト・カバレッジ・レシオ

それぞれの借入限度額の計算方法を理解し活用することが、健全経営と迅速な経営判断をもたらします。

財務を苦手とする経営者が多くいらっしゃる実情もありますが、まずは借入限度額の計算方法を覚え、明日からの経営に活かしてみてはいかがでしょうか。




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