
新事業活動促進資金とは?概要や条件、経営革新計画との関係性を解説
コロナ禍で大きな影響を受けた中小企業などは、リスクヘッジのための新規事業の設立や、事業転換を検討している事業者も多いのではないでしょうか。
しかし、新規事業活動や事業転換は、初期投資費用など、大きな負担をともなうため、実行に踏み出せずにいる事業者も多いでしょう。
そのような経営の多角化や事業転換を目指す企業を対象にした支援として、「新事業活動促進資金」があります。
新事業活動促進資金の概要や条件、経営革新計画の作成ポイントについてか解説します。
目次[非表示]
- 1.新事業活動促進資金とは
- 1.1.対象者・対象要件
- 1.2.資金の用途
- 1.3.融資限度額・返済期間
- 1.4.新事業活動促進資金のポイント
- 2.経営革新計画の作成がポイント
- 3.経営革新計画でおさえるべきポイント
- 3.1.新事業活動とは
- 3.2.経営の相当程度の向上とは
- 4.新事業活動促進資金:まとめ
新事業活動促進資金とは
新事業活動促進資金は、経営多角化、事業転換などにより、第二創業を目指す企業を支援するために設けられた、日本政策金融金庫による融資事業です。
新事業活動促進資金は、国民生活事業と中小企業事業に分けられ、それぞれ融資基準などが異なります。
対象者・対象要件
新事業活動促進資金(中小企業事業)は、以下のいずれかの要件を満たした事業者が対象となります。
- 都道府県知事などにより経営革新計画の認定を受けた事業者
- 中小企業等の経営強化に関する基本方針に定める新たな取り組みを実行し、2年間で4%以上の付加価値額の伸び率が見込まれる事業者
- 農商工等連携事業計画の認定を受けた事業者
- 農林水産業支援サービス業を営み、中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律に定める農商工等連携事業をおこない、3年間で2%以上の付加価値額の伸び率が見込まれる事業者
- 経営力向上計画の認定を受けた事業者
- 地域産業資源活用事業計画の認定を受けた事業者
- 1~6に該当せず、新たに第二創業(経営多角化、事業転換)を図る方、または第二創業後おおむね5年以内の事業者
資金の用途
新事業活動促進資金の使い道は、当該事業をおこなうために必要な設備資金および長期運転資金とされ、長期運転資金には、建物等の更新に伴い一時的に施設等を賃借するために必要な資金を含みます。
また、7に該当する事業者については、既存事業の全部または一部を廃止するための資金、およびこれに伴う債務の返済資金を含みます。
融資限度額・返済期間
新事業活動促進資金(中小企業事業)の融資限度額は、直接貸付の場合、7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円)まで、代理貸付の場合、1億2,000万円までとされています。
返済期間は、設備資金の場合、20年以内(うち据置期間2年以内)で、運転資金の場合、7年以内(うち据置期間2年以内)とされています。
【参考】新事業活動促進資金(中小企業事業)|日本政策金融金庫
新事業活動促進資金のポイント
新事業活動促進資金の利率は、基準利率と特別利率に分けられており、一部の対象事業者は「特別利率」での利用が可能です。
特別利率となる対象事業者
- 経営革新計画の認定を受けた事業者
- 農商工等連携事業計画の認定を受けた事業者
- 経営力向上計画の認定を受けた事業者
※利率については日本政策金融金庫公式サイト(中小企業事業:主要利率一覧表)をご参考ください。
経営革新計画の作成がポイント
新事業活動促進資金を特別利率で活用するためには、事業計画書の認定がポイントとなります。
上記であげた計画書の中でも特に、承認されると多様な支援策を受けられる「経営革新計画」について解説します。
経営革新計画とは
中小企業等経営強化法では、中小企業の生産性向上等を図るため、「経営革新計画」や「経営力向上計画」などが規定されています。
中小企業等経営強化法における「経営革新」とは、「事業者が新規事業活動をおこなうことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」と定義されており、事業が新たな事業を計画する際に作成する計画書が、中小企業等経営強化法に基づく「経営革新計画」として認められた場合、さまざまな支援策を受けられます。
経営革新のメリット
事業者が経営革新をおこなうことで、新事業活動促進資金をはじめとする保証・融資の優遇措置のほか、海外展開に伴う資金調達の支援措置、起業支援ファンドからの投資、販路開拓をおこなう場合の支援措置などが受けられます。
経営革新のメリット
- 保証・融資の優遇措置
- 海外展開に伴う資金調達の支援措置
- 起業支援ファンドや中小企業投資教育株式会社からの投資
- 販路開拓をおこなう場合の支援措置
経営革新計画でおさえるべきポイント
「経営革新計画」を通して支援策を受けるためには、承認される計画書を作成しなければなりません。
「経営革新計画」を作成する際は、「新事業活動」と「経営の相当程度の向上」の定義と目的をしっかりと把握する必要があります。
新事業活動とは
新事業活動とは、以下の5つの「新たな取り組み」を指します。
- 新商品の開発または生産
- 新任務の開発または提供
- 商品の新たな生産または販売の方式の導入
- 任務の新たな提供の方式の導入
- 技術に関する研究開発およびその成果の利用そのほかの新たな事業活動
既に相当程度普及している技術や方式などの導入については承認対象外となるため、新事業活動として計画する際は、
- 業種毎に同業の中小企業の当該技術などの導入状況
- 地域性の高いものについては、同一地域における同業他社における当該技術などの導入状況
に注意して判断しましょう。
経営の相当程度の向上とは
経営革新計画として承認されるためには、事業期間の間に「経営の相当程度の向上」が見込まれる計画であることが必要です。
「経営の相当程度の向上」とは、事業期間の3年〜5年で、以下の2つの指標が相当程度向上することをいいます。
- 「付加価値額」または「1人あたりの付加価値額」の伸び率
- 「給与支給総額」の伸び率
「付加価値額」または「1人あたりの付加価値額」の伸び率 |
「給与支給総額」の伸び率 |
|
事業期間が3年の場合 |
9%以上 |
4.5%以上 |
事業期間が4年の場合 |
12%以上 |
6%以上 |
事業期間が5年の場合 |
15%以上 |
7.5%以上 |
「経営目標の設定」は、経営向上に関する目標を設定することにより、事業者が、経営目標を達成するための経営努力をおこなうことが狙いとされており、認定をおこなった国または都道府県が、経営革新計画実施中にフォローアップ調査をおこない、必要に応じてアドバイスなどをおこないます。
また、経営革新計画終了時には、成果の状況を確認し、今後の経営革新施策に反映させるため、終了企業調査がおこなわれます。
新事業活動促進資金:まとめ
経営革新計画は、承認されるとさまざまな支援策を受けられるだけでなく、作成することによって、事業者の経営方針や目標が明確となるため、効率的な事業運営をおこなううえでの指針としても役割を果たします。
しかし経営革新計画は、要点をおさえ適切に作成しなければ認定されず、新事業活動促進資金をはじめとする支援策は受けられません。
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