労働生産性とは?計算方法のほか、中小企業が意識すべきポイントを解説
自社の経営状態を把握するために、さまざまな方法がありますが、中でも「労働生産性」は経営状態を確認するひとつの指標です。
労働生産性の改善を怠ると、経営状態の悪化に繋がるほど、労働生産性の指標は重要であり、企業は労働生産性の向上に努めなければなりません。
労働生産性の重要性や企業が意識するポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.労働生産性とは
- 2.労働生産性が重要な理由
- 2.1.労働関系助成金の割増
- 2.2.企業の利益増加
- 3.労働生産性の適正値とは
- 3.1.前年比と比較する
- 4.労働生産性を改善するためには
- 5.バックオフィスサポートの活用で業務効率化を図りましょう
労働生産性とは
労働生産性とは、企業の生産性を把握する際に用いられる指標のひとつです。
労働生産性における「生産性」とは、事業に必要な投入資源(労働者や労働時間など)に対する、産出量(付加価値額や生産量などの成果量)の割合を示し、「労働生産性」は、一定時間あるいは労働者1人あたりの生産量(成果量)を表します。
労働生産性の種類
労働生産性は、「付加価値労働生産性」と「物的労働生産性」に分けられます。
企業が労働生産性の数値を求める際は、基本的に粗利益と同異議として扱われる、付加価値額(付加価値労働生産性)が用いられます。
付加価値労働生産性
付加価値労働生産性とは、労働者が生み出す「成果」の対象を、「付加価値額」としたものであり、労働者1人あたりの付加価値額(粗利額)を求める場合に用いられます。
「付加価値額」とは、企業が事業活動によって生み出した価値を数値で表したもので、総生産額から、原材料などの原価を除いて求められます。
付加価値額の計算方法は、さまざまなものがありますが、簡易的な計算式では、以下の式で求められます。
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費 |
付加価値労働生産性は以下の計算式によって算出します。
付加価値労働生産性=付加価値額÷労働量 |
物的労働生産性
物的労働生産性とは、労働者が生み出す「成果」の対象を、「生産量」または「販売金額」としたもので、労働者1人あたりの物やサービスの生産量、販売量を求める場合に用いられます。
物的労働生産性は以下の計算式によって求められます。
物的労働生産性=(生産量または販売金額)÷労働量 |
労働生産性が重要な理由
労働生産性の向上は、今後も深刻化が予想される「少子高齢化」に対処するために必要であるだけでなく、労働生産性の向上を図ることで得られるメリットもあります。
労働関系助成金の割増
助成金を申請する企業の取り組みにおいて、厚生労働省が定める「生産性要件」を満たしている場合、労働関係助成金の割増支援が受けられます。
対象となる助成金には以下のものが含まれます。(※一部抜粋)
●再就職支援関係
・労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)
●転職・再就職拡大支援関係
・中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)
●雇入れ関係
・地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
●雇用環境の整備関係
・人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース、介護福祉機器助成コース、人事評価改善等助成コース、若年者および女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)、作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)、外国人労働者就労環境整備助成コース、テレワークコース)
・65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢者無期雇用転換コース)
●仕事と家庭の両立関係
・両立支援等助成金(出生時両立支援コース、介護離職防止支援コース(※)、育児休業等支援コース(※)、不妊治療両立支援コース)
(※)新型コロナウイルス感染症対応特例は除きます。
【参考】労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます|厚生労働省
企業の利益増加
労働生産性を向上することにより、業務の効率化が促進され、残業代など、投入資源コストがおさえられます。投入資源コストの割合を減らすことで、利益が増加し、企業の良好な経営に大きな影響を与えます。
また、労働生産性の向上は、社員の「ワーク・ライフバランス」の確保や、仕事に対するモチベーション維持へも繋がるため、人材の流出を防ぎ、良好な職場環境が形成されることで、結果的に企業の利益増加へとつながります。
このように、労働生産性は多方面に影響を与える重要な指標です。
反対に労働生産性の向上を怠ると、マイナスの事態を引き起こしてしまうため、疎かにしないようにしましょう。
労働生産性の適正値とは
労働生産性の数値が、どれくらいであれば適正といえるのか、企業の規模や業種などによって、労働生産性の数値は異なるため、適正値および基準値と比較することは難しいですが、自社の過去の数値や、競合他社の数値と比較することで、労働生産性の推移や比較が判断しやすくなります。
前年比と比較する
労働生産性の数値を、前年または前期と比較してみましょう。
数値が上がっていれば、経営状況は良好であると判断できます。
また、自社の事業に近い競合他社と比較することも、自社の状況を判断するひとつの方法といえるでしょう。
労働生産性を改善するためには
労働生産性の数値が思わしくない、あるいは下降気味である場合は、直ちに労働生産性の向上に努めなければなりません。
労働生産性の向上を怠ると、最悪の場合、倒産に至ることもあるため、必要に応じて改善しましょう。
業務内容の可視化
労働生産性の改善に努めるためには、まず、自社の現状を把握することです。
業務内容をリスト化したり、残業時間をグラフ化したりすることで、無駄な業務の洗い出しがしやすくなります。
業務内容を可視化し、「適切な人材が適切な箇所にいるか」に焦点をあてることで、業務分担など、適切な人材配置の改善がしやすくなり、長時間労働の削減や、作業効率の向上につながります。
経営計画の作成
労働生産性の改善には、「経営計画」の作成も有効的です。
経営計画を作成することで、事業の方向性や目的が明確となり、効率的な業務遂行をおこないやすくなります。
また、「経営計画」および、企業のゴールを定めることで、社員全体の団結力も高まり、ひとりひとりのモチベーションも高まります。
労働生産性の向上には、社員ひとりひとりの意欲やモチベーションが大きくかかわっており、質の良い業務パフォーマンスは、業務効率化において大変重要です。
また、「経営革新計画」などを作成し、申請・承認されることで、税制優遇をはじめ、さまざまな支援策を受けられます。
労働生産性の向上を目指し、中小企業経営を支える支援策を利用するためにも、経営計画を作成しましょう。
社員教育
労働生産性の向上および、質の良い業務パフォーマンスをおこなうためには、社員それぞれの能力を最大限に発揮する必要があります。
中小企業の多くは、適材適所がうまく実施されておらず、社員のもつ能力が有効に発揮されていない状況が多くみられ、社員教育に力を入れていない企業も多いです。
社員のモチベーションの維持と、優秀な人材の育成のためには「社員教育」は必要不可欠です。特に、管理職などリーダーの役割をもつ社員は、役職手当などの人件費がかかるため、質の良い業務をおこなってもらう必要があります。
個人のスキルアップや、リーダーとしての役割を発揮させるために、「社員教育」に力を入れ、労働生産性向上につなげましょう。
業務の自動化
労働生産性を向上させるためには、業務効率化の促進が重要です。
機械やシステム導入を積極的に取り入れている中小企業は少なく、非効率な業務が発生している企業は多いです。
特に、人材不足により1人あたりの業務量が増え、長時間労働が多くなっている企業などは、可能な限り機械やシステムを導入し、業務自動化の検討をおすすめします。
また、機械やシステム導入のほかにも、一部の業務をアウトソーシング(外注)する方法や、特に時間がかかる業務や複雑な業務を、専門家に委託するなど、業務効率化の方法は多数あります。
働き方改革により、中小企業における長時間労働の規制も年々厳しくなっており、割増賃金率も改正されました。非効率な長時間労働を多く発生させている企業は、今後ますます人件費が圧迫することが予想され、経営悪化に陥ります。
そのようなリスクを回避するためにも、労働生産性の向上および業務効率化を怠らず、改善に努めましょう。
バックオフィスサポートの活用で業務効率化を図りましょう
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