助成金の活用には就業規則の見直しが必要?中小企業が見落としがちなポイントとは
助成金の活用は、新規事業や職場改善への取り組みを積極的におこないたい企業にとって、有効的な手段のひとつです。
助成金にはさまざまな種類がありますが、多くの助成金制度では「就業規則の作成・提出」が申請要件となっています。
助成金申請における就業規則の見直しポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.企業が助成金を活用すべき理由・助成金のメリット
- 1.1. 運転資金として事業の成長につなげられる
- 1.2.会社の制度を整えられる
- 1.3.原則返済の義務がない
- 1.4.社会的信頼につながる
- 2.助成金と就業規則の関係
- 2.1.企業が助成金を活用するためにおこなうべきこと
- 2.2.就業規則の見直すべきポイント
- 3.就業規則の作成・変更および申請時の提出が必要な助成金
- 3.1.キャリアアップ助成金(正社員コース)
- 3.2.キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)
- 3.3.キャリアアップ助成金(賞与・退職金導入コース)
- 3.4. 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
- 3.5.両立支援等助成金(出生児両立支援コース:子育てパパ支援助成金)
- 4.就業規則の提出のみが必要な助成金
- 5.就業規則の見直しはF&M Clubにおまかせ
- 6.まとめ
企業が助成金を活用すべき理由・助成金のメリット
国による助成金制度の活用は、コロナ禍で経済的に打撃を受けた企業や、新規事業に取り組みたい企業など、さまざまな理由・背景により経営改善をおこないたい企業にとって有効的な支援制度です。
助成金の活用には主に以下のようなメリットがあります。
- 運転資金として事業の成長につなげられる
- 会社の制度を整えられる
- 原則返済の義務がない
- 社会的信頼につながる
運転資金として事業の成長につなげられる
コロナ禍などにより経済的に打撃を受けた企業は、現状を打破するため「新規事業への取り組み」や「事業転換」などを検討する場合も多いでしょう。
しかし、多くの企業が新規事業に必要な「資金調達」ができず、諦めてしまう企業も多いと思います。
そのような企業にとって助成金制度は、受給要件や条件を満たした場合に支給され、原則返済義務もないため、少ないリスクで運転資金としての資金調達が可能です。
低リスクで活用できる助成金は、落ち込んだ経営状況を復活させ、事業の成長につなげるための有効的手段といえます。
会社の制度を整えられる
助成金には、さまざまな種類があり、助成金によって受給要件・条件は異なりますが、助成金の種類によっては「就業規則の見直し・作成」や「賃金台帳の管理」などが要件とされている場合もあります。
そのため、助成金申請に必要な就業規則の見直しなどをおこなうことで、社内の労務管理状況の把握および整備が可能です。
原則返済の義務がない
助成金制度には、原則返済義務がありません。
企業における資金調達方法には、民間金融期間からの融資なども方法のひとつとしてありますが、当然、返済期日と利子の支払いが生じます。
そのため、原則返済義務がない助成金制度は、資金調達方法として大きなメリットです。
社会的信頼につながる
助成金を活用できる企業は、要件や条件を満たした企業、つまり「社内整備が整っており、事業計画が明確で将来性がある企業」であると認められた企業です。
そのため、助成金活用の実績は企業の社会的信頼を高め、金融機関からの融資審査や、採用活動における企業のイメージなど、さまざまな場面において役立ちます。
助成金と就業規則の関係
先述したように、助成金の種類によっては、申請時に就業規則の作成・変更・提出が必要となる場合があります。
企業が助成金を活用するためにおこなうべきこと
常時10人以上の従業員を使用する場合、原則として就業規則の作成は企業の義務となっていますが、就業規則の作成・変更には、時間と手間がかかります。
また、基本的に「就業規則の作成・変更」→「条件に応じた取り組み」が完了したことが確認されたうえで助成金の支給がおこなわれるため、助成金の種類によっては、助成金申請から受給までに長く時間がかかる場合もあります。
そのため、助成金の情報をいち早く収集し、できる限り早く助成金を受け取るためにも、日頃から就業規則の見直しと改善をおこない、整備することが大切です。
就業規則の見直すべきポイント
就業規則の見直しをおこなう際は、助成金申請の要件によって、主に以下のような点について見直しおよび作成をおこないます。
- 有期雇用から無期雇用へ転換する際の条件規定
- 労働時間数(時間外労働数)の規定
- 正社員・有期雇用従業員の諸手当(ボーナスや住宅手当など)の規定
- 健康診断の規定
- 正社員・有期雇用従業員の賃金規定
- 特別休暇規定
- テレワーク勤務規定
- 雇用管理制度規定
- 育児・介護休業規定
就業規則の作成・変更および申請時の提出が必要な助成金
助成金の申請時に就業規則の作成・変更および提出が必要である、主な助成金について紹介します。
キャリアアップ助成金(正社員コース)
キャリアアップ助成金(正社員コース)は、就業規則または労働協約その他これに準ずるものに規定した制度に基づき「有期雇用従業員などを正社員化」した場合に、助成金が支給される制度です。
就業規則には「有期雇用契約あるいは無期雇用契約従業員から正社員への転換規定」について、記載されている必要があります。
有期雇用契約あるいは無期雇用契約から正社員への転換について、制度はあるものの、就業規則に記載されていない場合や、そもそも制度がなく、新たに制度を設ける場合は、就業規則を作成(追記)しなければなりません。
正社員への転換規定には、主に「転換条件」「転換時期」「手続き方法」などを明記します。
キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)
キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)は、就業規則または労働協約に規定した制度に基づき「雇用するすべての有期雇用従業員などに関し、正社員共通の職務などに応じた賃金規定を新たに作成」した場合に、助成金が支給される制度です。
就業規則には、有期契約従業員などに関し、正社員と共通の職務などに応じた賃金規定または賃金テーブルなどが記載されている必要があります。
有期契約従業員と正社員のそれぞれの賃金規定が既に作成されている場合は、共通化して作成することがポイントです。
キャリアアップ助成金(賞与・退職金導入コース)
キャリアアップ助成金(賞与・退職金導入コース)は、就業規則または労働協約に規定した制度に基づき「すべての有期雇用従業員などに関し、賞与・退職金制度を新たに設け、支給または積立てを実施」した場合に、助成金が支給される制度です。
就業規則には、有期雇用従業員などに関する、賞与・退職金制度が記載されている必要があります。
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)では「年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則を整備している」ことが、対象事業主の要件のひとつとされています。
助成対象となる取り組みのひとつに「就業規則・労使協定の作成・変更」が定められており、成果目標に「年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入すること」を設定する場合は、就業規則に「年次有給休暇の取得に関する規定」が記載されている必要があります。
※成果目標が「年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入すること」の場合「成果目標②」が該当します。
【参考】令和5年度「働き方改革推進支援助成金」|厚生労働省
両立支援等助成金(出生児両立支援コース:子育てパパ支援助成金)
両立支援助成金(出生児両立支援コース:子育てパパ支援助成金)就業規則に関するおもな要件は「第1種(男性労働者の出生時育児休業取得)」と「第2種(男性労働者の育児休業取得率上昇)」の2つあります。
第1種(男性労働者の出生時育児休業取得)では、育児休業取得者の業務を代替する従業員の、業務見直しに関連する、就業規則などの規定等を策定し、規定に基づいた業務体制の整備をしていることが要件です。
第2種(男性労働者の育児休業取得率上昇)では、育児休業取得者の業務を代替する従業員の業務見直しに関連する、就業規則などの規定等を策定し、規定に基づいた業務体制の整備をしていることが要件です。
就業規則の提出のみが必要な助成金
助成金の申請時に就業規則の提出のみが必要である、主な助成金について紹介します。
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
キャリアアップ助成金(賃金規定等定コース)は、就業規則などで、有期雇用従業員などの基本給の賃金規定を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成金が支給される制度です。
助成金申請時に、3%以上増額(改定)された賃金規定(就業規則)の提出が必要です。
なお、賃金規定(就業規則)を改定ではなく新たに作成した場合においても、その内容が、過去3か月の賃金実態からみて3%以上増額していることが確認できれば助成対象となります。
就業規則の見直しはF&M Clubにおまかせ
助成金の申請には、申請要件に応じてさまざまな就業規則の見直しおよび作成をおこなわなければなりません。
しかし就業規則における「賃金」や「有期雇用」、「休日」などに関する規定は、従業員との労働トラブルを引き起こしやすい項目であり、また、慎重に定めないと、企業の経営にマイナスとなる場合もあります。
そのため、自社の就業規則が正しい内容となっているかを確認するために、プロによる支援サービスの活用がおすすめです。
F&M Clubでは、就業規則の見直しや助成金活用に関するさまざまな支援サポートを提供しており、「無料会員登録」により「就業規則の無料診断」がおこなえます。
まずは、自社の就業規則が正しく作成されているかどうか、確認しましょう。
※まかせて規程管理はエフアンドエム社会保険労務士法人(法人番号第2712006号)をはじめとする、株式会社エフアンドエムが紹介する社会保険労務士が提供します。
まとめ
助成金制度には目的に合わせてさまざまな種類がありますが、働き方改革など、雇用制度の変化に応じて、助成金の内容も日々変化しています。
助成金によっては、申請時に、就業規則の作成や提出が必要となるため、常に新しい助成金制度の情報を取得し、迅速な対応が取れるよう、日頃から就業規則の整備をおこないましょう。