ビッグモーターに見る。中小企業でも陥りやすい経営リスク5つのポイント
中古車販売大手『ビッグモーター』における不正問題が注目されています。急成長してきた同社の不祥事は業界全体に対するイメージダウンなどの影響が懸念されています。
本記事では同社の不祥事を教訓に、自社で起こり得る5つの経営リスクとその対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.ビッグモーター不正問題とは
- 2.ビッグモーターのサプライチェーン企業(取引企業)の特徴
- 3.ビッグモーター問題が及ぼす影響
- 4.ビッグモーター問題に見る5大経営リスク
- 4.1.従業員の不正リスク
- 4.2.社会的信用リスク(顧客離れリスク)
- 4.3.訴訟リスク
- 4.4.信用リスク(資金繰りリスク)
- 4.5.経営陣の暴走リスク
- 5.不正を起こさない・起こさせない会社は就業規程からはじめる
- 5.1.社内規律のスタートは就業規則
- 5.2.中小企業もパワハラ対策が義務化
- 5.3.助成金の申請時には就業規則を見直し
- 5.4.就業規則の見直しは専門家を活用
- 5.5.経営者は社外の気軽な相談相手を活用
- 6.就業規則の見直しや経営の悩みはエフアンドエムにご相談ください
ビッグモーター不正問題とは
ビッグモーターにおける不正問題とは、同社の修理部門へ入庫された自動車に社員が故意に傷をつける、修理が不要な部分についても勝手に修理するなどにより、修理代金を自動車保険会社へ不正に請求していたとされている問題です。
2023年6月26日に発表された同社の第三者調査委員会による調査においては、サンプル件数2,717件のうち1,198件で不正が発見されました。不正をおこなった店舗は全国的であるため、全社的に不正行為をおこなっていた可能性が高いといわれています。
なおビッグモーターがおこなった不正請求の金額については確定しておらず、多額の返還金が発生する可能性があると推測されています。
【引用】調査報告書|株式会社ビッグモーター特別調査委員会
上記の調査報告書においては、今回の不正問題の原因として以下の点をあげています。
- 過酷な目標値設定と達成への過大なプレッシャー
- 法令や社会的な常識を軽視する雰囲気
- 人事権を濫用した経営陣の暴走と、それを抑制するはずの取締役会の機能不全
ビッグモーターのサプライチェーン企業(取引企業)の特徴
ビッグモーターとの取引が大きい企業について、民間信用調査会社である株式会社帝国テータバンクが調査しています。
この調査によると、ビッグモーターとの直接・間接取引がある企業数は全国で410社、ビッグモーターからの発注金額は224億円に上ると推計しています。
主な取引企業を業種別でみると、本業に関係する自動車部品関連業者のほか、全国的な店舗展開に伴い建築関連業者が多いことが特徴です。
ビッグモーターとの取引企業の業種別社数(上位)
業種 |
社数 |
自動車部分品・付属品卸売業 |
40社 |
建築業 |
83社 |
(建築工事業) |
(22社) |
(内装工事業) |
(20社) |
(土木工事業) |
(13社) |
(鉄骨工事業) |
(11社) |
(とび工事業) |
(9社) |
(金属製建具工事業) |
(8社) |
一般貨物自動車運送業 |
13社 |
中古車小売業 |
12社 |
受託開発ソフトウェア業 |
12社 |
【引用】ビッグモーターのサプライチェーン調査|(株)帝国データバンク
ビッグモーター問題が及ぼす影響
ビッグモーターの不正問題の影響として「同業者への風評被害」「保険会社への不信感」「市場全体への消費者の忌避感」などがあげられています。
-
ほかの自動車修理・整備業者への風評被害
消費者が『同業者も同じような不正をしているのでは』といった疑念を抱くことが懸念されています。 -
自動車保険会社への不信感
ビッグモーターと特定の大手自動車保険会社との関係が過剰ではないかと報道されています。消費者からみると、ビッグモーターの不正を自動車保険会社が知っていたのではないか、といった不信感を抱く可能性が指摘されています。 -
中古車市場全体への消費者の忌避感の発生
業界最大手企業の不正問題であるため『他社においても類似の不正行為が横行していないか』と消費者が中古車市場へ忌避感を抱く可能性が指摘されています。
ビッグモーター問題に見る5大経営リスク
ビッグモーター不正問題においては、以下の経営上の5つの大きなリスクが顕在化しています。これらは中小企業であっても起こる可能性があるリスクです。
- 従業員の不正リスク
- 顧客離れリスク
- 訴訟リスク
- 信用リスク
-
経営陣の暴走リスク
従業員の不正リスク
従業員が個人的な利益や成績達成のために不正をおこなうリスクです。例えば、従業員が私的な費用を経費として会社に請求するなどです。また従業員が特定の取引先と親密すぎる関係となった場合、割高な取引をおこなうなど会社全体に不利益が発生することがあります。
社会的信用リスク(顧客離れリスク)
社会的に非難される問題が顕在化した場合、顧客が急激に離れます。また取引先からは、不正問題を引き起こした企業との取引を見直すことも想定されます。このため企業の存続に大きくかかわることとなります。
訴訟リスク
消費者などから損害賠償請求の訴訟を提起される可能性があります。また、経営陣が従業員に過度のプレッシャーを与えていた場合、従業員が会社をパワーハラスメントで訴えることもあります。
信用リスク(資金繰りリスク)
社会的な問題を引き起こした企業に対しては金融機関が融資を断ることがあります。
顧客離れによる売上減少と同時に融資が受けられない場合、資金繰りが急激に悪化する可能性が高まります。
経営陣の暴走リスク
従業員が経営陣へ自由に意見を言いにくい雰囲気の企業においては、経営陣の違法行為やハラスメント行為を止める人がいなくなってしまいます。経営者は自社の行動に問題がないかを気軽に相談できる、社外の相談相手がいることが望ましいです。
不正を起こさない・起こさせない会社は就業規程からはじめる
不正行為を防止するためには、社内のルール作りと従業員がルールを守る意識が必要です。
職場のルールと違反時の懲戒基準、懲戒内容を明確とし、経営陣が社外で気軽に相談できる相手をもつことが、真面目な従業員と会社を守ることにつながります。
社内規律のスタートは就業規則
基本的なルールは就業規則において定めます。
従業員数10名以上の事業所は、就業規則を作成して届出する義務がありますが、義務がない事業所においても就業規則の作成が望ましいです。
就業規則は一般的な定型文をそのまま使用するのではなく、自社にあった内容を盛り込みます。特に懲戒基準と懲戒処分の内容は明確としておくことで、労務トラブルの未然防止に役立ちます。懲戒基準が不明確である場合、不正行為をおこなった従業員への懲戒が難しくなるためです。
中小企業もパワハラ対策が義務化
中小企業においてもパワハラ防止措置を講じることが事業主の義務とされました。2022年4月1日から中小企業においても適用されています。就業規則などに明記することで従業員へ周知徹底することがおすすめです。
【引用】パワハラ防止措置義務化チラシ|厚生労働省
助成金の申請時には就業規則を見直し
また助成金の申請時に、法改正に適合した就業規則を求められることが多くあります。
助成金は、制度の要件と自社における賃上げや働き方改革における社内の対応が合致してれば受給できる可能性が高い支援制度です。就業規則が新しい労働法に合っていない場合は不支給とされる可能性があるため、申請前に就業規則を見直ししましょう。
就業規則の見直しは専門家を活用
就業規則は、最低賃金の見直しや労働法の改正などにあわせて見直しをおこないます。就業規則を見直す時は専門家を活用することで、次のメリットがあります。
- 毎年変わる最低賃金や近年の相次ぐ労働法の改正に合っているかを確認することができる
- 賃上げや多様な人材採用などにおいて、自社で受給できる可能性がある助成金制度について相談することができる
- 労務トラブルに備えることができる文言や内容となっているか、専門家の意見を得ることができる
経営者は社外の気軽な相談相手を活用
ビッグモーターの不正問題の原因として、懲戒処分の乱発があると指摘されています。ルールを守る意識は経営者自身も対象です。経営者の悩み相談は社内では相手が限られることが多いため、社外に気軽に相談できる専門家を見つけておきましょう。
就業規則の見直しや経営の悩みはエフアンドエムにご相談ください
5大経営リスクから会社を守るためには、就業規則をはじめとする社内体制を整える必要があると説明しました。
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