社長を引き継ぐときにやっておくべき準備とは
事業承継やM&Aなどにより社長の世代交代が進んでいるといわれています。社長交代時は、株式や税金にかかわる問題に集中しがちですが、その他の問題において思わぬリスクが顕在化することもあります。
本記事では、社長を引き継ぐときに「注意しておきたいリスク」とその対策について、わかりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.社長を引き継ぐ準備は5年以上⁉
- 2.見落としがち⁉社長を引き継ぐときに起こるトラブル4選!
- 2.1.ベテラン社員とうまくいかない!
- 2.2.借入金の個人保証を求められた!
- 2.3.社員の退職金が未払い?残業代が違法?
- 2.4.利益が出ているのにお金がない?
- 3.税金や株式だけではない!事業承継時のトラブルを防ぐポイント6つ
- 3.1.経営方針・経営計画を立てる
- 3.2.古い就業規則を見直す
- 3.3.人事考課制度、教育訓練制度を見直す
- 3.4.借入金の個人保証を確認する
- 3.5.資金繰りを把握する
- 3.6.信頼できる相談相手を見つける
- 4.事業承継で後悔しないためにはF&M Clubへご相談ください
社長を引き継ぐ準備は5年以上⁉
経済産業省が発表した『事業承継ガイドライン』において、事業承継に必要な期間は3年から10年であるとされています。
日本商工会議所がおこなったアンケートにおいても、事業承継完了までに「3年以上」必要であるとする回答が54.2%を占めており、社長交代時には、長期にわたる準備が必要とみられています。
【引用】「事業承継に関する実態アンケート」調査結果(2024年3月22日)|日本商工会議所
また、事業承継ガイドラインによると、社長を引き継ぐ時期として「ちょうどよい時期だった」と評価できる年齢は「40代前半頃」とされており、現社長・新社長ともに、早くから社長引き継ぎの準備をしておくことが大切であるといえます。
見落としがち⁉社長を引き継ぐときに起こるトラブル4選!
前社長からみた場合、新社長へ経営を引き継ぐときの主な課題は「後継者の経営能力」(28.0%)、「相続税・贈与税」(22.9%)、「株式・資産の買い取り」(22.5%)などです。
事業承継は、後継者の能力や、株式・税金問題などに注目しがちですが、そのほかの点にも注意を払わないと、思わぬトラブルが発生することもあります。
社長を引き継いだときに起こりやすい主なトラブルは次の4つです。
ベテラン社員とうまくいかない!
前社長時代から会社を支えてきたベテラン社員と、新社長との間で軋轢が生じてしまう場合があります。
具体的には「マニュアル等が整備されておらず、独断による新しいやり方で社内の雰囲気が悪くなった」などです。
借入金の個人保証を求められた!
社長交代に伴い、新社長に融資の連帯保証をしてほしいと金融機関から求められることがあります。
中小企業庁の資料によると、社長が交代したときに新社長が連帯保証を求められるケースは40%、前社長のみとするケースは40%となっています。
【引用】中小企業政策審議会金融小委員会(第13回)(2024年10月8日)事務局説明資料|中小企業庁
社員の退職金が未払い?残業代が違法?
「退職社員の退職金を支払っていなかった」「残業代が最低賃金以下で違法となっていた」など、労務面におけるコンプライアンス違反が判明することもあります。
就業規則や給与規定などの諸規定が、最新の労働法に則していない場合、このようなトラブルが起きやすくなります。
利益が出ているのにお金がない?
「業績が黒字状態であると安心して社長を引き継いだものの、資金繰りで苦労した」という場合もあります。
たとえ利益が出ていても、会社にお金があるとは限りません。「黒字状態」と「お金が残ること」はイコールではないためです。
税金や株式だけではない!事業承継時のトラブルを防ぐポイント6つ
社長交代を契機に労務トラブルなどの問題が顕在化すると、経営に思わぬ影響が出ることとなります。
社長を引き継ぐときにトラブルを防ぐためのポイントは、次の6つです。
経営方針・経営計画を立てる
社長就任後の早い段階で、新社長としての考え方や方向性を定め、社内へ周知しましょう。社員や取引先は新社長の考え方や方針について高い関心をもっています。
中小企業庁の資料においても、社長を引き継いだ後に意識した取り組みとして、「販売先の開拓」(44.9%)の次に「経営理念の再構築」(33.5%)があげられています。
新社長としての経営方針や取り組み内容を社内外に説明できるように、経営理念や経営方針を見直し、新しい経営計画の作成などをおこないます。
古い就業規則を見直す
就業規則を数年間にわたり改定していない場合、早めに見直しましょう。労務トラブルを防止する要のひとつが就業規則であるためです。
また就業規則の見直しは、助成金受給などにもかかわる場合もあるため、必須ともいえます。
厚生労働省が管轄する賃上げや採用を支援する助成金の中には、就業規則の提出を求められる場合もあるため、就業規則が最新の労働法に則していない場合は、助成金が不支給となる可能性も高くなります。
就業規則以外にも下記の点を見直すことがおすすめです。
- マイカー通勤規定など労務管理のルールが整備されているか
- ハラスメント防止措置などのルールが整備されているか
- 各雇用形態の社員について、最低賃金額以上の給与水準となっているか
- 賃金水準は地域・同業者と比べて適切であるか
- リモートワークなどの勤務規定が実態と合っているか
人事考課制度、教育訓練制度を見直す
社長を引き継いだときは、特にベテラン社員との良好な関係の構築、若手社員の育成が課題となります。
社員のモチベーションを向上させ、社員定着率を向上させるための主な取り組み例は、次のとおりです。
- ベテラン社員のノウハウを評価できる人事考課を取り入れる
- 若手社員の成長を支援する教育訓練制度を充実させる
借入金の個人保証を確認する
会社の借入金は、金額や返済条件だけでなく、社長の連帯保証や不動産担保の提供などの条件についても確認しておきましょう。
前社長が金融機関からの借入金を連帯保証していることは珍しくありません。自宅を金融機関へ担保提供していることもあるため、社長を引き継いだときに担保提供を求められることも考えられます。
資金繰りを把握する
社長を引き継いだ後、すぐにでも把握すべき事項のひとつが資金繰りです。「お金の管理は社長と経理だけがやっていたから、よくわからない」という場合もあるでしょう。
資金繰りとは、お金の出入りを予測し、資金不足となる前にお金を確保することです。支払いに対し、十分なお金がないと、企業を存続させることができません。
資金繰りを管理するためには、資金繰り表の作成が有効です。資金繰り表の作成に不慣れな場合は顧問税理士など詳しい専門家を活用しましょう。
信頼できる相談相手を見つける
中小企業の社長には、会社経営をおこなっていくうえでさまざまな悩みがあるでしょう。しかし、社内に相談できる相手が少ない場合もあるかもしれません。そのような場合、税理士、弁護士、社会保険労務士など、さまざまな分野において相談できる相手がいると心強いです。
前社長から相談相手を引き継ぐことが多いと思われますが、自分自身の経営方針と専門家の姿勢が異なることもあるため、自身が相談したい、相談しやすいと思える専門家を探すことがおすすめです。
事業承継で後悔しないためにはF&M Clubへご相談ください
社長の引き継ぎは株式・税金・不動産・金融など多方面について、十分な準備が必要です。
多忙な中ですべてを自身でおこなうことは難しいため、社外の専門家を活用することがおすすめです。
しかし、専門家への相談は「専門分野以外についてはアドバイスしてもらえない」場合が多く、満足できない場合もあるでしょう。
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