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運転資金の考え方とは?計算方法と安定した資金確保のポイントを解説

経営者の中には、「金融機関から融資を受けるのだから、資金使途は何であってもいいのでは?」とお考えの方がいるかもしれません。

銀行など市中金融機関は、資金使途をもとに企業の決算状況や見通しなどを加味して審査します。そのため、資金使途が曖昧であると審査に通らない可能性が高いです。

本記事では、資金使途のひとつである運転資金について解説します。運転資金の種類や計算方法、資金不足に陥らないための注意点についても理解を深めてください。



目次[非表示]

  1. 1.運転資金とその種類
    1. 1.1.運転資金とは?
    2. 1.2.経常運転資金
    3. 1.3.増加運転資金
    4. 1.4.減少運転資金
    5. 1.5.季節運転資金
    6. 1.6.その他の運転資金
  2. 2.運転資金の計算方法
    1. 2.1.各回転期間の算出
      1. 2.1.1.売上債権
      2. 2.1.2.棚卸資産
      3. 2.1.3.仕入債務
    2. 2.2.月当たりの売上、仕入より運転資金を算出
  3. 3.安定した運転資金を確保するためには
    1. 3.1.売上債権回転期間の短縮
    2. 3.2.在庫の減少
    3. 3.3.早めの資金調達を心がける
  4. 4.F&M Clubを利用した資金繰り改善事例
  5. 5.まとめ

運転資金とその種類


企業の資金ニーズには、工場の建設や機械の購入といった「設備資金」と、企業が運営するために必要な「運転資金」の2つがあります。

一口に運転資金といっても種類はさまざまです。まずは、運転資金の定義や種類について解説します。


運転資金とは?

運転資金とは、企業が事業を運営するために必要な資金です。例えば、従業員の給料や光熱費、家賃や広告宣伝費、仕入資金、金融機関への返済資金などがあります。

経常運転資金

企業が事業運営をおこなうにあたっての資金です。企業間の取引は、わが国の商習慣として一般的に「掛け」でおこなわれます。「掛け」とは、代金後払いのことで、売上を計上しても現金が入金されるのが通常1~2ヶ月後に設定されるため、タイムラグが発生します。しかしながら、給与や光熱費等の毎月支払う費用があるため、売上が入金される前に資金調達しなければなりません。

このように、常に必要な運転資金を「経常運転資金」といいます。


増加運転資金

売上が増加した際、比例して仕入や人件費も増加します。経常運転資金と同じく、売上の入金が1~2ヶ月先であるため、売上が増加した分、運転資金も増えるでしょう。これを「増加運転資金」といいます。

注意点として、急激な売上の増加は仕入資金等の費用も急激に増えるため、手持ち資金では支払いが追いつかなくなるかもしれません。費用等の支払いをできなくなり倒産するといった、いわゆる「黒字倒産」に陥る恐れもあります。

売上の増加が見込まれる場合、あらかじめ運転資金の調達を図りましょう。


減少運転資金

売上が減少しても人件費や光熱費、広告宣伝費等いわゆる「固定費」は必要です。固定費の支払原資は売上であるため、売上が減少した際に固定費支払いに充当する資金「減少運転資金」といいます。

季節運転資金

「季節運転資金」とは、文字通り、決まった季節に需要が発生する運転資金です。

アパレル産業における夏物・冬物衣料の仕入資金、またスポーツ用品産業でのウィンタースポーツ関連用品やマリンスポーツ関連商品の仕入資金などが季節運転資金に該当します。

その他の運転資金

その他の運転資金とは、販売先や仕入先の支払条件が変わった時に発生する運転資金です。特に販売先の売上債権(売掛金、受取手形)が長期化すれば、現金入金の日数が今まで以上に余分にかかるため、売上が横ばいであっても運転資金が発生します。




運転資金の計算方法

運転資金は通常、下記の式で算出できます。


運転資金=売上債権(受取手形+売掛金)+商品-仕入債務(支払手形+買掛金)


運転資金の金額は計算できますが、どのくらいの期間の月商が運転資金として必要かわかりません。

ここでは、回転期間について説明します。


各回転期間の算出

回転期間とは、どのくらいの期間で回収(または支払い)するか、棚卸資産の場合は仕入れてから販売されるまでの期間を示します。回転期間は日単位や月単位で表されますが、ここでは月単位で説明します。


売上債権

売上債権とは、受取手形と売掛金をいい、また売上債権回転期間は売上が回収されるまでの期間をいいます。

売上債権回転期間(月数)は、下記で求められます。


売上債権回転期間(月数)=売上債権(受取手形+売掛金)÷(売上高÷12)


過去の決算期ごとに売上債権回転期間を算出し、時系列に比較することをおすすめします。回転期間がどのように変化しているのかを経営者自身が認識できるためです。

例えば、数字が大きくなっている期は売上の現金回収が長期化しているため、経営者は改善が必要と判断できるでしょう。


棚卸資産

棚卸資産は、商品の在庫です。棚卸資産回転期間とは、仕入れた商品が売れるまでの期間をいいます。

棚卸資産回転期間(月数)の計算式は、以下で算出できます。


棚卸資産字回転期間(月数)=商品÷(仕入÷12)


棚卸資産回転期間が長いことは、販売されるまで時間がかかっていることを意味します。

商品の仕入を見直すことは運転資金にも大きく影響するため、注意が必要です。

仕入債務

仕入債務とは、支払手形と買掛金のことです。仕入債務回転期間とは、仕入れてから現金を支払うまでの期間をいいます。

仕入債務回転期間(月数)の計算式は、以下で求めます。


仕入債務回転期間(月数)=仕入債務(支払手形+買掛金)÷(仕入÷12)



月当たりの売上、仕入より運転資金を算出

売上債権、棚卸資産、仕入債務、それぞれの回転期間が計算されると、企業が実際に必要な運転資金を考えるために必要な回転期間が求められます。

必要な回転期間は、以下で求められます。


売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間


この式は現金化のタイムラグを表し、このタイムラグに月商を掛けると運転資金が算出されます。

中小企業実態基本調査(令和3年速報)で各業種の売上債権回転期間を算出すると以下のようになります。

製造業や卸売業では手形決済取引もあるため、売上債権回転期間は長くなり、個人が販売対象となる小売業や宿泊業、飲食サービス業では0.5ヶ月を下回っており、各業種の特色が表れています。

表 各業種の売上債権回転期間


業種

売上債権回転期間(月数)

建設業

1.38

製造業

2.03

情報通信業

1.55

運輸業、郵便業

1.48

卸売業 

1.86

小売業

0.66

不動産業、物品賃貸業

0.96

学術研究、専門・技術サービス業

1.40

宿泊業、飲食サービス業

0.43

生活関連サービス業、娯楽業

0.43

サービス業(他に分類されないもの)

1.27

【参考】令和3年中小企業実態基本調査速報(要旨)(令和2年度決算実績) |経済産業省

安定した運転資金を確保するためには

実際に事業運営に必要な運転資金を確保するためには、それぞれの回転期間を把握することが不可欠です。そして、見直すべき点として次の2点があります。

  • 売上債権回転期間
  • 在庫

それぞれの概要と、安定した運転資金の確保について解説します。


売上債権回転期間の短縮

運転資金における回転期間を安定させるためには、売上債権回転期間の長期化を避けなければなりません。資金ショートが発生すると、たとえ売上や利益が順調に推移していても、支払不能に陥り、黒字倒産の恐れがあるためです。

売上債権回転期間が長期化する原因として、以下のものがあります。

  • 売掛金から手形に変更になった
  • 受取手形のサイトが長くなった
  • 売上債権の回収に遅延がないか
  • 取引先の現況に異変がないか

取引先が倒産した場合、売上債権は回収不能となるため、日ごろからの取引先の現況に注意しなければなりません。


在庫の減少

在庫を多く抱えると、受注後すぐに納品できるようになります。

しかし、商品として販売されない場合、摩耗・劣化により価値が低下するかもしれません。また、在庫管理にコストがかかるデメリットもあります。

在庫商品が出荷されなくなると、棚卸資産回転期間が長期化し、安定した運転資金を確保できなくなるかもしれません。

棚卸資産回転期間を改善するためには、次の3点があります。

  • こまめな在庫のチェック
  • 過去の売上を分析し、仕入量の調整
  • 不要在庫の破棄

在庫を見直すことは運転資金や管理コストの改善にも有益で、非常に重要です。




早めの資金調達を心がける

安定した運転資金を確保するためには、企業は事前に金融機関に融資の申し込みが必要です。経営者は前期、前々期と比較して自社の売上や利益、また回転期間などがどのように推移しているのか、今期の動向についても金融機関に説明できなければなりません。

財務状況を認識するためには資金繰り表の作成は必須で、自社の収入および支出を把握し、今後の資金繰り予定まで考えておく必要があります。

また、資金繰り表はそのまま金融機関への提出書類となるため、企業は金融機関と資金繰り表を共有できるため、スムーズな審査が見込まれます。

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F&M Clubを利用した資金繰り改善事例

FMCを利用して資金繰りの改善に成功した株式会社ロビン様についてご紹介します。


株式会社ロビン

担当者名:代表取締役 鈴木雄太様

業種:小売業

従業員数:14名


人間関係や労働環境が原因で数名の従業員の退職が続き、決算状況では、店舗以外にweb集客、販売に着手し、売上は上昇するものの、キャッシュが残らない状況に陥ってしまいました。

問題点解決に税理士に相談しても、取り合ってもらえません。そこでF&M Club のセミナーに参加し、そして導入を決めます。

F&M Club 導入後、就業規則を見直すことにより、安心して働ける会社づくりに成功し、その結果、従業員の退職がなくなりました。また、キャッシュフロー面において、F&M Clubの財務分析により、リファイナンスの提案を受け、キャッシュフローを改善できました。

株式会社ロビン様の導入事例の詳細はこちら

  資金繰り改善により人材に投資できる会社へ!!人材が定着する会社になりました!! 『何資金繰り改善により人材に投資できる会社へ!!人材が定着する会社になりました!! 株式会社エフアンドエム

まとめ

運転資金は企業が事業運営するために必要な資金です。

商習慣により、売上計上から現金回収するまでには通常1~2ヶ月かかるため、仕入資金や人件費や広告宣伝費などの費用を支払う際、経営者はいかに資金繰りを安定させるかを考えなければなりません。

また、資金繰りを安定させる指針として回転期間があります。経営者は売上債権や棚卸資産、仕入債務の回転期間を資金繰り表の作成などで常に認識することで、キャッシュフローの健全化が可能です。

F&M Clubでは企業の経営状況から、さまざまな財務管理や財務分析をおこなっています。資金繰りの見直しや財務体質の完全などについて少しでも不安や疑問点がありましたら月額3万円で利用できるF&M Clubにぜひご相談ください。

宮本建一
宮本建一
大阪府立大学経済学部卒業後、第二地方銀行に勤務し、預金業務、融資業務に従事。銀行破綻後、消費者金融会社で債権回収業務に従事。その後信用組合へ転職。融資業務、経理、内部監査、審査管理等に従事。退職後、ライターとして活動中。主に資金調達関連、事業承継関連、不動産関連記事を執筆。FP2級技能士。AFP。趣味はマラソン、楽器演奏。
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