
キャッシュフロー計算書を直接法で作成する方法とは?メリットとデメリットを併せて解説
キャッシュフロー計算書を直接法で作成しようと考えたことはありませんか。
直接法で作成しようとしても作り方や、作成するメリットとデメリットがわからないという人も少なくありません。
またキャッシュフロー計算書の作成方法は、直接法のほかに間接法による作成方法もあるため、混合しやすいことがあります。
本記事では、キャッシュフロー計算書を直接法で作成する方法や、メリット、デメリットについて解説します。
目次[非表示]
- 1.キャッシュフロー計算書とは?何のために作成する?
- 2.キャッシュフローの計算書の作り方は「直接法」と「間接法」の2つ
- 3.キャッシュフロー計算書を直接法で作成する方法と計算例
- 3.1.営業収入の計算
- 3.2.原材料または商品の仕入支出の計算
- 3.3.人件費の計算
- 3.4.営業費の計算
- 4.直接法で作成するメリットとデメリット
- 5.キャッシュフロー計算書を直接法で作るときのよくある質問
- 5.1.キャッシュフロー計算書を作る義務はある?
- 5.2.キャッシュフロー計算書を直接法で作るエクセルのテンプレートはあるの?
- 5.3.キャッシュフロー計算書と損益計算書の違いは?
- 5.4.キャッシュフロー計算書と資金繰り表の違いは?
- 5.5.キャッシュフロー計算書で減価償却費を足す理由は?
- 5.6.キャッシュフロー計算書の効率的な見方・読み方は?
- 6.F&M Clubの「財務サポート」サービスで資金繰り改善を
- 7.まとめ
キャッシュフロー計算書とは?何のために作成する?
キャッシュフロー計算書とは、企業のお金(キャッシュ)の流れ(フロー)を把握するために作成する計算書類です。貸借対照表や損益計算書と合わせて重要な計算書類として扱われています。
キャッシュフロー計算書を作成する目的は、企業の現金の流れを把握することです。
貸借対照表や損益計算書では現金の出入りが表示されません。キャッシュフロー計算書を作成することで現金の出入りを把握でき、現金不足によるリスクを回避することにつながります。
仮に損益計算書において利益が出ていても、実際は現金不足に陥っていることがあります。把握できないままでいると最悪の場合、黒字倒産する可能性があります。
キャッシュフロー計算書は次の3つの項目に分類して作成します。
営業活動によるキャッシュフロー |
事業による取得した現金の増減 |
投資活動によるキャッシュフロー |
設備投資や固定資産の売却などによる現金の増減 |
財務活動によるキャッシュフロー |
金融機関からの融資などによる現金の増減 |
キャッシュフローの計算書の作り方は「直接法」と「間接法」の2つ
キャッシュフロー計算書の作り方は「直接法」と「間接法」の2種類です。
この2つの違いは、キャッシュフロー計算書の3つの項目である「営業活動」「投資活動」「財務活動」のうち、「営業活動によるキャッシュフロー」の計算方法が異なることです。「直接法」と「間接法」は計算方法が異なるのみであり、最終的な計算結果は同じです。
直接法による作成
直接法とは、現金収支を直接計算する方法です。本業によるキャッシュの収入や支出の流れを集計し、総額で表示します。
直接法の項目は、「営業収入」「原材料または商品の仕入支出」「人件費の支出」「その他の営業支出」となっており、主要な取引ごとに集計しキャッシュフローの総額を表します。
直接法のメリットは、総勘定元帳などを用いて主要な取引ごとに収入と支出を集計するため、キャッシュの流れを正確に把握できることです。デメリットは主要な取引ごとに総勘定元帳などの資料が必要となり、それらを集計するため、作成には手間がかかることです。
間接法による作成
間接法とは、損益計算書の値を調整して金額を導き出す方法です。損益計算書をもとにしてキャッシュが動く部分だけを調整し表示します。
損益計算書の税引前当期純利益をもとにして、キャッシュの減少がない非資金損益項目や、キャッシュが動く売上債権、仕入債権などを調整して計算します。
間接法のメリットは、直接法と比べて作成に手間がかからないことです。デメリットは、直接計算していないため内訳がわからず、収入と支出が把握しづらいことです。
キャッシュフロー計算書を直接法で作成する方法と計算例
営業活動によるキャッシュフローを直接法で実際に作成するための手順を解説します。
営業収入の計算
営業収入は、商品販売による現金収入に加えて、売掛金や受取手形などの売上債権の現金回収高を集計します。
掛け販売や手形取引に注意が必要です。
営業収入=現金売上+売上債権の現金回収金額 |
(例)現金売上8,000万円、売掛金5,000万円のうち現金回収金額3,000万円、受取手形1,000円のうち現金回収金額300万円
営業収入1億1,300万円 |
原材料または商品の仕入支出の計算
原材料または商品の仕入は、現金仕入した金額に加えて、買掛金や支払手形などの仕入債務の現金支払い高を集計します。
掛けで仕入れる場合や、手形取引などは間違いが起こりやすいため注意が必要です。
仕入支出=現金仕入+仕入債務の現金支払い金額 |
(例)現金仕入1,000万円、買掛金1,600万円のうち支払い金額1,200万円、支払手形500円のうち支払い金額400万円
仕入支出2,600万円 |
人件費の計算
人件費は、給料や賞与、退職金などのうち、当期中に支払いを終えたものを集計します。
もし会計年度を挟んで当期中に支払いを終えていないものがある場合、キャッシュフロー計算書には含まないで計算しましょう。
人件費支出=給料+賞与+退職金 |
(例)従業員への給料支払い3,200万円、賞与支払い1,300万円、当期で退職した人の退職金300万円が未払いの場合
人件費支出4,500万円 |
営業費の計算
営業費は、水道光熱費や租税公課、通信費、消耗品費などの管理費にあたる項目のうち、当期中に支払いを終えたものを集計します。
もし管理費の中で未払いがあれば、未払い分は含まないため注意が必要です。
営業費支出=水道光熱費+租税公課+通信費+消耗品費+交際費… |
(例)水道光熱費120万円、通信費80万円、消耗品費70万円、交際費270万円
営業費支出540万円 |
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直接法で作成するメリットとデメリット
キャッシュフロー計算書を直接法で作るメリットとデメリットは次のとおりです。
メリット
直接法のメリットは、本業による収入と支出のうち総勘定元帳などを確認して集計するため、その過程の把握や総額までといった貸借対照表や、損益計算書では得られないキャッシュの流れを把握できることです。
またどのように収入が得られ、何に支出したのかも明らかとなるため、将来のキャッシュフローを予測する場合に活用が可能です。
国際会計基準(IFRS)においても直接法による表示が推奨されており、今後導入される可能性もあるため、直接法で作成がおすすめです。
デメリット
直接法のデメリットは、主要な取引ごとに総勘定元帳などの資料が必要となり、それらを集計するため、作成には手間がかかることです。
このため、直接法よりも作成が容易である間接法で作成する企業が多いという現状があります。
キャッシュフロー計算書を直接法で作るときのよくある質問
直接法によりキャッシュフロー計算書を作るときのよくある質問は次のとおりです。
キャッシュフロー計算書を作る義務はある?
中小企業や個人事業主はキャッシュフロー計算書を作る義務はありません。
しかし自社のお金の流れや増減理由を正確に把握するために、キャッシュフロー計算書を作成することが推奨されています。特に「黒字なのにお金がない」と感じることがある経営者におすすめです。
キャッシュフロー計算書を直接法で作るエクセルのテンプレートはあるの?
キャッシュフロー計算書を作るエクセルのテンプレートがインターネット上で無料公開されていますが、多くは間接法のテンプレートです。間接法によるキャッシュフロー計算書のエクセルテンプレートは中小企業庁や日本公認会計士協会などのホームページからダウンロードできます。
直接法のキャッシュフロー計算書を作るときは、自社に合うシートをエクセルで作成することがおすすめです。企業ごとに勘定科目が異なることがあるためです。
エクセルでキャッシュフロー計算書を作る方法は次のサイトで紹介しています。
【参考】キャッシュフロー計算書様式例|中小企業庁
【参考】中小企業のためのキャッシュフロー計算書作成シートおよび経営計画書作成シートの改訂について|日本公認会計士協会
キャッシュフロー計算書と損益計算書の違いは?
キャッシュフロー計算書と損益計算書の主な違いをまとめると次のとおりです。
損益計算書 |
キャッシュフロー計算書 |
|
表示する対象 |
売上、費用、利益 |
お金の出入り |
計上するタイミング |
取引の発生時 |
お金の入出金時 |
掛け取引 |
含める |
含めない |
キャッシュフロー計算書と資金繰り表の違いは?
キャッシュフロー計算書は、過去の決算書などに基づいて作成します。つまり「過去の現金の出入り」を表します。一方資金繰り表は、「今後のお金の流れの予測」を表します。
キャッシュフロー計算書と資金繰り表はエクセルで簡便に作成できます。作成が難しい場合は無料で公開されているテンプレートを利用すると良いでしょう。
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キャッシュフロー計算書で減価償却費を足す理由は?
減価償却費は費用として計上されますが、実際にお金を支出しているものではありません。このため、お金の出入りを表すキャッシュフロー計算書を作成するときは、お金として支出していない費用である減価償却費は利益(売上-費用)に足し戻す、つまり費用から減算することで整合させることとしています。
キャッシュフロー計算書の効率的な見方・読み方は?
キャッシュフロー計算書を読むときは、お金の出入りの理由(経路)が大切です。つまり、お金が増加している理由は本業の儲けであるか、資産売却や借り入れによるものであるかなどが重要となります。
キャッシュフロー計算書のどの項目がプラスであるべきか、マイナスであっても問題ない状態とはなにかなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
キャッシュフロー計算書を直接法で作成する方法や、活用するメリットとデメリットについて解説しました。直接法は現金の流れのほか、過程までの把握ができるため、現金が足りなくなる原因を探し出せます。
過程部分まで把握できる点や、また国際会計基準が推奨している点も含めて直接法による計算方法で作成するメリットは大きいでしょう。またキャッシュフロー計算書は正確に作成すれば、次期以降の資金繰り対策もしやすくなります。
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