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労務トラブルを回避するためには?中小企業が抱えるハラスメント問題とは

職場におけるハラスメントなどの労働トラブルは、当事者だけではなく、職場の雰囲気や社会的評価に悪影響を与えるほか、場合によっては企業の責任を問われることもあります。

そのため企業では、ハラスメント等の防止策を講じ、労務トラブルの回避に努め、適切な処置を取れる体制を整えておく必要があります。

中小企業における、労務トラブルと対策について解説します。

また、労働トラブルは就業規則の見直しだけでなく、人事考課制度の構築や(設備投資などによる)労働環境の見直しなど組織改革が必要です。


目次[非表示]

  1. 1.中小企業の労務トラブル(ハラスメント)の事例
    1. 1.1.パワーハラスメントに関する事例
      1. 1.1.1.【パワーハラスメントの事例内容】
    2. 1.2.セクシュアルハラスメントに関する事例
      1. 1.2.1.セクシュアルハラスメントの事例内容
    3. 1.3.妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメント事例
      1. 1.3.1.妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントの事例内容
  2. 2.ハラスメントの責任は加害者の問題だけではない
    1. 2.1.使用者責任
    2. 2.2.不法行為責任
  3. 3.職場におけるハラスメントを回避するためには?
    1. 3.1.パワハラ防止措置の義務化
      1. 3.1.1.【企業が必ず講じなければならない具体的な措置】
  4. 4.F&M Club の労務トラブルリスクヘッジサポート
    1. 4.1.導入事例(就業規則整備)
    2. 4.2.設備投資による労働環境の見直しもご検討ください
  5. 5.まとめ

中小企業の労務トラブル(ハラスメント)の事例


2020年に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年以内にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した人は31.4%であり、2020年6月に改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)が施行された後でも、いまだ、職場におけるハラスメント問題は企業にとって大きな課題となっています。

中小企業にみられる労務トラブル(ハラスメント)の事例を紹介します


パワーハラスメントに関する事例

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすもので、さらに代表的な言動として6つの類型に分類されます。

【パワーハラスメントとみなされる要素】

  1. 優越的な関係を背景とした言動であって、
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

【代表的な言動の類型】

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害


【パワーハラスメントの事例内容】

具体的には、以下の言動がパワーハラスメントとみなされます。

  • 部下の意見に対し、上司が「気に入らない」などと拒否し、デスクを蹴ること
  • 社員が大勢いる場所で、「お前は仕事ができないやつだ」などと侮辱的な言葉を発すること
  • 送別会や社内イベントなど、基本的に全員が参加する行事で、特定の人物だけが呼ばないこと
  • 異業種からの転職など、経験のない(または浅い)業務で、過度なノルマを課せること
  • 有給休暇の申請に対し、休む理由を細かく聞くこと


セクシュアルハラスメントに関する事例

職場におけるセクシュアルハラスメントとは、職場においておこなわれる、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されたりすることをいいます。


セクシュアルハラスメントの事例内容

職場におけるセクシュアルハラスメントには、「対価型」と「環境型」があります。

具体的には、以下のような言動がセクシュアルハラスメントとみなされます。


【対価型セクシュアルハラスメント】

対価型セクシュアルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けることをいいます。

  • 事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇すること
  • 営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、その労働者を降格すること


【環境型セクシュアルハラスメント】

労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、その労働者が就業するうえで看過できない程度の支障が生じることをいいます。

  • 事務所内において、上司が労働者の腰、胸などを度々触ったため、その労働者が苦痛に感じ、就業意欲が低下していること
  • 同僚が取引先において、労働者に関する性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと​​​​​​​




妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメント事例

近年、働き方改革の促進や、育児・介護休業法の改正など、労働者がさまざまなライフステージを経ても、長期的に働き続けやすい職場環境づくりが推奨されていますが、一方で、妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントもトラブルとなりやすいため、注意が必要です。


妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントの事例内容

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントとは、「職場」においておこなわれる上司・同僚からの妊娠・出産、育児休業などに関する言動により、妊娠・出産した女性労働者や、育児休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されることをいい、妊娠の状態や育児休業制度等の利用などと、嫌がらせとなる行為の間に因果関係があるものがハラスメントに該当します。

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントには「制度等の利用への嫌がら

せ型」と「状態への嫌がらせ型」があります。


【制度等の利用への嫌がらせ型の事例】

  • 産前休業取得の相談に対し、「休みを取るなら辞めてもらう」と発言すること
  • 時間外労働の免除についての相談に対し、「次の査定の際は昇進しないと思え」と発言すること
  • 産後パパ育休の取得に対し、「迷惑だ。自分なら取得しない。あなたもそうすべき」と発言し、苦痛を与えること
  • 上司・同僚が「自分だけ短時間勤務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ。」と繰り返しまたは継続的に言い、就業をするうえで看過できない程度の支障が生じていること


【状態への嫌がらせ型の事例】

  • 妊娠の報告に対し、「ほかの人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と発言すること
  • 上司・同僚が「妊娠するなら忙しい時期を避けるべきだった」と繰り返しまたは継続的に言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じていること


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【参考】職場におけるパワーハラスメント対策について|厚生労働省



ハラスメントの責任は加害者の問題だけではない

企業において、パワーハラスメント(以下パワハラ)の問題が起きた場合、加害者が責任を問われることはもちろん、場合によっては企業も責任を負う可能性もあり、「使用者責任」「不法行為責任」などが問われ、最悪の場合、損害賠償が請求されることもあります。


使用者責任

使用者責任(民法715条)とは、「雇用する労働者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」ことをいい、雇用する労働者が職場におけるパワハラをおこなった場合、企業は、使用者としての責任を負います。


不法行為責任

不法行為責任(民法709条)とは、「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う」ことをいい、労働者が職場においておこなったパワハラが、使用者(企業)の意思に基づく行為あるいは、予見できたにもかかわらず、適切な対応を取らずに放任していたと判断される場合には、不法責任が問われます。

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職場におけるハラスメントを回避するためには?

企業は、ハラスメントが発生しないように防止措置を講じる義務があり、ハラスメントが発生した場合は、適切かつ迅速な対応をおこなう必要があります。


パワハラ防止措置の義務化

2020年6月1日に「改正 労働施策総合推進法」が施行され、2022年4月1日より、中小企業に対する「パワーハラスメント防止措置」が義務化されました。(2022年3月31日までは努力義務)


【企業が必ず講じなければならない具体的な措置】

企業は労働施策総合推進法に基づき、以下のようなパワハラ防止措置を講じ(一部抜粋)、ハラスメントによる問題を回避しなければなりません。

  • 事業主の方針等の明確化および周知・啓発

 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること

  • 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること

  • 職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応

 事実関係を迅速かつ正確に確認すること

 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正におこなうこと

  • あわせて講ずべき措置

 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること

【参考】労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」の義務化について|厚生労働省

F&M Club の労務トラブルリスクヘッジサポート

ハラスメントをはじめ、企業における労務トラブルを回避するためには、就業規則など、規定の整備も重要です。特に、社員との労務トラブルで多い「ハラスメント」や「賃金や有給休暇などの待遇」、「雇用形態」などについては、「どのようなことがハラスメントにあたり、加害者はどのような罰則を受けるのか」や、「試用期間における定めや正社員登用の要件」など、細かく明記しておく必要があります。

F&M Clubでは、「就業規則診断」など、企業が抱える「労務トラブル問題」を改善するためのサポートを提供しています。


導入事例(就業規則整備)

F&M Clubのサービスを導入した企業の中には、就業規則を整備したことで、「就業規則が古ければ会社を訴えることがきる」と、訴えようとしていた元社員とのトラブルが大事にならずに済んだという事例もあります。



設備投資による労働環境の見直しもご検討ください

ハラスメントが起きる要因のひとつには、人手不足による従業員への過剰な業務量が考えられます。

設備投資による業務効率化は従業員の働きやすさを実現し、精神的なプレッシャーへの軽減も期待できます。また、中小企業向けの設備投資に使える助成金・補助金も活用できます。




まとめ

働き方改革の促進や労働関連法の改正など、社員が快適に、末長く働ける職場づくりが推奨されている一方で、職場における「ハラスメント」をはじめ、社員との労務トラブルの予防・解決・改善は、中小企業の課題のひとつとなっています。

労務トラブルを回避するためには、必要な予防措置を講じることが必要ですが、中でも「就業規則」をはじめ、規定の整備は怠ってはならない予防策のひとつといえます。

定期的に就業規則や規定の見直し、必要であれば、業務効率化に向けた設備投資も検討し、労務トラブルの回避に努めましょう。

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