パワハラのグレーゾーンはどこから?事例や対処法について紹介
近年、企業における「ハラスメント」の規制は厳しく、なかでも「パワーハラスメント(パワハラ)」についての規制は、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が制定されるなど、ますます厳しくなっています。
パワハラは、「損害賠償責任」や「社会的信頼の損失」など、さまざまなリスク発生するため、企業は「パワハラ問題」について適切に取り組まないといけません。
しかしパワハラは、どこからがパワハラであるのか判断が難しい場合もあり、「パワハラのグレーゾーン」について疑問を抱いている企業も多いでしょう。
この記事では、パワハラのグレーゾーンについて、事例や対処法について紹介します。
目次[非表示]
- 1.パワハラの定義
- 1.1.パワハラが発生した場合のリスク
- 2.パワハラのグレーゾーン事例
- 2.1.身体的な攻撃・精神的な攻撃
- 2.2.精神的な攻撃
- 2.3.人間関係からの切り離し
- 2.4.過大な要求
- 2.5.過小な要求
- 2.6.個の侵害
- 3.パワハラがグレーゾーンであるかはどうやって判断する?
- 4.企業でグレーゾーンのパワハラが発生したときは
- 4.1.グレーゾーンであってもスルーしない
- 4.2.再発防止の取り組み
- 5.まさかこんなトラブルが…と嘆く前に就業規則を見直しが大事です
パワハラの定義
パワハラのグレーゾーンについて理解・判断するためにはまず、「パワハラの定義」をしっかりと理解する必要があります。
職場における「パワハラ」とは、「優越的な関係を背景とした言動」であり、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」による、「労働者の就業環境が害されるもの」であるとされています。
また、パワハラに該当する行為は、大きく6つの類型に分けられており、この類型もパワハラであるかどうかの判断材料のひとつとなります。
【パワハラの類型】
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
【参考】ハラスメントの定義|厚生労働省
パワハラが発生した場合のリスク
パワハラが発生した場合、企業は「使用者責任」を問われる場合があり、損害賠償を請求されることもあります。
「賠償責任」のほかにも、パワハラ問題による「企業の信頼喪失」や、「離職率の増加」など、パワハラによるリスクには注意が必要です。
パワハラについての定義はあるものの、場合によってはパワハラであるかどうかの判断が難しい場合もあります。
そのように、パワハラであるとはっきり判断・断言しづらいようなケースのことを「パワハラのグレーゾーン」といいます。
パワハラのグレーゾーン事例
パワハラの典型例・グレーゾーンの事例として、「6つの類型別」に紹介します。
身体的な攻撃・精神的な攻撃
「身体的な攻撃」に関連する事例として、以下のようなケースが挙げられます。
【典型例】
● 上司が部下に対して殴る・蹴るなど暴力を振るう。
【グレーゾーン例】
● 営業成績が思わしくなく落ち込んでいた部下に対し、上司が激励のつもりで頭をポンポンと叩きながら、「そんなんじゃ後輩に追い越されるぞ」と言った。
上司が部下に対して暴力を振るうことは、身体的な攻撃としてパワハラに該当します。 本人(上司)は励ましのつもりでも、受け手(部下)は、「頭を叩かれた」=暴力(身体的な攻撃)と捉えてしまうこともあり、また、言葉の受け取り方も人によってさまざまであるため、激励のつもりの言葉でも「プレッシャー」=ハラスメント(精神的な攻撃)に感じてしまう人もいます。
精神的な攻撃
「精神的な攻撃」に関連する事例として、以下のようなケースが挙げられます。
【典型例】
● 全社員の前で、上司が部下に対し「バカ」などの暴力的な言葉を浴びせる。
【グレーゾーン】
● ミスをした部下に対して「ちゃんとやれ」と叱咤激励する
「バカ」などの暴力的な言葉は、当然ながらパワハラに該当します。部下に対する叱咤激励のつもりでも、「ちゃんとやれ」のように具体性のない言動は注意が必要です。部下が精神的苦痛を受ければパワハラに該当します。
人間関係からの切り離し
「人間関係からの切り離し」に関連する事例として、以下のようなケースが挙げられます。
- 「飲み会の強要」もパワハラにあたると判断し、部下が「飲み会に参加したくなさそう」であったため、部の親睦会などの飲み会には誘わないようにしている。
「飲み会」は、一見「仕事」と関係のないことであると判断されがちですが、従業員同士の交流を深めるために飲み会も仕事の一環として捉えられます。
たとえ部下が「飲み会に参加したくなさそう」であったとしても、「ひとりだけ声をかけない」ということが「人間関係からの切り離し」に触れる可能性が高く、部下は「疎外感」を感じてしまうかもしれません。
過大な要求
「課題な要求」に関連する事例として、以下のようなケースが挙げられます。
- 業務を一通り覚える(習得する)ことも「本人の成長のため」という判断で、本来営業職の部下に、専門的知識が必要な(高度な)事務作業や雑用など、他業務全般をおこなわせた。
「本人の成長」のための要求(業務)であれば、「過大な要求」に該当しない場合もありますが、「十分な指導や経験がないのにもかかわらず」ほかの業務をおこなわせる行為は、「過大な要求」として判断される場合もあります。
過小な要求
「過小な要求」に関連する事例として、以下のようなケースがあります。
- 経営上の都合などにより、部下を新規プロジェクトに参加させず、簡単な業務に就かせていたところ、本人から「もっと会社に貢献できる仕事がしたい」という申し出があった。
「経営上の都合」により、本人の希望や能力に見合わない業務に一時的に就かせることは「過小な要求」に該当しないとされますが、正当な理由なしに「本来の能力に見合わない(低い)業務」に就かせることは「過小な要求」として判断される場合もあります。
個の侵害
「個の侵害」に関連する事例として、以下のようなケースがあります。
- 休日に、部下に引越し業務を手伝ってもらい、そのお礼としてご飯に誘った。
部下が自発的、意欲的に協力したい場合は問題ありませんが、休日(プライベートの時間)に、業務に関係のない私的な理由で何かを「強制」することは、「個の侵害」に該当するとされています。
上記のように、本人にはそのつもりがなくとも「パワハラ」に該当する可能性があり、企業としては従業員への周知が求められます。
しかし、中小企業は、人事評価制度をはじめとする労務に関して、大企業に比べかなり遅れをとってしまっています。
大企業が労務に力を入れている理由を考えたことはあるでしょうか。
その答えは、会社の成長につながるから。それだけです。
そのカラクリをこちらで紹介しています。
パワハラがグレーゾーンであるかはどうやって判断する?
パワハラのグレーゾーンについて、明確な判断基準はありませんが、「グレーゾーンだから大丈夫」というわけではありません。
グレーゾーンであるとしても、「パワハラの可能性があるもの」として、真摯に対応しましょう。
パワハラの判断基準
パワハラがグレーゾーンであるのかを判断する際は、「言動の目的や経緯」、「行為者との関係性」など、総合的な視点から判断します。
- 言動の目的や経緯
上司による言動の「目的や経緯」が明らかに業務に関連のないことや、部下や組織の成長を目的とした「指導」や「教育」ではない場合、パワハラに該当する可能性が高くなります。
- 行為者との関係性
行為者との関係性とは、単に「上司と部下」という関係性だけでなく、両者の日頃の関係性にも着目します。
日頃から、上司と部下の「信頼関係が築けていない」場合や、第三者からみても「高圧的な態度を取っている」場合などは、パワハラに該当する可能性が高くなります。
パワハラの判断方法
パワハラを判断する際は、「誰がどのように判断するか」が重要となります。
パワハラと疑われる言動(問題)が起きたとき、まず企業内(人事担当者など)で、パワハラに該当するかどうかが判断されます。
この際、「一般的(平均的)な見解」にもとづいた「客観的な判断」が大切です。
具体的には、「厚生労働省が提示しているハラスメントの定義」のほか、企業内で「パワハラに関するガイドライン」などを定めておくと良いでしょう。
また、パワハラの判断は、最終的に裁判で判断されます。
裁判となった場合、企業は「損害賠償請求」や「社会的信頼の損失」のリスクが生じるだけでなく、裁判にかかわる人件費や時間を費やさなくてはいけません。
企業としては、パワハラが裁判問題まで発展しないように、日頃から適切な予防措置や対処法を講じておくことが大切です。
【参考】ハラスメントの定義|厚生労働省
企業でグレーゾーンのパワハラが発生したときは
企業でグレーゾーンと思われるパワハラが発生したときの対処法や注意点について解説します。
グレーゾーンであってもスルーしない
明確にパワハラと判断できず、たとえグレーゾーンであっても、問題をスルーしてはいけません。
パワハラグレーゾーンとなる問題が起きている時点で要注意です。
今後、そのようなパワハラ問題を起こさないようにするためにも、該当者の話をよく聞き、「事実の確認」をおこないましょう。
この際、どちらかの肩をもつ姿勢ではなく、あくまでも「客観的な姿勢」で事実根拠の確認をおこないます。
再発防止の取り組み
事実確認のあとは「配置の変更」など、該当者への適切な配慮のほか、再発防止に向けた取り組みが重要です。
具体的には、パワハラについての理解を深める研修やセミナーへの参加や、就業規則などでパワハラについての方針を明確化します。
「どのような言動がパワハラに該当し、どのような処罰を受けるのか」などの基本的な事項を社員一人ひとりが理解・把握できている職場環境の整備を心がけましょう。
まさかこんなトラブルが…と嘆く前に就業規則を見直しが大事です
パワハラをはじめとした、労務トラブルは予測することができません。
そのため、トラブルが発生するものと考えて、前もって準備が必要になります。
トラブルに対する準備ができていない場合、対応が長引いたり、多大な労力がかかる可能性があります。
労務トラブルに対しては、就業規則や労務関連書類、社内体制の整備が効果的です。
是非この機会に社内体制や就業規則の見直しをおすすめします。
しかし、労務関連の法整備が進んでおり、
経営者が1人で就業規則の見直しをすることは不可能でしょう。
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