
なぜ経営難に陥ってしまう?理由と経営者が回避のためにやるべき7つの対策
経営者は会社が経営難に陥らないために、その理由を理解して回避するための行動を取らなければなりません。ただ、経営難となる理由を正しく理解せず、漠然と経営を続ける経営者も見受けられます。今回は、自社が経営難に陥りかねない理由や回避のためにやるべき対策を7つ解説します。
目次[非表示]
- 1.経営難とは
- 1.1.経営不振とどう違う?
- 2.会社が経営難に陥る5つの理由
- 3.経営難を避けるために経営者がやるべき7つの対策
- 3.1.財務状況の細かな把握
- 3.2.経営方針の改善や修正
- 3.3.余裕をもった資金調達
- 3.4.着実な課題の解決
- 3.5.中長期的な施策の立案
- 3.6.倒産防止共済への加入
- 3.7.安定した人材の確保
- 4.経営難で従業員を解雇する際に気をつけるべきこと
- 4.1.人員削減には相応の必要性が求められる
- 4.2.企業には解雇回避努力義務がある
- 4.3.解雇対象の選定は客観的・合理的な基準が求められる
- 4.4.解雇には労働者・労働組合に対する説明・協議が必要
- 5.経営難に関するよくある質問
- 5.1.赤字経営でも潰れないのはなぜ?
- 5.2.経営が危ない会社に共通する特徴は?
- 6.経営難に陥らない企業づくりを目指すならばF&MClubへご相談ください
- 7.まとめ
経営難とは
経営難とは、企業が財務的な困難や経営上の問題に直面して事業運営が厳しい状況です。具体的には、売上の減少・利益率の低下・資金繰りの悪化などで事業継続が厳しい状態が経営難の例として挙げられます。
経営難は外部環境の変化や内部の経営判断ミスなど、さまざまな要因によって引き起こされ、長引くと最終的には倒産や事業閉鎖に至る可能性もあります。そのため、企業経営を安定化させるためには経営者は早期に問題を察知し、適切な対策を講じなければなりません。
たとえば、市場の変化に対応した販売戦略の見直しやコスト削減策の実施などが経営難の打開策として考えられます。また、従業員とのコミュニケーションを強化し、組織全体で問題解決に取り組む姿勢も求められます。さらに、外部の専門家やコンサルタントの意見を取り入れることも有効です。
経営不振とどう違う?
経営不振と経営難は似たような状況を指す言葉ですが、ニュアンスに違いがあります。経営不振とは企業の業績が期待を下回り、収益性や成長性が低下している状況です。
一方、経営難は経営不振が深刻化し、企業の存続自体が危ぶまれる状態となっています。経営不振は初期段階の問題であり、適切な対策を講じれば回復の可能性がありますが、経営難に陥ると抜本的な改革や外部からの支援が必要となります。
会社が経営難に陥る5つの理由
会社が経営難に陥ってしまう理由には、大きく5つが考えられます。
資金繰りの悪化
会社の資金繰りが悪化することは、経営難に陥ってしまう大きな理由です。たとえば、経費が増加して利益を圧迫する状況や借入金の返済が開始することなどが考えられます。
資金繰りが悪化すると、健全な会社運営が難しくなり、売上減少などの問題を引き起こす可能性があります。また、これがさらなる資金繰り悪化の原因となりかねません。これが続くと、短期間で会社が経営難に陥ってしまいます。
マーケティング戦略の失敗
全社的なマーケティング戦略に失敗すると、経営難に陥ってしまう可能性があります。たとえば、莫大な広告費をかけて商品を宣伝したものの、販売数が想定を大きく下回るなどです。
一般的に、マーケティングには事前準備から実施まで、多くの費用が発生します。また、マーケティングの結果、まとまった売上が入ってくることも想定するはずです。しかし、これに失敗すると、費用対効果が著しく下がってしまい、金銭的な要因から経営難に陥ります。
市場環境の変化
市場環境の変化に追従できないことで、経営難に陥ってしまうことが考えられます。たとえば、「顧客のニーズを調査しない」「リモートワークの普及など働き方の変化を踏まえない」などです。
このような変化に追従できないと、市場で取り残されることになりかねません。結果、売上が著しく減少するなどの問題を引き起こします。また、市場の需要と乖離した商品やサービスを提供することで「ダメな会社」とのレッテルを貼られかねません。
人員不足
人手不足により効率よく業務がこなせず、売上が下がり経営難に陥るかもしれません。会社の健全な運営には、余裕をもった人材の確保が重要であるため、これが不足すると短期間で状況が悪化する可能性があります。
社内で人手不足が発生する理由は多岐に渡ります。たとえば、根本的に人材を確保できておらず、慢性的な人手不足に陥ることがあるでしょう。また、優秀な人材が退職するなど、一時的な人手不足も考えられます。
経営陣の怠慢
経営陣の怠慢によって、経営難に陥ることも考えられます。重要な判断を下す立場にあるため、その職務を全うしていなければ、経営難に陥ることはいうまでもないでしょう。
たとえば、製造業において毎月の生産量は経営陣が決定しなければなりません。しかし、これを怠り現場の判断に任せっきりになってしまうと、職務を全うしているとはいえないでしょう。
これは一例ですが、経営陣が判断すべきことを現場が判断していると、経営難に陥りかねません。経営陣と現場の協力は必要ですが、お互いの役割を正しく理解すべきです。
売掛先の倒産
売掛先が倒産することにより、売掛金を回収できず、経営難に陥ることがあります。特に、未回収の金額が大きくなると、経営に大きな影響を与えかねません。資金繰りが悪化することで、一気に経営が傾いてしまいます。
また、倒産によって取引先が減ると、中長期的に売上の減少を招きかねません。徐々に利益が少なくなってしまい、現金が不足することによる、経営難に陥る可能性があります。
経営難を避けるために経営者がやるべき7つの対策
経営難を避けたいならば、経営者としてやるべきことがあります。今回は、特に取り組んでもらいたい7つの対策を解説します。
財務状況の細かな把握
可能な限り、財務状況の細かな把握に努めましょう。頻繁に詳細な数値まで状況を確認することが重要です。正確に把握すればするほど、最適な判断を下しやすくなります。
たとえば、手元の現金が増加しているのか減少しているのか把握が可能です。減少しているならば、原因を突き止めて、それを踏まえた対処ができます。
ただ、経営状況の細かな把握は、経営者にとって負担のかかる作業でもあります。そのため、従業員に適切な資料を作成してもらうなど、協力を仰ぎましょう。
経営方針の改善や修正
会社の状況に応じて、経営方針を改善・修正すべきです。当初の方針に固執するのではなく、臨機応変な考え方が求められます。
たとえば、原材料の高騰によって利益が減少してきたならば、商品の値上げを検討すべきです。値上げせずに企業努力だけで乗り切りたいと考えていても、経営難に陥るよりは値上げした方が良いでしょう。企業理念などと折衷すべき部分はあるかもしれませんが、背に腹は代えられません。
余裕をもった資金調達
会社の資金は余裕をもって調達するように心がけましょう。現金が少なくなってくると、心の余裕がなくなりやすいため、できるだけ余裕をもつべきです。売上の増加や利益の確保はもちろん、現金が不足する可能性があるならば、早い段階で金融機関に融資してもらえるか相談しなければなりません。
なお、資金調達は短期的ではなく中長期的にも考えることが重要です。たとえば、資金調達の手段として補助金や助成金がありますが、これらは採択されてから入金されるまでに時間を要することがあります。中長期的には資金繰りの改善に役立っても、短期的には現金が不足することがあるため、短期と中長期の両面から余裕をもった資金調達が必要です。
着実な課題の解決
会社経営にあたって複数の課題を抱えるならば、ひとつずつ着実に解決しなければなりません。複数の問題を同時に解決しようとすると、どちらも中途半端になり、状況が悪化する可能性があります。自分が対応できる範囲内で着手することが大切です。
ただ、複数の課題を抱えているならば、最終的にはすべて解決しなければなりません。そのため、課題を解決する優先順位を定めましょう。たとえば、売上など資金繰りに関わるものから優先的に着手して、それら以外は計画を立てて少しずつ着手するようにします。
中長期的な施策の立案
短期的な施策だけではなく、中長期的な施策も立案するように心がけましょう。会社を維持・拡大するためには、中長期的な視点をもたなければなりません。目の前のことで手がいっぱいかもしれませんが、将来、経営難に陥らないためにも中長期的な施策の立案に時間を割くべきです。
たとえば、1年単位の計画と3年や5年ごとの計画や目標の2種類を用意しておきます。先に中長期的な目標を立て、それを達成するためにやるべきことを1年単位の計画に落とし込む流れです。こうすることによって、将来を見据えた会社経営が可能となり、気づかないうちに経営難に陥ってしまうようなことを避けられます。
倒産防止共済への加入
取引先の倒産に備えて、倒産防止共済制度への加入をおすすめします。これは、取引先事業者が倒産した際に、連鎖倒産を防ぐため、中小機構が無利子かつ無担保で貸付してくれる制度です。
加入するためには毎月掛金を納める必要がありますが、万が一の際は最大で掛金の10倍まで借入できます。
また、掛金は会社の損金として認められるため、節税にも役立つことが特徴です。掛金を12ヶ月以上納めていれば、掛金総額の8割以上が解約手当金として受け取れるため、緊急で現金が必要な場合は解約して現金化もできます。
安定した人材の確保
業務を逼迫させないために、安定した人材の確保を心がけましょう。既存の人材が退職することを防いだり、新しい人材を早い段階で採用することが求められます。
退職を防ぐためには、労働環境の改善を心がけてみましょう。たとえば、賃金の増加や育児休暇制度などの新設が挙げられます。また、経営者と従業員がコミュニケーションを取りやすくするなどもおすすめです。
また、新しい人材を採用するためには、適切な媒体に魅力的な求人を出さなければなりません。求人に掲載する写真など、求人の出し方にはコツがあるため、それらを意識しましょう。
経営難で従業員を解雇する際に気をつけるべきこと
経営難で従業員を解雇する際に気をつけるべきこととして、以下の4つが挙げられます。
● 人員削減には相応の必要性が求められる
● 企業には解雇回避努力義務がある
● 解雇対象の選定は客観的・合理的な基準が求められる
● 解雇には労働者・労働組合に対する説明・協議が必要
従業員を致し方なく解雇する場合は、上記のポイントに注意しましょう。
人員削減には相応の必要性が求められる
まず、人員削減をおこなうためには、企業経営上の十分な必要性が求められます。具体的には、連続した赤字決算や売上高の大幅な減少などで企業の存続が危ぶまれる状況であることが必要です。
ただし、企業が倒産寸前の状態であることまでは求められず、将来的に経営が悪化する可能性が高い場合でも人員削減の必要性が認められるケースがあります。
上記のような状況下での人員削減は、企業の再建や競争力の維持に不可欠な措置とされるためです。しかし、人員削減が認められる状況であっても必要以上の人数を解雇すると、無効と判断されやすいです。
企業には解雇回避努力義務がある
解雇を実施する前に、企業は解雇を回避するための最大限の努力をおこなう義務があります。具体的な解雇回避策としては、以下のようなものが挙げられます。
● 経費削減:無駄な経費を見直し、コスト削減を図る
● 残業抑制:残業時間を削減し、人件費の抑制をおこなう
● 新規採用の停止:新たな人員の採用を一時的に停止する
● 配置転換:従業員をほかの部署や関連会社に配置転換し、雇用を維持する
● 希望退職の募集:退職金の上乗せなどの条件を提示し、自発的な退職を促す
上記の努力を尽くした上で、なお人員削減が必要と判断される場合にのみ解雇が検討されるべきです。解雇回避のための具体的な取り組みがおこなわれていない場合、解雇は無効と判断される可能性があります。
解雇対象の選定は客観的・合理的な基準が求められる
解雇の対象者を選定する際には客観的かつ合理的な基準を設け、公正に適用することが求められます。具体的な選定基準としては、以下のようなものが考えられます。
● 勤続年数:勤続年数が短い従業員を優先的に選定する
● 勤務成績:過去の評価や業績が低い従業員を対象とする
● 技能・能力:業務遂行に必要な技能や能力が不足している従業員を選定する
● 家庭の状況:扶養家族の有無や家計状況を考慮し、影響の少ない従業員を選ぶ
なお、以下のような基準での選定は不当な差別と見なされる可能性が高いため、避けるべきです。
● 性別や年齢:特定の性別や年齢層を理由とした選定
● 労働組合への加入状況:組合活動を理由とした選定
● 信条や国籍:特定の信条や国籍を理由とした選定
上記の不当な基準での解雇は差別的行為と見なされ、法的に無効とされる可能性があります。
解雇には労働者・労働組合に対する説明・協議が必要
解雇を実施する際、企業は労働者や労働組合に対して解雇の必要性や内容について十分な説明をおこない、協議を重ねることが求められます。具体的には、以下の点について説明と協議をおこなうことが必要です。
● 解雇の必要性:経営状況や市場環境の変化など、解雇を実施せざるを得ない理由を明確に伝える
● 解雇の時期・規模・方法:解雇をおこなう時期、対象となる人数、具体的な方法について詳細に説明する
● 人選の基準:解雇対象者の選定基準が客観的かつ合理的であることを示し、基準をどのように適用したかを説明する
● 解雇回避のための努力:配置転換や希望退職の募集など、解雇を回避するために企業がどのような努力をおこなったかを共有する
上記の説明と協議を通じて労働者や労働組合の理解と納得を得ることが重要で、手続きが不十分であると解雇が無効と判断されるリスクが高まります。
経営難に関するよくある質問
経営難に関するよくある質問として、以下の2つが挙げられます。
● 赤字経営でも潰れないのはなぜ?
● 経営が危ない会社に共通する特徴は?
経営難に関して疑問点がある場合は、上記質問への回答を参考にしてください。
赤字経営でも潰れないのはなぜ?
赤字経営とは企業の収益が費用を下回り、利益がマイナスとなる状態を指します。一見すると赤字経営は倒産に直結するように思われがちですが、実際には赤字であっても倒産せずに事業を継続している企業は少なくありません。赤字経営でも潰れない理由として、以下の点が挙げられます。
赤字経営でも潰れない理由 |
概要 |
内部留保や手元資金が豊富にある |
過去の利益を蓄積した内部留保や手元資金が十分にある場合、赤字が発生しても資金を活用して経営を続けられる。 |
資産の売却や資金調達で現金を確保している |
企業が保有する不動産や有価証券などの資産を売却して現金を確保し、赤字を補填できる。また、金融機関からの融資や新たな投資家からの出資を受けて資金繰りを維持することも可能。 |
赤字が一時的である |
大型投資や特別損失など赤字が一時的な要因によるものである場合、将来的な収益増加が見込まれるため、短期的な赤字は必ずしも倒産に直結しない。 |
減価償却費による影響 |
減価償却費は固定資産の購入費用を耐用年数にわたって分割して費用計上するもので、実際のキャッシュアウトフローを伴わない。会計上は赤字でも現金流出がないため、資金繰りには直接影響しない。 |
以上のように、赤字経営であっても内部留保の有無・資産の状況・赤字の性質などによって企業が倒産せずに存続が可能となります。しかし、赤字が長期化すると資金繰りが悪化し、最終的には倒産のリスクが高まるため、早期の経営改善が重要です。
経営が危ない会社に共通する特徴は?
企業が経営危機に陥る前には、以下の共通する兆候や特徴が見られることがあります。
経営が危ない会社に共通する特徴 |
概要 |
売上至上主義である |
売上の拡大ばかりを追求し、利益率やコスト管理をおろそかにする企業は、経営が不安定になる傾向がある。 |
資金繰り管理に不備がある |
資金繰りの管理ができていない企業は、手元資金の不足や支払い遅延などの問題が生じやすい。 |
意思決定が遅い |
経営者の意思決定が遅い場合、市場の変化や競争環境に迅速に対応できず、機会損失や業績悪化を招く。 |
過度な節税をしている |
節税対策に過度に注力し、必要な投資や経費を削減しすぎると事業の成長や競争力が損なわれる可能性がある。 |
上記のサインを早期に察知して適切な対策を講じれば、倒産リスクを低減できます。
経営難に陥らない企業づくりを目指すならばF&MClubへご相談ください
上記で解説したとおり、経営者は会社が経営難に陥る理由を理解して、それを避けるためにやるべき対策へと着手しなければなりません。ただ、対策には7つあり、どれからどのように着手すれば良いのかお悩みではないでしょうか。
そこで、累計約48,000社の中小企業様を支援した実績をもつ、バックオフィス支援サービスであるF&Mクラブのご利用をおすすめします。月額3万円(税別)で、企業様の抱える課題や目的に対応した、財務・労務・採用・IT活用などの34コンテンツをすべて使い放題でご利用可能です。
たとえば「財務サポート」サービスをご利用いただくと、財務状況の分析やその結果を踏まえたアドバイスが可能です。資金繰り表の作成をサポートすることも可能であり、中長期的な資金繰りを可視化できます。また、人材確保に向けた求人票の添削や資金調達に向けた補助金・助成金の案内にも対応が可能です。
経営難に陥らない企業づくりを目指していても、具体的な行動に移せない経営者は多いでしょう。経営に関する課題・悩みをお持ちであれば、ぜひF&Mクラブへご相談ください。
まとめ
計画的な経営を心がけなければ、資金繰りの悪化などによって経営難に陥ってしまいます。これを回避することは、経営者の重要な職務であるため、理由を理解して対策できるようになりましょう。
なお、経営難に陥る理由は多岐にわたり、これを回避するための対策も数多くあります。そのため、優先順位をつけて少しずつ確実に対策することが重要です。同時に対策しようとすると、すべてが中途半端になりかねないため、このような対応はおすすめできません。
もし、具体的にやるべきことや着手の優先順位にお悩みならば、F&Mクラブへご相談ください。