
約束手形の決済日は60日以内へ短縮!振出側・受取側の対応策5選
政府は企業が発行する約束手形の決済期間を60日以内とする運用を開始することを発表しました。あわせて下請法を改正し、厳格な運用を求める方針です。
本記事では、約束手形の決済60日以内への短縮化の影響と対応策について解説します。
目次[非表示]
- 1.そもそも約束手形とは
- 2.約束手形の決済期間が120日以内から60日以内へ短縮
- 3.手形サイト60日はいつから?でんさいは?違反するとどうなる?
- 3.1.手形サイト60日以内への短縮は2024年11月から運用開始
- 3.2.決済期間の短縮は電子記録債権、一括決済方式も対象
- 3.3.決済期間が60日を超えると下請法・建設業法違反の可能性
- 3.4.紙の手形の廃止が2027年3月末に予定されています
- 4.約束手形の60日以内への短縮における対応策5選
- 4.1.振出手形のサイト短縮に取り組む
- 4.2.割引料負担の協議
- 4.3.でんさいの活用
- 4.4.必要となる運転資金の確保
- 4.5.資金繰りの予測は資金繰り表の作成がベスト
- 5.約束手形の決済日に関するよくある質問
- 5.1.手形の支払期日はどう決まる?
- 5.2.手形の支払期日はいつからいつまでの期間を指す?
- 5.3.支払期日が過ぎた手形は回収できる?
- 6.資金繰り改善策の立案はF&M Clubがサポート
そもそも約束手形とは
約束手形とは、特定の期日に一定の金額を支払うことを約束する有価証券です。約束手形は主に商取引で用いられ、売買代金の支払や資金調達の手段として活用されます。
約束手形の発行者(振出人)は受取人に対して将来の支払を約束し、受取人は手形を第三者に譲渡することも可能です。そのため、手形は信用取引の一環として流通し、企業間の資金繰りを円滑にする役割を果たします。
ただし、手形の不渡り(支払不能)リスクも存在するため、取引先の信用力を十分に確認してから手続きをおこなわなければなりません。また、手形の発行や受け取りには商法や手形法などの法的規制が適用され、法令を遵守した手続きと管理が求められます。近年では電子手形の導入も進んでペーパーレス化が図られていますが、依然として紙の手形も多く利用されており、両方の手続きに対応できる知識が必要です。
約束手形の決済期間が120日以内から60日以内へ短縮
2024年2月28日、政府は約束手形の決済期間(振出日から決済日までの期間)を60日以内とする運用を開始予定であると公式に発表しました。
下請法において妥当ではない支払手段とされる『割引困難な手形』の基準を見直し、決済期間120日(繊維業は90日)以内としていた運用を、決済期間60日以内とする予定です。
決済期間が60日を超える手形を振り出す企業に対しては、公正取引委員会が指導するとしています。
政府は、約束手形の決済期間を短縮することで、手形の受取人である中小企業が現金化を待つ期間を短くし、その間の資金調達の負担を軽くすることがねらいです。
約束手形の決済期間が短くなることで生まれるメリットは次のとおりです。
- 手形が決済されるまでの期間の借入など資金調達が不要または短期間で済む
- 割引料が減る
- 銀行での手形割引をしやすくなる
【参考】手形が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導基準の変更について(2024年2月)|公正取引委員会
手形サイト60日はいつから?でんさいは?違反するとどうなる?
約束手形の決済期間(手形のサイト)を60日以内とする運用は2024年11月1日から開始されています。
でんさい(電子記録債権)や一括決済方式についても、2024年11月1日より手形と同様に「60日以内」の運用が開始されています。運用基準(60日以内)を超えるサイト設定は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)に抵触する可能性があるため、十分にご注意ください。
手形サイト60日以内への短縮は2024年11月から運用開始
手形サイト60日以内への短縮については、2024年3月28日までの意見公募を経て、同年4月に新たな指導基準が決定されました。周知期間を経たうえで、2024年11月1日から運用が開始されています。
決済期間の短縮は電子記録債権、一括決済方式も対象
手形の決済期間を60日以内とする新指導基準は、電子記録債権や一括決済方式についても適用されます。
電子記録債権や一括決済方式を支払手段とする場合の指導方針についても同時に改正される予定です。
決済期間が60日を超えると下請法・建設業法違反の可能性
約束手形の決済期間が60日超の手形によって支払をおこなった場合、下請法に基づき指導を受けることとなります。
また建設業法についても、建設業法令遵守ガイドラインが改正される予定です。手形サイトが60日を超える手形による支払は、建設業法第24条の6第3項に違反となるおそれがあります。
【参考】発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第7版)|国土交通省
紙の手形の廃止が2027年3月末に予定されています
今回の手形サイト短縮化に続き、政府は2026年度末(2027年3月末)までに紙の約束手形を全廃、小切手を電子化する方針を掲げています。
この動きを受けて、産業界、金融界において『自主行動計画』が策定されています。金融界においては『手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画』に基づき、2027年3月末までに紙の手形・小切手の交換をゼロとする方針を打ち出しています。
【参考】手形・小切手の廃止/電子化について|全国銀行協会
約束手形の60日以内への短縮における対応策5選
約束手形の決済期間が60日以内となることの影響は、手形を振り出す支払側だけでなく、受取側においても影響があります。ポイントは次の3点です。
- 支払方法の変更、支払サイトの短縮による資金繰りにおける影響
- 割引料の負担を手形発行者側が負担することの協議
- 2027年3月までにおこなわれる紙の手形・小切手の廃止を見据えた対応
振出手形のサイト短縮に取り組む
政府は、支払側(発注者)からの支払をなるべく現金支払とすることを目指しています。
現金支払が困難な場合の措置として手形サイトの短縮をあげているため、約束手形の決済サイトが60日以上となっている場合は60日以内へ短縮することが求められます。
手形サイトの短縮はそれほど進んでいなかったため、これから急速に広まることが予測されます。
【引用】下請等中小企業の取引条件改善への取組について|中小企業庁
手形のサイトを短縮することにより決済日が前倒しされ、資金繰りが圧迫されることとなります。
また下請法の適用を受けない取引に関する手形のサイトについても60日以内が目安となることが予測されています。手形サイトが60日を超える手形については決済までの期間が長いことを嫌がられる可能性が高まるためです。
割引料負担の協議
今回の手形サイトを60日以内とする運用見直しとともに、従来は受取人が負担していた割引料を手形によって支払う側が負担するように求めることが議論されています。
手形割引料を手形による支払代金に上乗せして支払うことが今後も求められると予測されています。
【引用】下請等中小企業の取引条件改善への取組について|中小企業庁
でんさいの活用
紙の手形の廃止を見据えて、振込による支払またはでんさいへの切り替えが進んでいます。
現金振込による支払をおこなうと資金繰りの負担が大きい場合は、でんさいの利用が効果的です。
でんさいは紙の手形のデメリットである紛失リスクや印紙代の負担がない、経理事務を削減できるなど、支払側だけでなく受取側においてもメリットが多いシステムであるため、早期の導入が望ましいです。
必要となる運転資金の確保
支払側においては、手形サイトの短縮や支払の現金化に伴い運転資金を確保する必要が発生します。
支払手形のサイトを60日以内とする場合や手形支払を全廃する場合は、優遇利率が適用される国の制度融資(日本政策金融公庫が取り扱う企業活力強化資金制度)の対象となります。
資金繰りの予測は資金繰り表の作成がベスト
決済サイトの短縮や現金化は資金繰りへの影響が大きいため、自社の資金繰りを検証したうえで取り組む必要があります。
資金繰りを的確に把握するためには資金繰り表の作成が最善です。
自社で資金繰り表を作成したことがない企業は専門家のアドバイスを受けながら作成してみましょう。
約束手形の決済日に関するよくある質問
約束手形の決済日に関するよくある質問として、以下の3つを紹介します。
- 手形の支払期日はどう決まる?
- 手形の支払期日はいつからいつまでの期間を指す?
- 支払期日が過ぎた手形は回収できる?
約束手形の決済日で疑問点がある場合は、上記質問への回答を参考にしてください。
手形の支払期日はどう決まる?
手形の支払期日は、振出人と受取人の合意によって決定されます。今までは取引の性質や業種、取引先との関係性などを考慮して30日・60日・90日・120日といった期間が設定されるケースが多くありました。しかし、2024年11月以降は上記の期間が一律60日以内に短縮されたため、手形サイトが60日を超える場合は行政指導の対象となります。
手形の支払期日はいつからいつまでの期間を指す?
手形の支払期日は、手形の振出日(手形が発行された日)から起算して合意された期間後の日付を指します。たとえば、振出日が4月1日で、支払期日が60日後と設定された場合、支払期日は5月31日です。
上記の期間を「手形サイト」と呼び、手形サイトは振出人と受取人の合意によって60日以内で定める必要があります。なお、手形の支払期日が休日や金融機関の休業日にあたる場合は、翌営業日が実際の支払日となる点に注意が必要です。
支払期日が過ぎた手形は回収できる?
期日を過ぎた手形でも法的な効力は失われませんが、金融機関での現金化は支払期日を含めて3営業日以内におこなう必要があります。 上記の期間を過ぎると金融機関での現金化はできなくなりますが、手形自体の効力は維持されます。そのため、支払期日を過ぎた手形を保有している場合は速やかに振出人へ連絡して直接支払を求めるか、手形の再発行を依頼しなければなりません。
資金繰り改善策の立案はF&M Clubがサポート
『手形サイトを短くしたいが、自社の資金繰りへの影響がわからない』
『でんさいの導入や経理システムの刷新で使える補助金・助成金はあるの?』
『資金繰りが厳しいので改善策を検討したい』
中小企業の資金繰り改善策のご相談はF&M Clubへご相談ください。
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