なぜ中小企業は人手不足の割合が多い?原因と解決策の例7つ
昨今、中小企業のうち人手が不足していると感じている企業が増加しています。
人手不足は、商品・サービスの質低下や売上減少・倒産のリスクなど、中小企業の経営に影響を及ぼすため、早めの対策が必要です。
本記事では、中小企業における人手不足の原因や影響、解決策などについて解説します。
目次[非表示]
- 1.データでみる中小企業における人手不足の割合
- 2.中小企業が人手不足に陥る主な原因
- 2.1.少子高齢化による労働力人口の変化
- 2.2.転職/早期退職の傾向
- 2.3.業界へのイメージ
- 3.人手不足が中小企業へ与える影響
- 3.1.商品・サービスの質低下
- 3.2.売上減少・倒産のリスク
- 3.3.離職率の上昇
- 4.中小企業の人手不足の解決策7つ
- 4.1.1.採用活動や人材育成制度を見直す
- 4.2.2.職場環境を改善する
- 4.3.3.業務効率化を図る
- 4.4.4.DXを推進する
- 4.5.5.アウトソーシングを利用する
- 4.6. 6.外国人を採用する
- 4.7.7.補助金や助成金を活用する
- 5.まとめ
データでみる中小企業における人手不足の割合
2022年2月に行われた日本商工会議所の「人手不足の状況および従業員への研修・教育訓練に関する調査」によると、人手が不足していると回答した中小企業は60.7%です。
前年2021年2月に行われた調査よりも16.3ポイント増加しています(※1)。
同調査において、人手不足を感じる中小企業の対応方法は以下の順に多いです。
- 正社員を増やす:72.3%
- 社員の能力開発による生産性向上:35.9%
- IT化、設備投資による業務効率化・自動化:35.4%
- 業務プロセスの改善による効率化:32.1%
また、中小企業庁及び中小機構の「中小企業景況調査」では、産業や業種ごとに人手不足感が異なります。
特に建設業や小売業、宿泊業、運輸業における従業員不足が深刻です(※2)。
※1:【参考】「人手不足の状況および従業員への研修・教育訓練に関する調査」の集計結果について~人手不足の状況はコロナ感染拡大直前の水準まで戻り、運輸・建設業の人手不足の割合は大きく増加。一方、宿泊業では一部に人手過剰感が残る~ | 日本商工会議所
※2:【参考】中小企業景況調査|中小企業庁及び中小機構
中小企業が人手不足に陥る主な原因
中小企業が人手不足に陥る主な原因として、以下3つがあげられます。
- 少子高齢化による労働力人口の変化
- 転職/早期退職の傾向
- 業界へのイメージ
少子高齢化による労働力人口の変化
日本は少子高齢化の影響により、労働力人口は減少傾向にあります。独立行政法人労働政策研究・研修機構によると、2040年の労働力人口は5,460〜6,195万人と推定されています。
特に若年層や女性の雇用が難しく、実力があり採用に積極的な中小企業においても、知名度などを理由に人材確保が困難と言われています。
【参考】資料シリーズNo.209「労働力需給の推計―労働力需給モデル(2018年度版)による将来推計―」|独立行政法人労働政策研究・研修機構
転職/早期退職の傾向
中小企業は大企業と比べると経営が不安定な傾向にあり、人手不足となりやすいです。
資金繰りや売上の拡大が難しくなると、従業員によっては人員削減や賞与の減額、倒産などリスクを懸念します。
そのため、今後のキャリアや生活に不安を抱き、転職や早期転職を考えるケースがあります。
特にコロナ禍では中小企業の雇用状況が悪化したことで、転職市場も活発化しています。
様々な要因が相まって中小企業は人材流出に直面しやすいと言えるでしょう。
業界へのイメージ
特定の産業分野において、中小企業は労働条件が厳しいイメージがあることも人手不足に陥る原因の1つです。
実際に経済産業省によると、中小企業の離職理由として、収入面や労働条件の厳しさをあげています。
特に人手不足が深刻化するサービス業などの産業分野では労働時間が長く給与が少ない傾向にあるため、若年層から敬遠される可能性があります。
【参考】2 求職者の就業動向と離職・入職の理由|経済産業省
人手不足が中小企業へ与える影響
人手不足が中小企業へ与える影響として、以下3つがあげられます。
- 売上減少・倒産のリスク
- 商品・サービスの質低下
- 離職率の上昇
商品・サービスの質低下
人手不足の状態では、製品の開発や改善、サービスの提供や対応などに十分な時間や労力を割くことは難しいです。また、従業員のモチベーションや能力も低下し、ミスやクレームが増える可能性があります。
自社製品やサービスの品質が低下してしまい、顧客満足度やリピート率も低下するため、市場での競争力を失いかねません。また、口コミやSNSなどで悪評が広まると、中小企業のブランドイメージも損なわれます。
売上減少・倒産のリスク
中小企業の人手不足が続くと、商品やサービスの供給量や品質が低下し、顧客のニーズに応えられなくなります。収益性に悪影響を与え、売上減少を招く可能性があるでしょう。
売上が減少すれば、経営資源の確保や事業の拡大が難しくなり、資金繰りにも圧迫感が生じるかもしれません。
人材確保や教育にかかるコストがかかるなど、収益力が低下してしまうことで、経営安定性や持続可能性を損なうリスクがあり、場合によっては倒産のリスクがあります。
離職率の上昇
中小企業の人手不足が深刻化すると、従業員は過重な労働や多岐にわたる業務を強いられます。
また、給与や福利厚生などの待遇も改善しづらくなるため、従業員は自社へ不満をため込む場合もあります。
そのような状態が続くと、従業員は自身の健康やキャリアを守るため他社へ転職や退職する可能性が高まり、中小企業は離職率が上昇するリスクを抱えます。
離職した従業員に代わる新たな人材を確保することは困難であり、生産力や知識・ノウハウの喪失につながります。
結果的に、中小企業は人手不足の影響により、他社との競争力を損なう可能性があるでしょう。
中小企業の人手不足の解決策7つ
中小企業の人手不足における解決策として、以下7つの例があげられます。
- 採用活動や人材育成制度を見直す
- 職場環境を改善する
- 業務効率化を図る
- DXを推進する
- アウトソーシングを利用する
- 外国人を採用する
- 補助金や助成金を活用する
1.採用活動や人材育成制度を見直す
採用活動や人材育成制度を見直し、求職者のニーズや志向に合わせてPRや応募方法を工夫しましょう。
中小企業として方向性を明確に示し、求める人材へ的確にアプローチすることで、入社後のミスマッチ防止につながります。
たとえば、求める人材像に合わせてコーポレートサイトや採用サイトを刷新したり、SNSで自社の雰囲気をアピールしたりすることがあげられます。
また、人材育成制度では、スキルアップやキャリア形成を支援する具体的なプログラムを作成しましょう。具体的にはOJTやメンター制度、資格取得のサポートなどがあげられます。
中小企業は採用活動の見直しや人材育成制度の拡充に取り組むことで、従業員の定着率や満足度向上が見込めます。
中小企業の採用活動におすすめのサービスや人材育成における課題解決のポイントについては、下記で詳しく解説しているのであわせてお読みください。
2.職場環境を改善する
職場環境を改善し、従業員に配慮した働きやすい環境を構築することで、ストレス軽減やワークライフバランスの実現につながります。
具体的な改善ポイントは以下の通りです。
オフィス環境:空調や照明、機器や備品などの整備、無駄のないレイアウトをデザインするなど、物理的にストレスのない環境づくりを行う。
福利厚生制度:食堂や社内託児所の設置、資格取得の手当支給など、従業員のニーズに適応する制度を導入する。
人事評価制度:賞与や昇給の条件を明確に定め、わかりやすい評価基準を設定する。
コミュニケーションやフィードバックの充実:ミーティングなどで業務内容や目標設定などの共有や、1on1や面談などで相談を行う。心身のストレスがない働き方ができる職場環境は、従業員の離職率低下が見込めるでしょう。
従業員の評価方法については、下記で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
3.業務効率化を図る
中小企業は業務効率化を図ることで、人手不足によって発生する作業の遅れやミス、重複や無駄などを減らせます。
たとえば、業務の流れや手順を分析し、必要なものだけに絞り込んだり、簡素化したりすることで、作業時間やコストを抑えられます。また、テンプレートやマニュアルを用意すれば、新人教育にかかる人件費削減や業務の属人化の防止が期待できるでしょう。
無駄な作業を削減することで、従業員の負担が軽減やモチベーションアップにつながり、生産性向上が見込めます。
4.DXを推進する
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AIや自動化技術、データ分析などのデジタル化を進め、業務プロセスの変革や競争力の向上を目指す取り組みです。
たとえば、バックオフィス業務にクラウドやAIなどの技術を導入すれば、紙ベースの業務を削減し、煩雑なデータ入力や書類管理が必要なくなります。これにより、大幅な作業効率アップやリモートワークの推進が実現できるでしょう。
中小企業はDXにより、最新技術を積極的に取り入れたり従業員の働きやすさを重要視したりすることで、企業としてのイメージを高めることにつながります。
5.アウトソーシングを利用する
中小企業はアウトソーシングを利用することで、人手不足による業務の遅延や品質の低下を防げます。
たとえば、コールセンターや物流などのフロントオフィス業務では、コールセンター会社や物流会社などに委託することで、顧客対応や商品配送のスピードや品質の向上が期待できます。
また、経理における単純な作業を外部に委託すれば、経営分析や財務計画作成などのコア業務に注力するリソースを生み出すことが可能です。人事の採用活動においては、求人票の作成を業者に依頼することで、求職者の選考に労力をかける余裕が生まれるでしょう。
バックオフィスの人手不足解消や活性化を目指す方は、ぜひ下記ページをあわせてお読みください。
6.外国人を採用する
中小企業は、外国人の積極的な採用も人手不足の解決につながります。また、多様性や国際性を高める企業として社会に認知され、ブランドイメージや社会的責任の向上効果も期待できるでしょう。
現在日本政府は、人手不足の深刻化に対応するため、特定の産業分野を対象に技能実習生や特定技能の制度を導入しています。飲食業や宿泊業、建設業など人材を確保しにくい中小企業は、補助金や助成金を活用して外国人を採用することが可能です。
具体的な要件や申請手続きは複雑であるため、専門家にアドバイスをもらいながら準備を進めることを推奨します。
【参考】外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策 (令和4年度改訂)(案)|首相官邸ホームページ
7.補助金や助成金を活用する
補助金や助成金を活用することで、制度を活用することで人手不足対策にかかる費用負担を軽減できます。
たとえば、人材開発支援助成金における「高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練」では、e-ラーニングの導入や海外を含む大学院での研修にかかる費用を抑えられます。具体的には、時給960円や必要経費の75%の支援を受けることが可能です。
上記のように、中小企業の方が大企業よりも経費助成率が高いこともあるので、人手不足に対応したくても資金に余裕がないと悩む場合は制度の活用を検討しましょう。
政府の補助金・助成金については、下記ページでまとめているのでぜひご覧ください。
【参考】企業内の人材育成を応援! 人材開発支援助成金「人への投資促進コース」 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
まとめ
人手不足は、商品・サービスの質低下や売上減少・倒産のリスクなど、中小企業の経営に深刻な影響を及ぼします。中小企業は人手不足への対応策を講じる必要があります。企業によって適切な解決策は異なるので、自社の課題を明確にしておくことが重要です。
人手不足に悩まされている中小企業経営者は、本記事を参考に解決策を検討してください。