就業規則を変更するには?届出期限や提出方法、必要書類までわかりやすく解説
就業規則は、常時10人以上の従業員を雇う事業所は、作成し、労働監督署に届け出る必要がありますが、就業規則を変更する時も、変更届を届け出なければなりません。
就業規則には「給与規程」など、従業員とのトラブルが起きやすい項目を扱うため、定期的な管理や必要な見直しをおこないましょう。
目次[非表示]
- 1.就業規則の作成・変更には提出義務があります
- 1.1.給与規程を変更する場合
- 1.2.就業時間を変更する場合
- 1.3.固定残業代制度(みなし残業)を新設する場合
- 1.4. 手当を新設する場合
- 1.5.新たな勤務体制を導入する場合
- 1.6.法改正に伴い変更する場合
- 1.7.そのほか変更する必要がある場合
- 2.就業規則を変更する際は届出が必要
- 2.1.届出を怠った場合
- 2.2.変更届の提出期限はいつまで?
- 3.就業規則変更時のおさえるべきポイント
- 3.1.従業員に不利益な内容になっていないか
- 3.1.1.給与の減額・手当の廃止の場合
- 3.1.2.労働日数・休日日数の変更の場合
- 3.1.3.みなし残業代の廃止の場合
- 3.2.現行の法制度に沿った内容になっているか
- 4.給与規程の変更は特に注意
- 4.1.就業規則は従業員への周知が重要
- 5.就業規則変更時に必要な書類
- 6.就業規則の変更手順
- 6.1.変更案の作成
- 6.2.従業員代表者の意見書を作成
- 6.3.労働基準監督署へ変更届を提出、社内での周知を徹底
- 6.4.押印は廃止
- 7.F&M Clubの就業規則診断サポート
- 8.まとめ
就業規則の作成・変更には提出義務があります
就業規則の変更が必要な主な場面について解説します。
給与規程を変更する場合
法改正や経営状況の変化にともない、「給与規程」を変更する場合は、就業規則の変更手続きが必要です。
たとえば「最低賃金法」の改定により最低賃金が上がり、現行の給与規程が最低賃金を下回っている場合には、給与規程を変更しなければなりません。
また、給与規程は、雇用形態別の給与規程など、就業規則とは別に作成されている場合もありますが、この場合の給与規程は就業規則に紐づいた付属規程とみなされます。
そのため、就業規則自体に変更がなくても給与規程に変更があった場合は、変更手続きが必要となります。
事業の経営状況や働き方の多様化にともない、給与規定や就業時間、公休日などを変更する場合は、就業規則の変更が必要です。近年は、リモートワークなどの増加により、「在宅勤務制度」を設ける企業も増えています。そのように新たな勤務制度を設ける場合は、就業規則を改正し、適切に管理しましょう。
就業時間を変更する場合
始業・終業時間や休憩時間など、「就業時間」に関する事項を変更する場合は、就業規則の変更手続きが必要です。
就業時間を変更する場合、雇用形態によって、異なる就業時間を採用することもあるため、新たな就業時間が適用される対象者も明記しましょう。
固定残業代制度(みなし残業)を新設する場合
近年、法改正により残業時間が規制されるなど、残業に関する管理はますます厳しく難しいものとなっています。
そのため、多くの企業では、残業代としてあらかじめ決められた一定額を、固定給与に上乗せして支払う「固定残業代制度」(みなし残業代制度)を導入しています。
固定残業代も給与規程にかかわる事項であるため、「固定残業代制度」を新設・変更する際は、就業規則の変更手続きが必要です。
手当を新設する場合
「住宅手当」や「扶養(家族)手当」など、企業が独自に定める手当を新設または廃止する場合も、「給与規程」にかかわる事項であるため、就業規則の変更手続きが必要です。
新たな勤務体制を導入する場合
近年、働き方の多様化にともない、テレワークや在宅勤務制度、フレックスタイム制など、新たな勤務体制を導入する企業が増えています。
このような新しい制度を導入する際も、就業規則の変更手続きが必要です。
法改正に伴い変更する場合
労働基準法など、雇用に関する法改正にともない、就業規則も変更する必要があります。近年では、パートタイマーや、契約社員などの有期雇用労働者に関する法制度も見直されており、パートタイマーや契約社員などの雇用条件について、就業規則で明記していないと、トラブルにつながるリスクが高くなります。労働法に関する情報を把握し、就業規則が現行の法制度に沿った内容になっているか、定期的に見直す習慣をつけることが大切です。
そのほか変更する必要がある場合
従業員とのトラブルで特に多い問題は、給与などの待遇や、入退社時に関することです。
給与や待遇、入社時、退社時などについて、就業規則にしっかりと明記しておくことで、トラブルの回避につながり、就業規則が「抑止力」として機能します。
従業員とのトラブルを回避するためにも、就業規則の管理、見直し、変更は重要です。
【関連記事】就業規則の見直しで従業員トラブルを回避しましょう
就業規則を変更する際は届出が必要
就業規則を作成、変更した際は、事業所所轄の労働基準監督署に届出を提出する必要があります。
適切な手続きがなされていないと、トラブルになりかねませんので、就業規則の変更時は、取り扱いに十分注意し、必要な手続きをおこないましょう。
届出を怠った場合
労働基準法に従い就業規則の作成、および労働基準監督署への届出を怠った場合、30万円以下の罰金が科せられる罰則があり、就業規則の変更、および届出を怠った場合にも、同様の罰則が適用されるため、注意が必要です。
変更届の提出期限はいつまで?
就業規則の変更届の提出期限について、明確な期限は設けられていませんが、「遅滞なく」提出することが義務づけられています。そのため、就業規則を変更した際は、常識の範囲内で、速やかに提出しましょう。
就業規則変更時のおさえるべきポイント
就業規則を変更する際は、事業者と従業員の両者にとってトラブルが起きないように、いくつか注意点をおさえておきましょう。
従業員に不利益な内容になっていないか
労働契約法第9条では「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と定められており、従業員の合意なく、従業員にとって不利益となるような就業規則の変更は原則禁止されています。しかし、労働契約法第10条では例外的に、就業規則の変更に「合理性」があり、従業員に就業規則を「周知」している場合に限り、従業員にとって不利益とみなされる変更であっても、事業者による就業規則の変更が認められる場合もあります。
給与の減額・手当の廃止の場合
給与や手当に関する事項は、従業員とのトラブルがもっとも起こりやすい問題です。
トラブルを回避するためには、給与減額や手当廃止に関する計画を立て、改正後の規程(規定)が、同業他社と比較するなどして、明らかに従業員にとって不利益となる内容になっていないかを確認します。
また、給与減額や手当廃止などについて、従業員からの同意を得るため、説明会などを開催し、トラブル回避につなげましょう。
労働日数・休日日数の変更の場合
労働日数や休日日数の変更は、給与計算にかかわる部分でもあるため、労働トラブルや法令違反とならないよう、変更によりどのような影響が起きるか、計画書を作成、確認したうえで変更をおこないましょう。
みなし残業代の廃止の場合
みなし残業代を廃止する場合は、以下の点に注意して変更手続きをおこないましょう。
- みなし残業代の廃止により、著しく給与が低下するなど、従業員に不利益が生じる際は、一定期間手当を支給し、経過措置をおこないます。この際、あきらかに短い期間である場合、経過措置としてみなされない場合もあるため、注意しましょう。
- 労働契約法では、「労働条件の変更について、合理性を有する場合は労働者の同意なく就業規則を変更できる」とされています。
そのため、みなし残業代の廃止が合理性を有していると証明するために、みなし残業時間と実績残業時間について、管理・確認しておく必要があります。
企業の経営状況やさまざまな事情によっては、やむを得ず、給与の改定をはじめとする労働条件の変更を必要とする場合もあるため、従業員全員に受け入れられるような就業規則を策定することが難しい部分でもあります。
就業規則の変更に、「合理性」があるかどうかの判断は、「企業の存続にかかわる程度」や、「従業員に及ぼす影響の程度」などから判断されます。従業員とのトラブルリスクも考慮する必要がありますが、企業の存続が重要なため、状況に応じて、あからさまに従業員にとって不利益となるような就業規則の変更をしないように気をつけましょう。
現行の法制度に沿った内容になっているか
就業規則を変更する際は、変更後の内容が、現行の法制度に沿った内容となっているかについても、注意が必要です。
従業員の雇用、および就業規則にかかわる法律は、「労働基準法」、「労働契約法」、「パートタイム・有期雇用労働法」、「男女雇用機会均等法」など多数あり、どの法律も定期的に見直し、改正がおこなわれています。法改正にともなう労働条件について把握ができておらず、気づかないうちに労働法に反するようなおこないをしている場合もあるかもしれません。
企業の信頼性を守り、労働条件を巡るトラブルを引き起こさないためにも、常に法改正について情報をチェックし、定期的な就業規則の見直し、改正をおこなうようにしましょう。
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給与規程の変更は特に注意
就業規則を変更する際、「給与規程の変更」は特に注意が必要です。
給与や諸手当に関する事項は、従業員との労働トラブルで、1番トラブルになりやすい問題です。
給与は一度定めてしまうと既得権として認められやすい上位の労働条件であり、不透明感が際立つ現代の社会経済情勢で、あまり先走って豪華な規程(規定)を設けると就業規則の最低基準効(就業規則に定めをしたらその定めを下回るものは無効とされ、就業規則で定めた内容とされる)が働くため、企業の現実的な将来性を踏まえたうえで、身の丈に合った給与規程にしましょう。
就業規則は従業員への周知が重要
就業規則は、作成し、労働基準監督署へ届け出るまでが義務ではなく、社内の従業員に周知させるまでが義務とされており、「周知義務」を怠った場合も、30万円以下の罰金が科せられる罰則が適用されます。
従業員への周知方法は、
- 社内の見やすい場所に掲示する
- 書面で交付する
- クラウドなど、電子データで保存し従業員がアクセス、閲覧できる状態にする
方法があります。
就業規則は作成および変更して終わりではなく、従業員が把握、理解することによって機能するものです。就業規則作成および変更後は、社内周知の管理を徹底し、従業員から就業規則の閲覧を求められた場合に、対応できるようにしておきましょう。
就業規則変更時に必要な書類
就業規則変更時は、
- 就業規則(変更)届
- 意見書
- 変更後の就業規則
が必要です。
必要な届出書類について、所定の様式はありませんが、厚生労働省などのサイトから、テンプレートをダウンロードできます。
また、それぞれ2部ずつ提出すると、1部は会社控えとして、労働基準監督署の印が押印されたものが返却されるため、大切に保管しましょう。
就業規則(変更)届
就業規則(変更)届では、変更箇所を抜粋して記入し、事業場名などの必要情報を記入します。また、パートタイマーや契約社員専用の就業規則を別途作成している場合は、それぞれの就業規則に応じて変更届が必要となります。
【引用元】厚生労働省
意見書
意見書は、従業員の過半数の代表者に意見を聞いた意見などを記す書面です。
とくに意見などがなかった場合は、「特になし」と記載し、労働組合に加入している場合は、組合の名称、該当しない場合は代表者の名前を記名し、代表者の選出方法についても記載します。
【引用元】厚生労働省
変更後の就業規則
「変更届」、「意見書」のほかに、変更後の就業規則も提出が必要です。
就業規則の変更手順
就業規則を変更する際の手順は、
- 変更案の作成
- 代表者の意見書を作成
- 変更届を提出
- 社内で周知
という流れです。
変更案の作成
就業規則を変更する際は、まず、総務部や人事部などの管理部門が変更案の草案を作成します。雇用形態の異なる従業員を雇っている場合は、従業員の雇用形態ごとに、就業規則を作成するなど、適用範囲を明確にしておきましょう。草案ができたら、労働法に違反しているような内容はないか、法律に沿った内容になっているかなど、担当者(専門員)が確認し、役員会議などを通し、経営陣の承認を得ます。
従業員代表者の意見書を作成
意見書を作成する際は、労働者の過半数を代表する者の意見を聞き、まとめる必要があります。
労働組合に加入している場合は、組合の代表者が該当しますが、労働組合がない場合は、話し合いや投票など、公平な方法によって代表者を選出する必要があります。
労働基準監督署へ変更届を提出、社内での周知を徹底
必要な書類が揃ったら、事業所所轄の労働基準監督署へ提出し、従業員への周知を徹底します。
押印は廃止
従来、意見書には押印が必要とされていましたが、令和3年4月1日以降の届出より、押印は不要(廃止)とされました。
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まとめ
企業が就業規則を管理していくうえで、法改正や働き方の多様化にともない、就業規則の変更手続きが必要となる場面は多数あります。
変更届の提出を怠った場合、30万円以下の罰金が科せられることや、法改正に沿った適切な就業規則が整備されていない場合、法令違反となることもあるため、日頃から、就業規則の管理を徹底しなければなりません。
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