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パワハラで慰謝料を請求されたら?慰謝料の相場や企業の責任について解説

企業において、セクハラやパワハラなど「ハラスメント」による労働トラブルは、適切に取り扱うべき問題です。

なかでもパワハラについては、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が義務化されるなど、年々厳しくなっています。

パワハラによるトラブルでは、企業が慰謝料を請求されることもあるため十分注意が必要です。

企業がパワハラで慰謝料を請求された場合の慰謝料の相場や企業責任について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.パワハラの慰謝料とは?
    1. 1.1.パワハラにおける企業の責任
  2. 2.パワハラの慰謝料は事案によって異なる
    1. 2.1.【慰謝料請求相場例1】暴行や自殺などで訴えられた場合
    2. 2.2.【慰謝料請求事相場例2】侮辱的暴言や嫌がらせなどで訴えられた場合
    3. 2.3.【慰謝料請求事相場例3】うつ病や休職などで訴えられた場合
  3. 3.パワハラで慰謝料を請求されたときの企業が取るべき対応とは?
    1. 3.1.可能な限り訴訟になる前に解決する
  4. 4.被害者からパワハラで訴訟を起こされた場合はどう対応すべき?
    1. 4.1.被害者が主張するパワハラの事実が存在しない場合
    2. 4.2.被害者が主張するパワハラの事実が不法行為に該当しない場合
    3. 4.3.パワハラの事実が被害者の態度にも起因する場合
  5. 5.パワハラの慰謝料に関して示談となる場合における対応と相場
  6. 6.パワハラで慰謝料を請求されないためには
    1. 6.1.パワハラ防止対策の強化
    2. 6.2.就業規則などの規定管理
  7. 7.F&M Club の就業規則診断サービス・まかせて規定管理
    1. 7.1.F&M Clubでパワハラ以外のすべての経営課題も解決
  8. 8.まとめ

パワハラの慰謝料とは?

パワハラ被害による損害賠償項目には、「治療費」「休業損害」などさまざまなものがありますが、「慰謝料」はそれらのひとつであり、「精神的な被害」についての賠償項目です。


パワハラにおける企業の責任

パワハラ被害者は、加害者本人だけでなく、「企業に対しても慰謝料の請求が可能」です。

パワハラ加害者に対する損害賠償請求は、「不法行為」を根拠とするものに対し、企業に対する損害賠償請求は、「使用者責任」や「安全配慮義務違反」が根拠となっています。

使用者責任

使用者責任とは「民法第715条」で定められた、従業員が他者に損害を与えた場合、加害者である従業員が、被害者に対する損害賠償責任を負うだけでなく、使用者である企業も同様に負う損害賠償責任を指します。

【民法第715条】

「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」

【参考】民法|e-gov

・安全配慮義務違反

安全配慮義務(違反)とは、「労働契約法第5条」で定められた、企業の従業員に対する「安全と健康を確保しつつ就業するために必要な配慮義務」を指します。

【労働契約法第5条】

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」

【参考】労働契約法|e-gov


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パワハラの慰謝料は事案によって異なる

パワハラの慰謝料は、内容や性質によって金額はさまざまであり、決まった金額はありません。

「会社責任が認められた」裁判例を参考に、パワハラの慰謝料について紹介します。


【慰謝料請求相場例1】暴行や自殺などで訴えられた場合

平成26年の「メイコウアドヴァンス事件」では、パワハラ、暴行等と自殺との間に、相当な因果関係があったとして、被告会社および会社役員1名に対し、合計約5400万円の損害賠償が命じられました。



案の概要
金属ほうろう加工業を営む会社(被告)の従業員(死亡当時52歳 男性)が、会社役員2名から日常的な暴行やパワハラ、退職勧奨などを受けたことが原因で自殺したとして、当該従業員の遺族である妻子が会社および会社役員2名に対し、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条、715条、会社法350条)訴訟を提起した事案
判決
会社役員1名によるパワハラ、暴行、退職強要等の不法行為と従業員の死亡との間に相当因果関係があったことを認め、被告会社及び会社役員1名に対し、合計5400万円余りの損害賠償を命じた

【参考】ハラスメント裁判事例【メイコウアドヴァンス事件】|厚生労働省


【慰謝料請求事相場例2】侮辱的暴言や嫌がらせなどで訴えられた場合

平成26年の「千葉県がんセンター事件」では、所属部の問題点を上申したことにより報復を受け、退職を余儀なくされたとして200万円の慰謝料が請求されました。


事案の概要

県(被告、控訴人)が設置するがんセンター手術管理部に勤務する麻酔科医であった原告(被控訴人)が、直属の上司である手術管理部長を通さずに同部の問題点をセンター長に上申したところ、当該部長から、一切の手術から外すなどの報復を受けて退職を余儀なくさせられたとして、県に対し、国家賠償法1条1項または民法の使用者責任(同法715条)に基づき、200万円の慰謝料の支払いを請求した事案

判決
原審は県に対し慰謝料50万円の支払いを命じたが、控訴審である本判決はその金額を30万円に減じた

【参考】ハラスメント裁判事例【千葉県がんセンター事件】|厚生労働省


【慰謝料請求事相場例3】うつ病や休職などで訴えられた場合

平成22年の「日本ファンド事件」では、上司から受けたパワハラにより、抑うつ状態を発症したとして、慰謝料とともに治療費および休業損害も請求されました。


概要

消費者金融会社に勤務していた従業員3名が、上司および会社を被告として(以下「被告上司」および「被告会社」)パワハラによる損害賠償請求訴訟を提起した事案。

原告のうち1名は、被告上司のパワハラにより、抑うつ状態を発症したとして、慰謝料とともに治療費及び休業損害も請求した
判決
原告Aについては抑うつ状態発症、休職とパワハラ行為の因果関係を認め、慰謝料60万円に加えて治療費及び休業損害を、原告Bについては慰謝料40万円を、原告Cについては慰謝料10万円の支払いを、被告上司および被告会社に命じた

【参考】ハラスメント裁判事例【日本ファンド事件】|厚生労働省



パワハラで慰謝料を請求されたときの企業が取るべき対応とは?

上記裁判例で紹介したように、パワハラによる慰謝料は内容や性質によってさまざまですが、なかには高額な慰謝料が「使用者責任」として請求される場合もあります。

パワハラで慰謝料を請求されたときは、「可能な限り訴訟になる前に解決する」ことが大切です。


可能な限り訴訟になる前に解決する

パワハラで慰謝料を請求され、訴訟となった場合、さまざまなデメリットが生じます。

そのため、可能な限り訴訟になる前の交渉段階で解決できるよう努めましょう。

【訴訟となった場合のデメリット】

  • 時間、労力、弁護士費用などのリスク
  • 解決までに時間がかかるリスク
  • 企業の社会的信頼が損なわれるリスク

慰謝料を請求され、訴訟となった場合、解決までにかかる時間や弁護士費用など、時間と労力が費やされるだけでなく、企業の社会的信頼が損なわれるリスクもあります。

被告側の発言がすべて正しいとは限りません。

自社で適切に「事実確認」を取るなどの調査をおこない、請求内容に納得できない場合は、根拠に基づき、しっかりと反論することが大切です。


被害者からパワハラで訴訟を起こされた場合はどう対応すべき?

職場でパワハラによる訴訟を起こされた際、被害者の主張に対する具体的な対応策を3つのケースに分けて解説します。


被害者が主張するパワハラの事実が存在しない場合

被害者からパワハラの訴えがあったものの事実が存在しないと判断される場合、企業は以下の手順で対応します。

手順
概要

①事実関係の徹底的な調査

まず、被害者からの訴えを真摯に受け止め、詳細なヒアリングをおこないます。同時に、被告とされる加害者や周囲の同僚からも事情を聴取し、客観的な証拠を収集します。

②調査結果の共有と説明

調査の結果、パワハラの事実が確認できなかった場合、経緯を被害者に丁寧に説明します。調査の過程や収集した証拠を基に、なぜパワハラと認定されなかったのかを具体的に伝えることが重要です。


被害者が主張するパワハラの事実が不法行為に該当しない場合

被害者がパワハラと感じた行為が法律上の不法行為には該当しない場合、企業は以下の手順で対応をおこなう必要があります。

手順

概要

①法的基準の確認

まず、当該行為が法律上のパワハラに該当するかを確認します。パワハラとは職場において優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えて労働者の就業環境を害する言動を指します。

②被害者への配慮と説明

たとえ法的にはパワハラと認定されなくても、被害者が精神的苦痛を感じている場合があります。被害者の感情に配慮し、適切なサポートやカウンセリングを提供するとともに法的判断の理由を分かりやすく説明します。


パワハラの事実が被害者の態度にも起因する場合

パワハラの事実が認められるものの、被害者の態度や行動にも問題があり、双方に原因があると判断される場合における対応です。

手順

概要

①双方からのヒアリング

被害者と加害者の双方から詳細なヒアリングをおこない、主張や背景を把握します。ヒアリングの際は、第三者である人事担当者や外部の専門家を交えて公平性を保つことが重要です。

②問題点の明確化と解決策の提示

ヒアリング結果を基に双方の問題点を明確化し、具体的な解決策を提示します。たとえば、コミュニケーションスキル向上のための研修や業務フローの見直しなどが考えられます。


パワハラの慰謝料に関して示談となる場合における対応と相場

示談とはトラブルの当事者同士が裁判を避け、互いに譲歩して争いを解決する合意を指します。パワハラの慰謝料に関して示談を検討する際は、支払いの前に示談書を作成する必要があります。示談書の作成には法的な知識が求められるため、専門家である弁護士に相談して問題なく進められる体制を整えることが望ましいです。
 
パワハラの慰謝料に関して示談となった際の金額は被害内容や程度により異なりますが、一般的な相場は50万〜100万円程度とされています。 ただし、特に悪質なケースや被害が深刻な場合、慰謝料が高額になるケースもあります。


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パワハラで慰謝料を請求されないためには

パワハラ問題は、企業側が適切に対策していれば「必ず起きない問題ではない」ため、非常に難しい問題です。

しかし、日頃から対策をおこなっているかいないかでは、万が一のリスクを最小限におさえることや、従業員ひとりひとりの意識改革にも影響が出るため、適切なパワハラ対策は重要といえます。

「パワハラ防止対策の強化」や「就業規則などの規定管理」を整備し、可能な限り「パワハラで慰謝料が請求されることのない職場づくり」につなげましょう。


パワハラ防止対策の強化

多くの企業では、パワハラ防止対策の一環として、パワハラ防止に向けた研修・啓発プログラムを取り入れています。

研修では「パワハラとは何か、どのようなことがパワハラに該当するのか」という基本的な概要や、「なぜ厳しく罰せられるのか」ということを、従業員に正しく理解してもらうことが目的です。

パワハラは、「ひとりひとりの理解や意識」に密接に関係しており、本人が「そんなつもりじゃなかった」場合でも、相手にとっては「パワハラ」に該当する場合も多くあります。

そのため、まずは従業員に「パワハラ」についての理解を深めてもらうことが大切です。

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就業規則などの規定管理

パワハラによるトラブルを最小限におさえ、万が一の場合迅速で適切な対応が取れるよう、「就業規則」などの規程で、パワハラについての方針を明確化するとともに、「どのような行為に対し、どのような措置をおこなう」のか、具体的に定めておくことが重要です。

パワハラの処罰について就業規則や諸規程にあらかじめ定めておくことで「抑止力」としても機能します。

また、「労働施策総合推進法」など、パワハラにかかわる法律は、不定期で法改正がおこなわれるため、就業規則や諸規程は定期的に見直すように注意しましょう。


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まとめ

パワハラによるトラブルは、企業が予防策を講じていたとしても、完全に回避できるとは限らず、思わぬ事案により、多額の慰謝料が請求されてしまう場合もあります。

慰謝料負担や、社会的信頼の損失リスクを回避するためにも、「パワハラ防止対策」の一環として、「就業規則や規程の管理」を徹底しましょう。

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