パートタイマー・アルバイトにも就業規則の作成が必要です!よくある労働トラブルや規則例、注意点を解説
パートタイマーに関する労働法整備も定期的に見直されています。
2021年4月より、「パートタイム・有期雇用労働法」が施行され、パートタイマーに対する労働法の強化、権利が確立されたことにより、企業における対応によっては、トラブルにつながるケースも少なくありません。
そのため、パートタイマーを雇用する企業は、パートタイマー就業規則の整備が重要となります。従業員とのトラブル回避につながる、パートタイマー就業規則の策定について解説します。
目次[非表示]
- 1.就業規則の重要性
- 2.パートタイマー・アルバイト従業員とのトラブル例
- 2.1.残業(時間外労働)に関するトラブル
- 2.2.賞与などの待遇の差
- 2.3.退職金
- 2.4.福利厚生
- 2.5.雇止め・解雇
- 3.パートタイマー・アルバイト就業規則作成のメリット
- 4.パートタイマー・アルバイト就業規則の例
- 4.1.パートタイマーの定義
- 4.2.アルバイトの定義
- 4.3.雇用契約の期間など
- 4.4.賃金について
- 4.5.労働時間および休憩時間について
- 4.6. 有給休暇について
- 4.7.賞与について
- 4.8. 退職金について
- 5.就業規則と規程の違い
- 6.パートタイマー就業規則の作成における注意点
- 6.1.同一労働同一賃金
- 6.1.1.【同一労働同一賃金の目的】
- 6.2. 契約更新基準の明示
- 6.3. 無期転換ルール
- 6.4.雇止め前の通知について
- 7.F&M Clubでは経営力向上につながるサポートをおこなっています
- 8.まとめ
就業規則の重要性
企業と従業員との間に起こるトラブルは、就業規則による「抑止力」で、トラブル防止に備えておくことが大切です。
トラブルの起こりやすい、入退社時に関する事項や、試用期間や雇用形態、賃金に関する事項については、あらかじめ、就業規則に明記しておくと、トラブルが起こりにくい、または対処しやすくなります。
「就業規則」の策定は、常時10人以上の従業員を雇う企業に対し、義務化されています。そのため、就業規則の作成自体は、ほとんどの企業でおこなわれています。しかし、正社員用とパートタイマー用で就業規則を作成しているかどうかは、企業によってさまざまであることが現状です。
パートタイマー・アルバイト就業規則がない場合
雇用形態が異なる正社員とパートタイマーを同時に雇っている場合で、パートタイマー用の就業規則を作成していない場合は、特別な記載(※)がない限り、パートタイマーに対しても、正社員用(全従業員用)の就業規則が適用されます。
(※)「パートタイマーについてはこの限りではない」など
パートタイマー・アルバイト従業員とのトラブル例
パートタイマー・アルバイト従業員との間で、起こりうるトラブルについて解説します。
残業(時間外労働)に関するトラブル
パートタイマー(アルバイト)の残業は、採用時に「労働条件通知書」において締結している雇用条件および、労働基準法で定められている法定労働時間内であれば問題ありません。
しかし、労働条件通知書や就業規則において定められていない場合や、契約範囲外の残業は、トラブルにつながりかねないため、注意が必要です。
また、パートタイマー(アルバイト)の場合、扶養範囲内を条件に働く従業員も多いため、想定外の残業により扶養の範囲を超えてしまうと、大きなトラブルとなります。
さらに、パートタイマー(アルバイト)は基本的に時間給のため、従業員ごとに時間給が異なるなど、給与(残業)計算が複雑化しやすくなります。
扶養範囲の管理や、計算ミスによるトラブルなど、パートタイマー(アルバイト)の残業管理は気を付けるポイントがいくつかあります。
賞与などの待遇の差
正社員と同等の業務量の仕事をしているのに、パートタイマーには賞与が支給されない、正社員にのみ通勤手当が支給されるなど、不合理な待遇格差はトラブルを招きかねません。
退職金
正社員と同じように、何十年と働き会社に貢献しても、パートタイマーには正社員のように退職金が支給されないことに対して不満を抱き、トラブルになる可能性もあります。
福利厚生
有給休暇や健康診断などの福利厚生も、正社員とパートタイマーでの適用に差が生じる場合、不合理な格差としてトラブルにつながることもあります。
雇止め・解雇
雇止めや解雇は労働トラブルに発展しやすいため、(労働条件通知書にその契約を更新する場合がある旨をあらかじめ明示していた)労働契約に期間の定めがあるパートタイムに対して、 労働契約を更新しない場合には少なくとも契約が満了する日の30日前までに予告するなどの記載を入れておきましょう。
パートタイマー・アルバイト就業規則作成のメリット
雇用形態によって、異なる待遇や労働条件を設ける場合には、雇用契約書の作成とは別に、条件が明記された雇用形態別の就業規則を作成する必要があります。
パートタイマー就業規則を作成するメリットについて解説します。
管理がしやすい
パートタイマー就業規則を作成することで、パートタイマーに対する適用条件の管理がしやすくなります。雇用形態別の就業規則がなく、正社員用(全従業員用)の就業規則に、「※パートタイマーについては適用しない」などの特例を記載している場合、パートタイマーに対する就業規則としてわかりづらく、管理もしづらくなります。個別に作成しておくことで、必要な情報だけが一目でわかりやすくなり、管理もしやすくなります。
トラブルの回避
パートタイマー従業員は、雇用形態別に作成された、専用の就業規則に目を通すことで、待遇などの労働条件について明確に理解・把握しやすくなります。就業規則を確認は、承認も兼ねているため、内容に納得したうえで仕事に従事することとなります。このように就業規則により、あらかじめ「抑止力」を機能させておくことで、トラブルのリスクを軽減させられます。
パートタイマー・アルバイト就業規則の例
パートタイマー・アルバイト就業規則は、基本的に正社員の就業規則の内容とほとんど同様ですが、条件が異なる部分についてしっかりと明示させておく必要があります。
パートタイマーの定義
具体的な定義が明示されていないと、トラブルにつながりやすくなるため、
パートタイマーの定義はしっかりと明記しておく必要があります。
【規則例】
|
アルバイトの定義
「アルバイト」は、法律上の用語ではないため、アルバイトの定義や意味について、企業によってさまざまです。
パートタイマーと同様に、必要に応じてアルバイトについても定義を明記しておきましょう。
【規則例】
|
雇用契約の期間など
有期パートタイマーの場合など、雇用期間および更新についてのトラブルは、発生しやすいため、雇用契約の期間や更新についての条件もしっかりと明示しておく必要があります。
【規則例】
|
賃金について
賃金について、パートタイマーやアルバイトの場合、正社員と異なる基本給の算出方法が用いられる場合が多いため、基本給の算出方法について明示し、そのほかの手当についても、細かく明示します。
【規則例】
|
労働時間および休憩時間について
一般的に、パートタイマーおよびアルバイトの所定労働時間の定めは、個別の雇用契約書において定めた労働時間となるため、その旨を就業規則に記載します。
また、休憩時間について、労働基準法では「6時間を超えて労働する場合、休憩は義務」とされています。
実務上は5時間勤務でも突発的に残業で6時間を超える場合は労働時間の途中で休憩が必要となるため、注意が必要です。そのため、6時間を超えて労働するパートタイマーやアルバイトを雇う場合は、休憩時間についても明示しておきましょう。
【規則例】
|
有給休暇について
一定の条件を満たした場合、パートタイマーやアルバイトも有給休暇の付与対象者となるため、有給休暇についても記載します。
【有給休暇付与条件】
- 雇い入れ日(入社日)から、半年以上経過していること
- 所定労働日の8割以上出勤していること
【規則例】
|
賞与について
パートタイマー・アルバイトの賞与について、賞与を支給しない場合と支給する場合の、それぞれの場合に合わせて記載します。
【規則例】賞与を支給しない場合
|
【規則例】賞与を支給する場合
(※算定期間や支給月についても記載しておく) |
退職金について
パートタイマーの退職金について、賞与と同様に、状況に合わせて記載します。
(退職金に関する詳細の規定は、別途作成しておきます。)
【規則例】退職金を支給しない場合
|
【規則例】退職金を支給する場合
|
こちらの記事はエフアンドエム無料会員をするとご覧いただけます↓(永年無料)
就業規則と規程の違い
就業規則では、「給与」や「休職」に関することが記載されていますが、給与規程などの諸規程は、就業規則とは別に特定の事項に関して抜粋したものを指します。
特に、パートタイマーやアルバイトなど、雇用形態ごとに条件(規定)が異なる場合は、就業規則で大まかな内容を記載し、雇用形態ごとの諸規程を作成しておくと、労働トラブルの回避につながります。
給与規程とは
給与規程とは、給与や賃金に関するルールを明文化したものです。
「パートタイマー・アルバイト給与規程」では、以下のような内容が記載されています。
【規定例】 (給料の種類)
1. 基本給:時間給で支給 2. 諸手当:残業手当、休日出勤手当、通勤手当 (給料の計算期間)
(昇給および時期)
|
服務規程とは
服務規程とは、労働者が仕事に従事する際、最低限守らなければならないルールのことです。
服務規程は、職場における「行動規範」のようなものであるため、基本的に、雇用形態問わず、すべての労働者に同一の服務規程が適用されます。
【規定例】
|
休職規程とは
休職規程とは、休職に関するルールを明文化したものです。
休職規程に関し、パートタイマー(アルバイト)の場合でも、原則、通常の労働者(正社員など)と同じように労働条件が適用されますが、雇用形態別にルールを定めたい場合などは、必要に応じて、規程を定めます。
【規定例】 (休職)
1. 精神または身体上の疾患により、業務遂行が困難と判断された場合 2. 特別の事情があり、休職させることが適当であると判断された場合 (休職期間)
(休職の取り扱い)
|
パートタイマー就業規則の作成における注意点
パートタイマーを雇う際およびパートタイマー就業規則を作成する際は、「パートタイム・有期雇用労働法」に基づき、いくつか注意すべき点があります。
就業規則を作成する際の注意点について解説します。
同一労働同一賃金
「パートタイム・有期雇用労働法」では、「同一労働同一賃金」の遵守が謳われています。
同一労働同一賃金とは、正社員と、パートタイマーや契約社員などの非正規雇用労働者との間に、不合理な待遇差を設けることを禁止とする考え方のことをいいます。
同一労働同一賃金により、パートタイマーが、正社員と仕事の内容が同じである場合にもかかわらず、格差のある賃金を設定することは禁止されています。パートタイマーの仕事内容が、正社員と異なる場合、異なる賃金を設定することは可能ですが、明らかに不合理だと判断される待遇差は設けてはいけません。
【同一労働同一賃金の目的】
同一労働同一賃金の目的は、同一企業で働くさまざまな雇用形態の従業員の間に、不合理な条件格差、差別的な扱いの解消を目指すものとして掲げられました。
不合理とされる待遇格差の解消などに向けては、賃金だけではなく、福利厚生、キャリア形成、職業能力の開発および向上などを含めた取り組みが必要とされています。
契約更新基準の明示
有期の従業員を雇う際は、「契約更新の有無」と「契約更新の判断基準」について、明示することが義務づけられています。そのため、有期雇用のパートタイマーについて、契約更新の基準など、就業規則に明示しておく必要があります。
【参考】有期労働契約の締結、更新および、雇い止めに関する基準について|厚生労働省
無期転換ルール
有期雇用のパートタイマーについて、雇用期間が、更新などにより通算5年を超えた場合は、従業員の希望により、期間の定めのない無期雇用契約へ転換できることが、労働契約法により定められています。
有期雇用から無期雇用への転換の可能性がある場合(5年以上勤務)は、その旨を就業規則に記載する必要があり、無期雇用への転換をおこなわない方針(5年以下勤務)の場合は、契約年数(更新上限)について就業規則に記載する必要があります。
雇止め前の通知について
有期雇用契約で、更新3回以上または1年を超えて継続して勤務している場合において、契約を更新せずに雇用を終了しようとする場合(雇止め)は、少なくとも契約満了日の30日前までに、予告をおこなうことが義務づけられています。
【参考】有期労働契約の締結、更新および、雇い止めに関する基準について|厚生労働省
F&M Clubでは経営力向上につながるサポートをおこなっています
F&M Clubは累計38,000社の中小企業様にご利用いただいている、公的制度活用・人事・労務・財務・IT活用などのバックオフィスの支援に特化したサービスです。
月額3万円(税抜)で「人事考課の策定(相場100〜200万円)」や「諸規程ドラフトの提供」、「社内文章がダウンロードし放題」、「お客様サービスセンターに電話やメールで相談し放題」、ご登録いただいた条件に応じた補助金・支援策情報をLINEでタイムリーにお届けする「補助金LINE」など38あるコンテンツが使い放題でご利用いただけます。
また、F&M Clubは財務・金融コンサルタントや補助金コンサルタントによる財務支援、補助金支援をおこなっております。資金繰り対策、設備投資のための支援策、人材採用や育成など労働生産性向上の実現を目的とした「経営力向上計画策定支援」から「貴社の目標・経営課題」に基づき継続的なサポートを実施いたします。
「自社のキャッシュフロー改善策を知りたい」、「もっとわかりやすく管理しやすい資金繰り表を作成したい」、「金融機関から資金繰り表の提出を求められたが作成したことがない」、「補助金の種類が多すぎてわからない」などのお悩みの経営者様はぜひご相談ください。
まとめ
働き方の多様性にともない、さまざまな雇用形態の従業員が増えており、パートタイマー・アルバイトに関する労働法も定期的に改正されています。
従業員とのトラブル回避には、就業規則を見直し、「抑止力」として機能させることが大切です。労働法の改正に合わせ、雇用形態に合わせた就業規則や諸規程を定期的に見直すことが必要です。就業規則や諸規程の整備は、従業員から企業の信頼へもつながります。
企業と従業員の両者のために、就業規則および諸規程の見直しをおこない、職場環境の改善につなげましょう。