
企業が実施すべき物価高対策5選|2025年の予測も紹介
食品や光熱費の値上げが止まらず、家計の負担は増すばかりですが、企業も原材料費や人件費の高騰に苦しみながら価格転嫁やコスト削減に頭を悩ませています。厳しい現状のなか、どのように物価高対策を実施すべきか悩む企業も多いでしょう。
本記事では、物価高の現状を振り返り、政府の支援策や企業が実施すべき物価高対策を紹介します。本記事を読めば、物価高の現状を把握して自社にあった対策をスムーズに導入できます。物価高対策を実施し、優秀な人材の定着・生産性の向上を図りましょう。
目次[非表示]
- 1.物価高とは
- 1.1.インフレとの違い
- 1.2.2024年に起きた物価高の振り返り
- 1.3.2025年における物価高の日銀予測
- 2.物価高で企業が受ける影響
- 3.政府が実施する物価高への対応策
- 3.1.国民に対する物価高支援策
- 3.2.企業に対する物価高支援策
- 4.物価高倒産が急増!中小企業の物価高対策5選
- 4.1.地方公共団体の助成金
- 4.2.価格転嫁(販売価格の見直し)
- 4.3.コスト削減
- 4.4.賃上げ、インフレ手当の支給
- 4.5.生産性の向上
- 5.企業が実施する物価高騰への支援事例
- 5.1.株式会社すかいらーくホールディングス
- 5.2.ケンミン食品株式会社
- 6.賃上げ対応、省力化投資は補助金・助成金を活用!
- 6.1.経営者が検討したい『ものづくり補助金』と『省力化投資補助枠(カタログ枠)』
- 6.2.賃上げ額の最大45%が税額控除『賃上げ促進税制』(令和6年度税制改正)
- 6.3.パートタイムは扶養の範囲を超えても働いてもらえる制度を活用
- 7.まとめ
物価高とは
物価高とは商品やサービスの価格が全般的に上昇する現象で、国民の生活費が増加することを意味し、家計に直接的な影響を及ぼします。たとえば、物価高によって日常的に購入する食料品の価格が上昇すれば、家計の負担は増えてしまいます。
物価高の要因は複数あり、原材料費の上昇・労働コストの増加・需給バランスの変化などさまざまです。上記の要因が複合的に作用し、物価全体の上昇を引き起こします。
インフレとの違い
物価高とインフレは似た意味をもちますが、厳密には異なる概念です。インフレは通貨の価値が下がって全体の物価が継続的に上昇する経済現象を指し、通貨供給量の増加や需要の拡大などが原因となります。
一方、物価高は特定の要因や一時的な状況により、一部の商品価格が上昇する現象を指す場合もあります。たとえば、原油価格の急騰でガソリン価格が上昇するケースは物価高ですが、全体の物価上昇に波及しない限りはインフレといえません。つまり、インフレは広範囲かつ持続的な物価上昇を指し、物価高は特定の要因による一時的な価格上昇も含む広い概念といえます。
2024年に起きた物価高の振り返り
総務省の調査によれば、日本では2024年に消費者物価指数(CPI)が前年比で2.7%上昇しました。特に、エネルギー価格や食品価格の上昇が顕著で家計への影響が大きかったとされています。
エネルギー価格の上昇は、ウクライナ情勢や円安の影響で輸入コストが増加したことが一因とされています。食品価格の上昇も原材料費や人件費の増加が背景にあり、これらの要因が重なって2024年は物価高が家計を直撃した年となりました。
【参考】消費者物価指数(CPI)全国(最新の年平均結果の概要)|総務省統計局
2025年における物価高の日銀予測
日本銀行の最新の経済・物価情勢の展望(2025年1月)によれば、2025年以降の消費者物価の推移は以下の予想がされています。
● 前年比は2025年に2%台半ばとなったあと、2026年はおおむね2%程度となる
日本銀行の現時点での予想では、2025年〜2026年にかけて物価高が落ち着きを見せるとの分析結果です。物価高が軽減される根拠は、輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、賃金と物価の好循環が引き続き強まることが背景にあります。ただし、海外の経済・物価動向や資源価格の動向など不確実性は引き続き高いとされています。
【参考】経済・物価情勢の展望(展望レポート)|日本銀行
物価高で企業が受ける影響
物価高は、消費者だけでなく企業の経営にも多岐にわたる影響を及ぼします。まず、原材料やエネルギーコストの上昇により、製造業や運輸業などでは生産コストが増加します。そのため、価格転嫁が難しい場合は利益率が低下して収益が圧迫されてしまう状況です。
さらに、従業員の生活費増加に伴って賃上げ要求が高まり、企業は人材確保のために給与や福利厚生の見直しを迫られる可能性があります。賃上げによるコスト増加は、特に資金に余裕がない中小企業にとっては大きな負担です。加えて、物価高によって消費者が支出を抑制する傾向が強まり、売上が減少するリスクも考えられます。
政府が実施する物価高への対応策
政府が実施する物価高への対応策は、主に以下の2種類が挙げられます。
- 国民に対する物価高支援策
- 企業に対する物価高支援策
上記の支援策を把握して、自社の従業員に必要な物価高対策を提供しましょう。
国民に対する物価高支援策
政府は物価高による国民の負担を軽減するため、多岐にわたる支援策を実施しています。まず、エネルギー価格の高騰に対応するため、燃料油価格の激変緩和措置を講じている状況です。具体的には、ガソリン価格の上昇を抑制するため、元売事業者などに対して補助金を支給して小売価格の急激な上昇を防いでいます。
また、電気・ガス料金の負担軽減策として低圧契約者に対し2025年1〜2月利用分に関しては1kWhあたり2.5円、高圧契約者には1.3円の支援をおこなっている状況です。都市ガス利用者には、1立方メートルあたり10円の補助を実施し、月平均1,300円の負担軽減が期待されています。
さらに、低所得世帯への直接的な支援として、住民税非課税世帯に対して1世帯あたり合計10万円の給付金が支給されています。加えて、所得税・住民税の定額減税を実施し、国民の可処分所得を直接的に下支えする措置も講じられています。
【参考】燃料油価格激変緩和補助金|経済産業省資源エネルギー庁
【参考】電気・ガス料金支援|経済産業省資源エネルギー庁
【参考】各種給付の詳細|内閣官房
企業に対する物価高支援策
物価高は企業経営にも深刻な影響を及ぼすため、政府は企業向けの支援策を展開しています。まず、中小企業の生産性向上を支援するため、以下の補助金実施に3,400億円を計上している状況です。
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 持続化補助金
- 事業継承・M&A補助金
また、「エネルギー価格や物価の高騰」「最低賃金引き上げ」「インボイス対応」などの事業環境の変化に対応するため、「事業環境変化対応型支援事業」に112億円を充てています。さらに、価格転嫁の円滑化と取引適正化を図るため、下請法の執行強化や法改正の検討、労務費適切転嫁の指針の徹底などの施策を講じています。
【参考】中小企業対策関連予算 | 中小企業庁
物価高倒産が急増!中小企業の物価高対策5選
物価高が続く影響で倒産が急増しています。
民間信用調査会社である帝国データバンクによると、2024年の倒産件数(負債総額1,000万円以上の法的整理のみ)は9,901件、前年を1,404件上回る状況です。また、倒産件数9,901件のうち物価高による倒産件数は過去最多の933件となり、過去最多を大幅に更新しています。
今後も物価高が続くと予測されているため、中小企業は物価上昇に負けない体質への改善が喫緊の課題です。中小企業が検討したい物価高対策の代表例は下記の5つです。
【引用】2024年の企業倒産は9901件、年間件数3年連続で大幅増 1万件に迫る ― 全国企業倒産集計2024年報|PRTIMES
地方公共団体の助成金
物価高対策として、県や市町村などの地方公共団体が独自に助成金制度を設けています。地方公共団体により制度の有無や対象が異なります。
補助金や助成金などの公的支援策は数千種類あるとも言われています。自社で受給できる可能性がある公的支援策の申請もれを防ぐためには、F&M Clubの『公的支援無料診断サービス』など検索ツールの利用が効率的です。
価格転嫁(販売価格の見直し)
原材料や人件費の上昇については、販売価格の引き上げを積極的に検討しましょう。販売価格の引き上げは利益の改善に直結します。
値上げや販売価格転嫁がすすんでいるなか、コスト上昇の価格転嫁率(コスト上昇に対して一部でも価格転嫁できた企業の割合)は49.7%です。
また価格転嫁の内訳をみると、原材料費の上昇分の価格転嫁率は51.4%とすすんでおり、人件費の上昇分に関する価格転嫁は44.7%(2024年9月時点)とみられています。
【参考】価格交渉促進月間(2024年9月)フォローアップ調査結果|中小企業庁
コスト削減
物価上昇における対策の代表例がコスト削減です。コスト削減の主な例は次のとおりです。
- 電気照明のLEDへの変更
- 廃棄ロスの削減
- 不要な倉庫などの解約
- 生産性の向上による残業時間の削減
- 不要なシステム保守サービスの解約
- 自家消費用太陽光発電の導入
賃上げ、インフレ手当の支給
物価高に伴い、従業員がより給料水準が高い企業へ転職する可能性があります。離職の増加を防ぐためには、賃上げなどの昇給やインフレ手当など特別手当の支給などが必要です。
生産性の向上
物価高と人手不足に対応するためには企業の生産性を上げる必要があります。また2030年には労働需要人口7,312万人のうち12.1%が不足すると予測されており、現状の8割の従業員数で企業を維持することとなります。
生産性の向上は製造現場だけでなく、総務や経理などバックオフィス部門についても検討することが可能です。主な例は次のとおりです。
- 検査・検品・仕分けシステムなど即効性がある省力化機器を導入する
- 顧客管理システムの導入やオンライン商談により営業活動を効率化する
- 受発注システムと在庫管理システムを連動させることで在庫確認作業を削減する
- 会計システムや勤怠管理・給与計算システムを刷新し、総務事務を合理化する
【参考】国内投資促進パッケージ(施策集)省力化投資補助枠(カタログ型)|内閣官房
企業が実施する物価高騰への支援事例
企業が実施する物価高騰への支援事例として、以下の2社を紹介します。
- 株式会社すかいらーくホールディングス
- ケンミン食品株式会社
上記の事例を参考に、自社の実情に合った物価高対策を実施しましょう。
株式会社すかいらーくホールディングス
株式会社すかいらーくホールディングスは急激な物価上昇に対応するため、従業員の生活支援策を実施しました。物価高対策の一環として「インフレ手当(特別一時金)」を支給し、従業員と家族の生活をサポートしました。
上記の支援策は食費や光熱費の上昇により家計負担が増している状況を踏まえ、働きやすい環境の整備を目的としています。正社員や嘱託社員には50,000~120,000円を支給し、子育て世帯には子供の人数に応じた追加支援をおこないました。また、社会保険に加入しているパートタイム・アルバイトには、一律10,000円を支給しています。
【参考】生活支援として「インフレ手当」を支給|すかいらーくホールディングス
ケンミン食品株式会社
ケンミン食品株式会社は継続する物価高の影響を受け、従業員の生活を支援する「生活応援一時金」の支給を実施しました。2022年7月に続き、2022年12月にも第2弾として支給を決定した流れです。
生活応援一時金は社員やフルタイム勤務のパートタイム・アルバイトを対象に本人に1万円を支給し、さらに家族1名につき1万円を加算する形で提供されました。最大6万円の支給が可能な仕組みとなっており、特に家族の多い従業員への支援を手厚くしています。
【参考】【ケンミン食品】第2弾「生活応援一時金」を社員全員に支給|PRTIMES
賃上げ対応、省力化投資は補助金・助成金を活用!
賃上げの実施はお金がかかるうえ、省力化投資も資金が必要です。補助金や助成金など外部の力を積極的に活用しましょう。
中小企業におすすめの補助金など公的支援策の主な施策は次のとおりです。
経営者が検討したい『ものづくり補助金』と『省力化投資補助枠(カタログ枠)』
新製品開発や省力化・合理化投資が対象となる補助金の代表格は『ものづくり補助金』と『省力化投資補助枠(カタログ型)』です。概要は次のとおりです。
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ものづくり補助金
18次公募が発表されました。補助率は最大3分の2、補助上限額は最大1億円です(補助枠、従業員数によって異なります)
【参考】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.0版|ものづくり補助金事務局
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省力化投資補助枠(カタログ型)
汎用的なロボットやシステムをカタログから選ぶ方式の補助金として新設予定です。補助率は2分の1、補助上限額は200万円から1,500万円です。(従業員数により異なります)
【参考】令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)(2023年11月)|経済産業省
賃上げ額の最大45%が税額控除『賃上げ促進税制』(令和6年度税制改正)
賃上げ促進税制とは、賃上げをおこなった企業を対象として、給与等支給額の増加額の最大45%が税額控除される制度です。2024年4月1日以降に開始する事業年から対象となります。
パートタイムは扶養の範囲を超えても働いてもらえる制度を活用
人手不足対策として、パートタイムなどの短時間勤務の従業員により長い時間勤務してもらう方法があります。
扶養の範囲内で働くように勤務時間を調整している短時間従業員については、『年収の壁・支援強化パッケージ』の活用が検討可能です。
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年収106万円の超えることで負担が発生する社会保険料を支援する企業への助成金
従業員1名あたり最大50万円が支給されます。 -
年収130万円を超えても扶養から外れないようにする
事業主の証明による被扶養者認定の円滑化により、最大2年間、年収130万円を超えても扶養に入ったままとすることができます。
【参考】「年収の壁・支援強化パッケージ」リーフレット|厚生労働省
まとめ
日銀が発表した展望レポートによると、2025年の物価上昇率は2%台半ば、2026年も2%程度とインフレが続く予測です。中小企業は物価高、人件費の上昇、そして人手不足に対応していくことが生き残りの条件といえます。
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