運転資金は何ケ月分あればいい?運転資金の目安と確保策を解説
賃金の上昇に仕入価格の高騰、コロナ融資の返済開始などにより、資金繰りに悩み経営者もいらっしゃいます。
経営の生命線である資金繰りにおいて大切なことは、「運転資金の確保」です。
本記事では、自社の運転資金の適正な目安はいくらなのか、運転資金をどう確保すればよいかを解説します。
目次[非表示]
- 1.運転資金の考え方
- 1.1.運転資金とは
- 1.2.いつも必要な運転資金
- 1.3.一時的に必要な運転資金
- 2.運転資金の目安(何ヶ月分が必要?)
- 2.1.運転資金は何ヶ月分が必要?
- 2.2.運転資金の計算方法
- 3.運転資金の調達方法
- 3.1.借入による資金調達
- 3.2.借入以外の資金調達方法
- 4.運転資金を自社で確保する策
- 4.1.キャッシュフローの改善
- 4.2.借入のリファイナンス(借り換え)
- 4.3.経営状態を見直す
- 5.資金繰りのお悩みはエフアンドエムがサポートします
- 6.まとめ
運転資金の考え方
運転資金と一括りで表現されていますが、内容はさまざまです。
運転資金とは
運転資金とは、経営を維持するために必要な資金の総称です。
運転資本という言い方もありますが、簡単にいえば、経費や借入返済を賄うために必要なお金です。
運転資金は仕入代金の決済、家賃や人件費の支払、金融機関からの借入の元金返済などに充てます。
この運転資金を確保できないと仕入代金の決済が滞るなど、経営の命綱である信用力が失われなくなってしない、経営を維持できなくなります。
金融機関からの借入の場面などで混同されやすい「運転資金」と「設備資金」は明確に違いがあります。
設備資金は、不動産や機械、車の購入など、特定の使いみちや金額が明確です。
運転資金は、「これらの支払いのために、まとめていくら必要」となります。
運転資金は、売上の入金や経費の支払いの時期などによって増減することとなるため、必要となるタイミングにより2つの種類があります。
いつも必要な運転資金
経営を続けていくうえで、常時必要な運転資金のことです。
事業の成長などに応じて、「経常運転資金」「増加運転資金」「減少運転資金(または減産資金)」があります。
運転資金の種類 |
内容 |
発生原因 |
経常運転資金 |
常に必要な運転資金 |
売上が入金されるまでの期間と、経費や仕入代金支払までの期間のタイムラグ |
増加運転資金 |
売上の増加などの事業拡大時に発生する運転資金。 主に仕入などの変動費に充当します。 |
増加した売上が入金されるまでに急増する仕入代金や人件費などの経費支払いの先行 |
減少運転資金 |
売上が減少していく時期に必要な運転資金。 主に家賃や人件費などの固定費に充てられます。 |
売上が減少したとしても、家賃や人件費などの固定費は減少しにくいため |
経営者が特に注意すべき運転資金は「増加運転資金」です。
売上が減少から急激に回復する時期、仕入価格の高騰にあわせて販売価格を引き上げている時期は、仕入量や単価が上昇し、通常よりも多額の決済が発生します。
また、事業の拡大を見込んで従業員を増員していれば、人件費が直ちに増加します。
売上の増加に先行して経費が急増するため、事前に十分な運転資金の確保が必要です。
事業の急拡大に失敗、あるいは黒字倒産などの悲劇も発生します。
一時的に必要な運転資金
一時的な資金の必要に応じて発生する運転資金のことです。
具体的には次のとおりです。
- 退職金(役員やベテランの従業員の退職に伴う多額の退職金の支払い)
- 賞与の支払い
- 納税
- 販売先との売上入金条件の変更(翌月に手形での回収から、3か月後に振込入金へ切り替わるなど)
上記は売上の増減と関係なく必要となるお金であり、事前の準備が大切です。
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運転資金の目安(何ヶ月分が必要?)
運転資金は、経営の生命線である資金繰りを支えています。
運転資金を確保する水準としては目安となる金額などがあります。
運転資金は何ヶ月分が必要?
一般的には「運転資金は月商の3ヶ月分(以上)」といわれます。
ここでいう運転資金とは、「少なくともこのくらいの現金預金は常に保有すべき目安」といえます。
自社にとって必要となる運転資金の金額は経営状態によって異なりますが、おおよその目安は次の通りです。
運転資金の量 |
評価 |
月商1ヶ月分以下 |
資金調達が即座に可能な優良企業か、逆に資金繰りが厳しい水準です。 早めの資金確保がおすすめです。 |
月商3ヶ月分 |
通常の水準です。 しかし、が余裕があるとはいえません。 資金繰りの見通しに注意して、早めの資金調達ができるように準備しておきましょう。 |
月商6ヶ月分以上 |
運転資金が確保できた状態となっています。 財務改善やキャッシュフロー改善を続けましょう。 |
なお、新たに事業を始める開業の際においては、運転資金として6ヶ月分は必要です。
6ヶ月とは、開業後に事業が軌道にのるかどうかが明確になる時期であるとともに、創業から黒字化するまでの平均値でもあります。
ただし、開業時に運転資金として借入できる金額は売上高の3ヶ月分ほどに留まることが多いため、自己資金での準備も必要です。
日本政策金融公庫(国民生活事業)の創業融資においても、運転資金としての融資可能額は月商3~6ヶ月分までとなります。
事業が軌道にのってからでも、月商3ヶ月分までが(日本政策金融公庫からの)融資可能額の目安と言われています。
運転資金の計算方法
常時必要となる経常運転資金は次のとおりです。
売掛金 + 受取手形 + 棚卸資産 - 買掛金 - 支払手形 = 経常運転資金 |
上記の経常運転資金に、利益と借入金の返済を加減すると、保有しておくべき現預金の水準が把握できます。
経常運転資金 ― 利益(売上-経費) + 借入返済 = 最低限保有しておくべき現預金の水準 |
実際の資金繰りを考えるときには、経常運転資金以外に借入の返済などの資金が必要であるとともに、月によって変動があります。
自社の運転資金を適正に把握するためには、資金繰り表の作成が効果的です。
運転資金の調達方法
- 借入や増資などの外部からの資金調達
- 資金繰りを改善して、自社で運転資金を賄うことが体質にする
借入による資金調達
運転資金の調達方法で最も多い方法が、金融機関からの借入です。
借入といっても、金融機関や融資商品によって融資の条件はさまざまであるとともに、かならず融資が受けられるとは限りません。
よりスムーズに、より良い条件で融資を受けるポイントは次のとおりです。
【より有利な融資を受けるためのポイント】
- 金融機関の目線(決算書をみるポイント)を理解する
- 自社の経営状態、同業と比較しての強みをわかりやすく説明する
- 今後の経営改善策を明確化する
- 経営の見通し、資金繰りの見通しを数字で説明する
- わかりやすい書類で説明する
- 伴走支援型特別保証制度など長期の融資制度を活用する
人手不足や販売先への値上げ交渉など、経営者が優先して取り組むべき事項が多くあります。
融資の審査書類の作成に多くの時間を割くよりも、金融機関の目線を理解した、中小企業支援の専門家を活用することが効率的です。
借入以外の資金調達方法
金融機関からの借入以外にも、さまざまな資金調達方法があります。
- 増資(資本金の増加)
- 補助金、助成金
- 資産のセールスアンドリースバック
- ファクタリング
- クラウドファンディング
運転資金を自社で確保する策
運転資金の確保は金融機関からの借入が簡便ですが財務状態が悪化します。
自社でも取組み可能な運転資金の確保策があります。
キャッシュフローの改善
キャッシュフローとは、経営にかかわるお金の流れ、お金の回り方のことです。
運転資金が必要となる理由は、売上の入金までの長さと、経費などの支払までの短さのギャップが原因です。
売上の入金までの期間が短くなれば、必要となる運転資金は減少します。
また、支払までの期間を長くすることができれば同じ効果があります。
借入のリファイナンス(借り換え)
運転資金が必要となる原因の1つが借入金の返済です。
自社のキャッシュフロー以上の金額の借入返済が必要な場合は、今返済している借入をリファイナンス(借り換え)することで、借入金の返済を減らすことが可能です。
なかでも「伴走支援型特別保証制度」「経営サポート保証」など、融資期間が長い制度を活用すれば、元金返済を抑えられることができます。
経営状態を見直す
赤字経営を黒字化する、利益率を改善させるなどの経営状態の改善も必要です。
経営改善には時間がかかることが多いため、当面の運転資金を確保し、資金繰りに目途をつけながら経営改善に取り組む必要があります。
特に現在は、「人手不足」、「最低賃金の上昇」、「残業手当の割増賃金率の引き上げ」など人件費の増加が不可避です。
販売先への営業だけでなく、事務などのバックオフィス業務のコストにも注目して、全社的な経営改善に取り組むことが経営改善のポイントです。
資金繰りのお悩みはエフアンドエムがサポートします
自社の命運を左右する資金繰りは経営者の最大の悩みの1つです。
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まとめ
運転資金の目安については各社さまざまですが、共通して大切なことは「資金繰りを維持する、改善する」ことです。
燃料や原材料価格の高騰、人件費の上昇など、資金繰りを圧迫する状況が続いています。
自社での資金繰り改善は必要ですが、借入の見直しも効果があります。
資金繰り表の作成や借入の見直しには、専門的な知識や戦略的な取り組みも必要です。
中小企業支援の経験が豊富な専門家を活用しましょう。